2014 Fiscal Year Research-status Report
マウス単核心筋細胞に注目した心筋再生メカニズム解明への試み
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26461128
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
海野 一雅 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (40709119)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 心筋再生 / 細胞分裂 / 核酸合成 / 単核心筋細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
両生類や爬虫類の心筋細胞は、旺盛な分裂能を持っており、傷害により心筋細胞が失われても、ほぼ元通りに再生されることが知られている。ヒトを含む哺乳類の成体では、心筋の再生能はほとんどみられないとされているが、新生児の心臓は下位脊椎動物と似た再生能を保存していると考えられている。そこで我々は、新生児マウスの心筋細胞と、成体マウスの心筋細胞の違いに着目することで、なぜ、成体マウスの心筋再生能が低下するか、また、成体マウス心臓で頻度は少ないが起こるとされる心筋再生はどのようにして起きているかを明らかにするために本研究を行っている。 我々の行った予備実験から、8週齢の成体マウスでは約0.025%/週の心筋細胞が核酸を合成しているにとどまっていたが、大動脈縮窄による心臓圧負荷を行ったマウスでは、約1%/週と40倍に上昇していた。心筋細胞は、核酸合成しているからと言って細胞分裂しているとは言えない。なぜなら、マウス心筋細胞は細胞質分裂を伴わない核分裂をすることによって、多核化するからである。そこで、我々は、ランゲンドルフ装置を使って、タンパク分解酵素を冠動脈内に逆行性に潅流することで、単一心筋を分離し、心筋細胞の核数を調べた。その結果、心臓圧負荷後早期では、核酸合成が行われた心筋細胞の多くが単核であったのに対し、数週間後には、これらの心筋細胞は多核化していた。 また、遺伝子改変マウスを用いたgenetic fate mapping(細胞の起源を追跡する方法)では、新たに核酸合成された心筋細胞は、元々存在する心筋細胞から生じた細胞であることを示した。 以上の結果は、単核心筋細胞は分裂能を有していることを示唆するものである。現在我々は、単核心筋細胞と多核心筋細胞を効率に分離し、それぞれの遺伝発現パターンの違いを解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
心筋細胞分離システムの構築に予想以上の時間を費やした。また、単核心筋細胞と多核心筋細胞の分離法確立にも時間がかかった。成体心筋細胞は、大きなもので200μm×100μmにもなるため、通常のcell sortingの方法では分離することができなかった。そのため、様々なパラメーターを用いてsortingしては、目的のpopulationが含まれているか顕微鏡で確認する作業を行った。また、同時に、少ない細胞からの遺伝子抽出や、固定細胞からの遺伝子抽出などの条件の最適化にも時間がかかった。しかし、現時点において、これらのほとんどが、解決されたので、今後は、比較的スムースに研究が遂行できるものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
単核心筋細胞と多核心筋細胞における遺伝子発現の違いを明らかにするために、遺伝子チップを用いた網羅的解析を行って、候補遺伝子を検索する予定である。候補を絞り込んだら、それらの遺伝子がどのように心筋細胞の分裂および分化に関係しているかを、分子生物学的に明らかにする。また、心筋細胞が分裂能を失い、強い収縮能を持つ成体型心筋になる過程において、エピジェネティックな変化が関係していることはほぼ間違いないと思われるので、成長の過程で、どのようにその機構が制御されているかを解析する。 心筋細胞の分裂および分化について網羅的な検索をするが、この方法が上手くいかない場合は、過去に心臓以外の細胞で報告され、細胞の分裂と分化に関係しているとされる機構が、心筋細胞でも関係しているかを検索する。
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Causes of Carryover |
本年度中に遺伝子チップを使用した網羅的遺伝子発現解析を予定していたが、純度の高い試料の作成方法を開発するのに予定より長期間かかったため、未使用となっている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
純度の高い試料が準備でき次第、網羅的遺伝子発現解析を行い、それに予算を多く使用する予定である。また、その結果を踏まえて、遺伝子改変マウスを作成する予定なので、次年度予算に付加して随時執行する。
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Research Products
(1 results)