2014 Fiscal Year Research-status Report
たこつぼ心筋症における自律神経異常とカテコラミン受容体遺伝子変異の研究
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26461092
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
佐藤 恭子 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (80335942)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小見山 智義 東海大学, 医学部, 准教授 (60439685)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | たこつぼ心筋症 / カテコラミン / アドレナリン受容体 / 心交感神経終末分布 / 自律神経 / ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、当院におけるたこつぼ心筋症(Takotsubo cardiomyopathy, TCM)の既往患者、及び新規発症患者登録を行い、アドレナリン受容体の遺伝子多型タイプ抽出実験に着手した。 まず2013年度までに東京女子医科大学東医療センターでTCMの診断名を持つ入院患者36名について診療記録より再評価を行った。このうち7名はTCMの診断基準を満たさないか、臨床経過としてTCMの可能性が低いために除外された。2014年度以降に新たに発症した当院のTCM患者は4名で、そのうち3名を本研究の患者データベースに登録した。 現在まで登録されたTCM患者合計32名の平均年齢は74±12歳、うち27名が女性であった。基礎疾患として高血圧12名、糖尿病5名、心疾患11名、がん3名で、発症における精神・身体的な誘因を持つ者は8名であった。 対象者に対して自律神経機能検査、ストレス負荷テストの実施を計画し、本学での臨床試験および遺伝子倫理委員会の承認を得た。ストレス課題としては、暗算ストレス負荷テストとスピーチテストを行い、その前後で心拍数、血圧、血漿カテコラミンを測定する。暗算ストレス負荷とスピーチテストを行う順番はランダムに割り付ける。スピーチの内容は、“自己紹介”、“最近あった面白い話”、“泣ける話”の中から自由に選択させ、3分間継続して聴衆役の白衣を着た医療従事者の前で話してもらう。 また本研究では、初めにアドレナリンサブタイプα2B-AR遺伝子内にみられるグルタミン酸Glu(E:p.Glu301-303)リピート数にGlu12/12ホモ型 、Glu9/9ホモ型、Glu9/12ヘテロ型の3つのタイプやβ2-AR遺伝子におけるArg16Gly, Gln27Glu, Thr164Ileの3つの遺伝子変異を中心に研究を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、実際の臨床研究に取りかかるに当たっての事務的準備(倫理委員会など)を整えるのに当初の見込み以上の時間がかかってしまった。さらにプロトコルを決定する際に、本研究に最適なストレス負荷テストを選ぶ段階で、数回パイロットスタディを行い、血圧、心拍や血漿カテコラミン値の評価を必要としたために、登録された患者群を用いた検討を行うに当たっての遅延が生じた。 また新規発症の患者において、当初予定されていた心臓核医学検査である131I-MIBGシンチグラフィーは、患者理由で撮影出来ないことが多く、心電図、心エコー、冠動脈及び左室造影検を用いて最終診断とする方針となった。 当施設でのTCM患者が高齢かつ重症例が多いため、現時点では対象者に筋交感神経活動の記録は行われない。 以上、症例登録数は伸びたが、被験者を用いたデータ収集に遅延が発生しており、来年度以降の遺伝子多型タイプ抽出実験とゲノム解析と平行した実施を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究でのプロトコルに従った健常群のストレステストの症例を増やし、血圧、心拍反応や自律神経機能、血漿カテコラミン値を患者群と比較検討を行う。TCM患者のリクルートは、本学内のみならず、近隣医療機関に本学での取組みを公開し、症例の紹介を依頼する。健常人のリクルートも学内でのポスター掲示だけでなく、本学ホームページを用いた募集を考慮している。 当院でのTCM患者群は予想以上に高齢者が多く、全身状態が不良のものも多いため、患者本人並びに家族からの同意が得られた症例において採血のみ行い、アドレナリン受容体遺伝子多型タイプ抽出実験とゲノム解析だけでも進める方針である。 また、来年度以降も引き続きTCMデータベースに登録された患者群の予後追跡調査を行い、臨床における表現形とゲノム解析との相関を明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
対象患者数が本年度中予定より少なく、検査費、謝金として用意していた予算分の余剰が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度分の登録患者の検査費、謝金として使用する。
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