2014 Fiscal Year Research-status Report
慢性腎臓病における低酸素転写調節因子の病態制御機構
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26461215
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 哲洋 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (90508079)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲城 玲子 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (50232509)
南学 正臣 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (90311620)
和田 健彦 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (90447409)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 低酸素 / 慢性腎臓病 / HIF |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、低酸素転写調節因子であるHIF3がLOX遺伝子の発現を選択的に抑制する機序をin vitroで検討した。コンピュータープログラムによるモチーフ検索を行ったところ、LOX遺伝子のプロモーターには転写開始点より500塩基上流以内にHIF1結合エンハンサー (hypoxia-responsive element: HRE) が合計6個確認された。次にヒトLOXプロモーターをPCR法によってクローニングし、ルシフェラーゼレポータープラスミドを作製し、培養近位尿細管細胞 (HK-2) に一過性トランスフェクションした。さらにHREの候補6個に対して遺伝子変異導入を行い、同様のアッセイを繰り返したところ、複数の機能的HREが同定された。HIF3の過剰発現実験によって、HIF3がそれら複数のエンハンサー対して独立して多段階で抑制的に介入したため、本現象はHIF3によるLOX発現の強力かつ選択的な抑制機序を説明し得るものと考えられた。 さらに、LOXプロモーターへのHIF1結合はNOTCH1に依存することが報告されていたため、HIF3によるNOTCH活性への影響を調べ、NOTCH阻害によるHIF1遺伝子転写への影響を網羅的に検討した。低酸素刺激によりNOTCH1およびその標的遺伝子であるHes1の有意な発現上昇が認められたが、これらの変化はHIF3の過剰発現によって打ち消された。さらにはNOTCH阻害剤DAPTを用いて、HIF1標的遺伝子プロモーターの低酸素誘導に与える影響を網羅的に検討したところ、LOXの低酸素誘導のみが選択的かつ有意に抑制された。 以上により、HIF3が低酸素下でLOXを選択的に抑制するメカニズムとして、複数のHREに対する協調的な抑制機構、およびNOTCH活性の抑制を介するHIF1結合の減弱化、の少なくとも2つが存在することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ計画通りに作業仮説が検証されており、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度以降は、CKDモデルの腎線維化におけるHIF3ノックダウンおよびLOX阻害の影響を調べる。本研究を通じて、CKDの進行において低酸素転写調節因子HIF3およびその主要標的遺伝子LOXが果たす病態制御上の役割を明確にすることを目標とする。
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