2015 Fiscal Year Research-status Report
非小細胞肺癌における癌幹細胞表面抗原阻害とヒストン修飾酵素阻害との併用療法の検討
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26461175
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
木下 一郎 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40343008)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ヒストン修飾 / 癌幹細胞 / EZH2 / DZNep / HDAC / SAHA / side population / 非小細胞肺癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、難治性肺癌の新たな治療戦略として、非小細胞肺癌(NSCLC)細胞における癌幹細胞表面抗原の阻害と、癌幹細胞の可塑性に関わるヒストン修飾酵素阻害との併用療法の開発を目標とし、その基盤となる研究を行う。 昨年度の研究で、EGFR遺伝子変異陽性細胞株(PC-3, PC-9, HCC827, H1975)および陰性細胞株(H1299, A549, H460)を用いて、白血病幹細胞の表面抗原であるTIM-3の発現陽性細胞をフローサイトメトリーによって検討したが、有意な陽性細胞の分画が得られなかった。代替の幹細胞表面抗原としてCD44の発現を検討し、50-80%の陽性細胞分画を認めたが、陽性細胞における各種癌幹細胞マーカーの発現上昇は認めなかった。 本年度は、代表的な幹細胞分画として知られるside population(SP細胞)についてH1975を用いて検討し、1-2%のSP細胞を同定した。SP細胞はnon-SP細胞と比べ、ソフトアガロース法でのコロニー形成能とSCIDマウスでの造腫瘍能の増強を認めた。幹細胞マーカーの発現をqRT-PCR法で検討したところ、SP細胞においてcKit、Sox2やNotch1の上昇を認めた。SP細胞に癌幹細胞が濃縮され、Notch1を含む癌幹細胞マーカーの発現が亢進している可能性が示唆された。 一方、癌幹細胞の可塑性に関わるヒストン修飾酵素阻害療法については、EZH2阻害薬DZNepとHDAC阻害薬SAHAの併用療法が、in vitroおよびin vivoでEGFR-TKI耐性細胞を含むNSCLC細胞の細胞増殖を相乗的に抑制することを論文化し、Cancer Science誌に受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
癌幹細胞の可塑性に関わるヒストン修飾酵素阻害療法については、DZNepとSAHAの併用療法がより有効なエピジェネティック治療となり得ることを論文化し、Cancer Science誌に受理された。 また、NSCLCにおける癌幹細胞の表面抗原の同定は困難だったが、代表的な幹細胞分画として知られるSP細胞がin vitroおよびin vivoにおいて幹細胞形質を示すことを確認できた。SP細胞はNotch1を含めた複数の幹細胞マーカーのmRNA発現上昇を認めた。今後、SP細胞におけるタンパク質発現亢進の確認、Notch1阻害薬の効果の検討、ヒストン修飾酵素阻害との併用効果の検討へと進めることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
SP細胞におけるNotch1のタンパク質発現を確認し、ガンマセクレターゼ阻害剤によるNotch1阻害の抗腫瘍効果を検討する。さらに、DZNepやSAHAによるヒストン修飾酵素阻害との併用効果を検討する。なお、ヒストン修飾酵素阻害については、他のヒストン修飾酵素であるBETやJARIDファミリーに対する阻害薬の抗腫瘍効果や、癌幹細胞可塑性に与える影響も検討し、さらに有効なエピジェネティック治療の開発を目指す。
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