2015 Fiscal Year Research-status Report
ゲノム情報に基づく腎尿細管間質性障害の新しい系統的診断フローの構築
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26461246
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
塚口 裕康 関西医科大学, 医学部, 講師 (60335792)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 疾患遺伝子 / 間質性腎炎 / ゲノム / 腎不全 / 尿細管 / シークエンス / 変異 |
Outline of Annual Research Achievements |
背景:尿細管腔構造の恒常性の維持は、ネフロン機能を保つうえで必須である。実際に多くの臨床研究で尿細管間質障害の程度が、腎予後と相関することが示されている。尿細管間質炎は、遺伝子異常、自己免疫、薬剤性等と様々な原因が関与しうる多因子疾患で、ほとんどが孤発性である。しかし一部の症例は、家族性があり遺伝的要因で発症すると推測されるが、原因の多くはまだ解明されていない。 目的: 尿細管間質性腎炎の中でも、優性遺伝形式に従う単一遺伝型家系を収集して、エキソーム解析法により原因遺伝子を同定し、分子病態を明らかにする。 方法: ゲノム研究倫理委員会承認済みの計画書に準拠し、同意書を取得した後、患者末梢血白血球からゲノムDNA を抽出する。全エクソン50Mbのライブラリー(Sureselect version 5)を作成した後、HiSeq 2000で塩基配列を決定する。変異体を培養細胞に発現し、その局在や機能を評価する。 重要性と意義: 尿細管障害の初期では、一般血液・尿所見の変化が乏しく、見逃されることが多い。早期発見と治療のためには、感度のよい疾患マーカーの開発が必要である。家族性症例の解析により、尿細管間質障害の発症や進展の鍵を握る分子群を明らかにし、実地診療に役立つ簡便な診断法や将来の標的治療を開発する基盤をつくる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
家族性尿細管間質性腎炎(優性遺伝)の臨床情報と検体(血液・尿・唾液)サンプルの収集を行った。収集する診断基準とは、(1) 家系内の少なくとも1人(発端者)が腎生検で尿細管間質性腎炎と診断されている、(2) 家族内の成員に、末期腎不全(透析療法、あるいは CKD stage 3~5 (eGFR 60ml/分未満、蛋白尿陽性)がいる、の2項目を満たすものとした。軽症間質性障害の見逃しを防ぐために、血清尿酸値、尿酸クリアランス、高血圧の有無についても確認した。腹部超音波で、髄質エコー輝度や嚢胞形成の確認、腎の大きさ、左右差を調べた。また繊毛病の可能性を考え、眼底、頭部CT、心エコーなどの全身所見についても情報を収集した。倫理審査承認の後、検体採取の完了した症例から、全エキソーム解析を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
家族性尿細管間質腎炎は、比較的緩徐に尿細管変性・萎縮や線維化が進行するものが多い。発症年齢、症状(尿蛋白、高尿酸血症)に幅があり、病理や生化学所見のみで診断することは難しい。また代表的な遺伝性尿細管性疾患である多発性嚢胞腎と違い、家族性尿細管間質腎炎では嚢胞形成は軽微である。したがって超音波や画像診断を用いても、診断や病変の進行度を評価は難しい。国際的にも、これまでに知られている優性遺伝の間質障害を、Autosomal dominant tubulo-interstitial disorder ADTIDという新名称で総括し、原因遺伝子情報を基軸に疾患診断基準や亜型分類を改変しようという動きが見られる(KDIGO consensus report 2014)。本研究も、このような流れに沿って分子診断を軸に診断・治療を構築することを目指す。
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Causes of Carryover |
2年目の計画は、(1) 検体・臨床情報収集と、(2) シークエンス解析、(3) 尿・血清の疾患マーカー検索、(4) 国内外での成果発表、を柱として研究を遂行した。臨床情報や家族サンプルの収集、倫理審査や家族同意取得は、本研究の目標達成、成果還元のために不可欠であるため、時間をかけて慎重に行った。結果的に(1) に予想以上の時間と労力を要した。しかし、前年度に比し(2), (3), (4) の計画も、前に進めることができた。遺伝診断の正確さを期すための消耗品の割合が増えたが、旅費、謝金を抑えることができた。また研究資材を再利用するなど、できる限りの浪費を抑え研究費の有効活用を心がけたことも、使用額抑止につながった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究計画を効果的・効率的に遂行するために必要なサンプルと臨床情報は収集できた。今後はシークエンス解析や、血・尿蛋白疾患マーカー解析に重点をおき、予定計画を遂行する。また研究協力者とのミーディングを開き、得られた結果の妥当性や、今後の目標達成に要する課題について議論する。また得られたデータを基に国内外の学会発表や論文作成を開始し、研究成果を広く社会に還元する。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Short-term outcome and quality of life in kidney transplant recipient with monoclonal gammopathy.2016
Author(s)
Yanishi M, Tsukaguchi H, Yoshida T, Taniguchi H, Yoshida K, Mishima T, Komai Y, Yasuda K, Watanabe M, Sugi M, Kinoshita H, Matsuda T
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Journal Title
CEN Case Rep
Volume: XX
Pages: XX
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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