2016 Fiscal Year Annual Research Report
analysis of molecular mechanism in between the adipose tissue dysfunction and adipocyte progenitor differentiation
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26461140
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
松本 佐保姫 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任助教 (80570184)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 脂肪幹細胞 / 慢性炎症 / メタボリックシンドローム / 耐糖能異常 / 脂肪細胞分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
加齢とともに心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患、悪性腫瘍の罹患率が増え、健康寿命をどう伸ばしていくかが健全な社会を保つ上で大変重要な課題となってきている。さらに、BMI25以上の肥満者の対人口比は過去10年間で明らかな改善なく推移しており、動脈硬化性疾患、悪性腫瘍の罹病率と肥満との密接な関係を考えると、新規治療戦略の開発はますます重要な課題となっている。 肥満症は脂肪組織のボリュームの増大であるが、脂肪組織の数の増加と、肥大化の二つの現象によって説明されている。一般には肥大した脂肪細胞から悪玉のアディポカインが分泌され、脂肪組織中に慢性炎症をきたし、この慢性炎症が脂肪組織の機能異常を起こして全身への影響を与えると考えられている。しかしながら、これらの解釈には多くの未解決の部分が残されている。我々は脂肪幹細胞の分化増殖という観点から、脂肪組織炎症と全身の代謝異常へのmissing linkを解き明かしたいと考えている。 脂肪細胞は、わずかづつ新しい細胞へと置き換わっており、そのために脂肪組織中には前駆脂肪細胞(APC; adipose progenitor cell)と呼ばれる未分化な細胞が少数存在している。APCは、非肥満状態においては成熟した脂肪細胞へ分化し、脂肪滴を蓄えるという本来の役割を果たしている。しかし、肥満状態においては、APCが一部炎症性サイトカインを多く発現するAPDP細胞(adipocyte progenitor derived proinflammatory cell)へと変化し、脂肪組織中の虚血部分に血管新生を促して脂肪組織ボリュームを増やし、過剰な脂質を取り込みやすくするように働きかけていることが我々の研究から示唆された。APCの環境への適応が過剰に働いた場合には脂肪組織炎症の引き金にもなることが想定され、新しい治療法への糸口となると考えている。
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