2015 Fiscal Year Research-status Report
マウス単核心筋細胞に注目した心筋再生メカニズム解明への試み
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26461128
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
海野 一雅 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (40709119)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 単核心筋細胞 / 心筋細胞分裂 / 核酸合成 / 内因性心筋再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
マウス心筋細胞は、出生直後は、単核であるが、その後約80%は2核となり、約10%は単核のまま成体に存在する。単核心筋細胞は、2核心筋細胞に比べて、小型で、サルコメア構造の発達が悪いなどの形態的特徴があるが、これらの分子生物学的違いは明らかでない。最近の研究では、単核心筋細胞は分裂能を保存している可能性があるという報告もある。本研究は、これらの心筋細胞の違いを明らかにするとともに、内因性心筋再生医療実現に向けて、分子生物学的なメカニズムを検討することである。 8-10週齢のマウス心臓をランゲンドルフ法を用いて単一心筋細胞に分離し、まず、Hoechstによる核染色し、核酸量の違いをもとにFACS装置にて分離を試みた。しかし、様々な分離法を試したが、高い純度での分離は不可能であった。 そこで、マニュピュレータとマイクロピペットを用いて、顕微鏡下に単核と2核心筋細胞を分離した。バイオアナライザーを用いた検討では、それぞれの群で約200個の心筋細胞を採取すれば、増幅によりRNA-seqによる網羅的遺伝子発現解析が可能であることが分かった。単核、2核、3核以上の心筋細胞をそれぞれ約200個以上採取し、全mRNAの増幅を行い、Hi-seqにてRNA-seqを行った。2核心筋心筋細胞の遺伝子発現に比べ有意差をもって増加または減少している遺伝子を抽出し、ボルケーノプロットを作成した。また、遺伝子オントロジー解析をおこなって、どの遺伝子群に差異があるか検討をおこなった。その結果、cell cycleに関連する遺伝子や、細胞分化に関連する遺伝子に差異が見られることが分かった。その中で、単核心筋細胞により特異的に発現する遺伝子Xを同定した。今後、この遺伝子に着目し、解析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していたFACS装置を用いた心筋細胞の分離が思うように行かず、純度の高い心筋細胞を得るのに苦慮した。心筋細胞一つ一つを顕微鏡を用いて直視下に分離したため、時間がかっかった。現時点では、最も時間を費やすであろうと思われた部分が終了したため、速やかに研究が進捗するものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、単核心筋細胞により特異的に発現していると思われる注目遺伝子が同定できたため、この遺伝子に注目した遺伝子改変マウスを作成中である。具体的には、タモキシフェン投与により、単核心筋細胞のみがGFPを発現する様に遺伝子を改変した。現時点では作成途中であるため、本当に単核心筋細胞のみがマーキングできるか不明である。もし上手くいかない場合は、コンストラクトの挿入部位を変えたり、目的遺伝子を変えるなどの方策が必要となる。作成が成功した場合、成体マウスにタモキシフェンを投与し、単核心筋細胞特異的GFP発現マウスを作成し、リネージトレーシングを行う。また、簡単に単核と多核心筋細胞を分離することが可能になるので、タンパク発現解析や、Chip-seq解析などを随時行って行く。
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Causes of Carryover |
予定したFACS装置による細胞分離が上手くできなかったため、代替法にて細胞収集を行った。そのため、予定した研究に遅れが生じ、予算執行ができなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に、遺伝子改変マウスを作成する予定であるため、そちらに予算を使用する予定である。また、そのマウスを用いて、遺伝子機能解析を行う予定であるため、そちらで予算を執行する予定である。
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