2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26461232
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大坪 俊夫 九州大学, 大学病院, 講師 (30423974)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 虚血再灌流障害 / キサンチン産生酵素 / 活性酸素 / 一酸化窒素 |
Outline of Annual Research Achievements |
虚血再灌流障害は、ショック、梗塞、移植など様々な病態に関与している。虚血再灌流時、大量に産生される活性酸素の主な産生源として、キサンチン酸化還元酵素(XOR)の関与が報告されてきた。また、興味深いことに虚血状態においては、XORがeNOSに代わって亜硝酸より一酸化窒素(NO)を産生し、組織保護的に働く可能性が最近報告されている。そこで我々は、XOR遺伝子改変(XOR+/+、XOR+/-)マウスを用いて、XORの虚血再灌流障害における役割を検討した。 虚血再灌流モデルマウス(XOR+/+IR, XOR+/-IR)、再灌流直前にXOR産生阻害薬(Allopurinol)を腹腔内投与する(XOR+/+ IRA)群を作成し、Sham治療群(XOR+/+S, XOR+/-S)と比較検討を行った。XOR+/+IRマウスでは著明なBUN, Crの上昇、組織学的に腎臓の皮髄境界を中心とした障害を認めた。XOR+/-IRマウスは、 XOR+/+IRAマウスと同程度まで腎障害の程度が軽減した。虚血再灌流障害には活性酸素の増加、炎症の関与が示唆された。XOR以外の活性酸素産生源であるeNOS, NADPHオキシダーゼの遺伝子発現に変化は認めなかった。虚血時のXORの組織保護的役割に関しては、亜硝酸を虚血開始前に投与するXOR+/+IRNマウスを用いて検討を行った。亜硝酸投与は腎虚血再灌流による腎障害をXOR+/-IR, XOR+/+IRAマウスレベルまで有意に改善した。 XOR/ApoE, XOR/eNOSのdouble KOマウスに関しては、生存率の検討を行った。XOR+/-ApoE-/-マウス並びにXOR+/-eNOS-/-マウスは平均寿命が16カ月と短命であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本実験の遅れている一番の理由は、実験を実施する人員不足が生じたことにある。本実験を主に遂行予定であった1名は体調を崩して、動物実験の実施が困難となった。また、生理学実験をお願いする予定であった1名も、実験に参加する時間の確保が困難であった。申請者自身も実験に充分な時間を確保することが困難であった。 2つ目の理由としては、in vitroの実験において、2種類の培養細胞(ヒト血管内皮培養細胞(HUVEC細胞)とヒト尿細管培養細胞(HK2細胞))を用いて低酸素再酸素化での実験系の確立に努めた。過去の文献においては、培養細胞を用いた低酸素再酸素化実験においてXDHの活性は有意な増加を示し、病態への関与が示唆されているが、今回行った実験条件では、虚血時には活性の増加を認めたが、再酸素化においては有意な活性の増強は認められなかった。 3つ目の理由に、XOR/eNOS, XOR/ApoEマウスを用いて研究を進める予定としていたが、準備していたXOR/eNOS並びにXOR/ApoEマウスは交配を重ねると、genotypeに偏りを生じた。XOR+/-eNOS-/-マウスのオスとメスを交配するとすべてXOR+/-eNOS-/-でXOR+/+eNOS-/-は出生しなくなった。XOR/ApoEマウスに関しても同様な結果となった。XOR+/-マウスのオスとメスからはXOR+/+、 XOR+/-マウスの両方の出生がgenotypingで確認できており、genotypingの手技的な問題ではないようである。そこで、XOR遺伝子欠損マウスを凍結胚より再度立ち上げて今後の交配に使用する準備を行った。また、同時にXOR+/-eNOS-/-マウスとXOR+/+eNOS+/+(wild type)マウスとの掛け合わせなどを行い、現在マウスの準備を再度行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
一番の問題である人員不足に関しては、研究代表者が実験実施時間を増やして対応するとともに、生理学実験などに関して、研究室の協力を募って進めていく。 腎虚血再灌流障害におけるXORを介した組織障害に関しては、現在論文作成中で、今後投稿を行っていく。虚血におけるXORの組織保護に関しては、亜硝酸投与下におけるXOR遺伝子欠損マウスを用いた検討、XOR阻害薬の投与時期での障害への影響などによりXORの組織保護効果を検討していく。腎組織障害の機序に関して、HK2細胞では、虚血時のXDH活性が増強する条件で、再酸素化時間を変更し検討したがXDH mRNAの発現に変化を認めなかった。過去の報告では、HUVEC細胞を始めとして様々な細胞において、低酸素再酸素化でXORの細胞障害への関与が報告されており、今後再度実験系などの見直しを行っていく。亜硝酸投与の影響も検討したい。 XOR/eNOS遺伝子改変マウスが使用可能となれば、eNOSのワイルド、ヘテロ、ホモマウスを用いて虚血再灌流障害モデルマウスを作成し、腎虚血再灌流障害におけるeNOSとXORの相互作用を検討する。また、腎障害への影響、活性酸素産生源の解明などをも検討する XOR/eNOS、XOR/ApoE double KOマウスの加齢に伴う検討では、寿命に違いを認めており、今後生後発育に伴う、体重の変化、血圧の変化、血液検査や組織染色などによる臓器障害の評価、胸部大動脈の内皮依存性血管弛緩反応の測定等を行っていく。 実験結果に関しては、学会・論文で公表していく。
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