2015 Fiscal Year Research-status Report
慢性腎臓病の進展に関わる新規NAD代謝酵素の同定ならびに機能解析
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26461223
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
荒木 久澄 滋賀医科大学, 医学部, 学内講師 (00362369)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 慢性腎不全 / 1-MNA / NNMT |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病性腎症を含む慢性腎臓病の進行に脂肪酸結合アルブミン (FFA-alb)の脂肪毒性による近位尿細管障害が寄与する事が示唆されているが、その抑制機構は不明であり、その解明は新たな治療標的の開発に寄与すると考えられている。細胞内NAD (nicotinamide adenine dinucleotide)代謝は細胞死の制御に重要であるが、脂肪毒性による近位尿細管障害における役割は明らかではない。そこで本研究では、尿蛋白に伴う尿細管障害に関わりうるNAD代謝酵素群の網羅的スクリーニングから同定した酵素NNMTの慢性腎臓病の発症進展における役割の解明を目指すこととした。腹腔内FFA-alb負荷による尿細管障害モデルマウスの腎臓およびFFA-albで刺激したマウス培養近位尿細管細胞を用いて、刺激により遺伝子発現が変化するNAD代謝酵素を検索し、有意に上昇するNNMT (Nicotinamide N-methyltransferase)を同定した。次にマウス培養近位尿細管細胞において、NNMTの発現抑制がNNMTの代謝分子1-MNA (1-Methylnicotinamide)の細胞内濃度を減少し、FFA-albによるアポトーシスを増悪することを明らかとした。さらに、1-MNAの前孵置はFFA-albによるマウス培養近位尿細管細胞のアポトーシスおよび酸化ストレスを抑制し、1-MNAのマウスへの経口投与は腹腔内FFA-alb負荷による尿細管細胞のアポトーシスや間質の炎症・線維化、酸化ストレスを抑制した。これらの一連の検討から、1-MNA投与が腎症進展予防に対する新規治療戦略となる可能性が示された。本研究内容は雑誌Free Radic Biol Medに掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通りに順調に進行している。引き続き次年度の研究予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
①近位尿細管特異的NNMT過剰発現マウスの作製。前年度に引き続き、近位尿細管細胞特異的に発現するNpt2遺伝子のプロモーターならびにマウスNNMT遺伝子を用いて、NMMT過剰発現マウスの作成し、その後病態モデルでの表現系解析を行う。腹腔内蛋白負荷モデル以外に、種々の糸球体疾患モデル(Alport's syndrome、STZ誘発糖尿病、2型糖尿病db/db、薬剤性誘発性糸球体腎炎)でも、腎内NNMT発現の変化が確認された場合、それぞれの病態モデルをNNMT遺伝子改変マウスに惹起(交配)し、これらモデルでのNNMT発現変化と尿細管病変との関連を検討する ②SNP解析で得られた疾患感受性alleleの機能解析を行う。基礎検討から得られた腎症関連SNPはNNMT遺伝子のIntron内に存在するSNPであり、Exon内に存在しないことから、このSNP自体が直接酵素活性に影響を与える可能性は考えにくい。これまで、他の遺伝子におけるIntron内のSNPが転写に対するenhancerとして働き、遺伝子の発現量調節に関わることが報告されている。よって、本研究ではまず、同定されたSNPが転写enhancerとしての役割を持つか否かをLuciferase vectorを用い検討する。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] 1-Methylnicotinamide ameliorates lipotoxicity-induced oxidative stress and cell death in kidney proximal tubular cells.2015
Author(s)
Tanaka Yuki, Kume Shinji, Araki Hisazumi, Nakazawa Jun, Chin-Kanasaki Masami, Araki Shin-ichi, Nakagawa Fumiyuki, Koya Daisuke, Haneda Masakazu, Maegawa Hiroshi, Uzu Takashi.
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Journal Title
Free Radic Biol Med.
Volume: 89
Pages: 831-841
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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