2016 Fiscal Year Research-status Report
マウス単核心筋細胞に注目した心筋再生メカニズム解明への試み
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26461128
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
海野 一雅 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (40709119)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 心筋細胞分裂 / 核内受容体 / エピゲノム修飾 / 多倍体細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
心筋再生のアプローチは,成体幹細胞やiPS細胞などの心臓以外の細胞を移植する“外因性心筋再生”と,心筋の自らが有すると考えられる再生能力を利用して行う“内因性心筋再生”に大別できる。外因性心筋再生においては,特にiPSを利用した心筋再生技術の進歩が目覚ましく, 数年先には臨床応用可能なレベルに達するであろう考えられているが,費用面などいくつかクリアすべき課題も残っている。一方,内因性心筋再生は,元来個体に存在する再生能力を最大限に引き出し治療に応用しようというアプローチであり,実現すればより安価に施行できる可能性があり,万人がその治療技術を享受できると考えられる。最近の研究によると,哺乳類の心筋細胞にも再生能があることが明らかになり,一生のうちに約45%の心筋細胞が更新されると報告された。しかし,この割合はごく限られたものであり,急性心筋梗塞などで数時間のうちに失われる心筋細胞数に比べれば非常に少ない数字である。昨年アメリカの研究チームから,内因性心筋再生に関係する可能性がある分子として,心外膜領域の細胞に多く存在するFstl1が報告された(Nature 2015)が,その分子メカニズムや,そのほかの因子との関連性など不明な点も多く,今後さらなる検討が必要である。このように,内因性心筋再生に関する研究は始まったばかりであり,今後どのような分子メカニズムが存在するか網羅的かつ系統的な検討が必要と考えられる。そこで申請者らは,内因性心筋再生のメカニズムを検討するにあたり,①新生児心筋細胞の特性を成体心筋細胞と対比し明らかにする, ②成体心筋に共存する単核二倍体細胞と,多核多倍体細胞の特性を明らかにすることで,心筋細胞の分裂メカニズムが明らかになると考え, これらの仮説に対する検証実験をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初、心筋細胞の核の数を、核染色によりFACSを用いて選別しようと試みたが、心筋細胞の特徴であるその大きさと、形態により、通常のFACS装置での分離が困難であった。そこで、分離心筋細胞を顕微鏡直視下に核数により分離し、そこからmRNAを抽出しランダムプライマーにて増幅し、次世代シークエンサー用のライブラリーを作成した。ここまでのプロセスに多くの時間を費やすことになった。また、これにより得られたRNAシークエンスデータも元の資料のクオリティーが悪いせいで、なかなかターゲットとすべき遺伝子や、シグナル経路が同定できなかった。平成28年度中盤になってやっと解析ができるデータを得たため、心筋細胞の多倍体に関する研究は遅延していると言わざるを得ない。この実験と並行して、新生児マウス心筋細胞の分化に関する研究を同時進行で進めており、こちらは順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに、次世代シークエンサーによる網羅的解析データを遺伝子発現解析し、候補遺伝子をリストアップした。これらの遺伝子についてin-vitro解析を行い、候補遺伝子を決定し、遺伝子改変マウスを作成している。この作成にも少々時間を要するため、研究の終了はおよそ1年ほどずれ込むものと思われる。遺伝子改変マウスが作成できたら、心臓老化や、障害モデルを作成して、生理的役割について検討して行く。 新生児マウスの心筋分化については、機能解析を平成29年度中に終了させ、論文発表したいと考えている。
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Causes of Carryover |
遺伝子改変マウスを作成中であり、その経費として執行を延期しているため、次年度繰り越しとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
遺伝子改変マウスは委託により作成しているため、作成でき次第経費を執行する予定である。
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