2014 Fiscal Year Research-status Report
双方向性大動脈血流の波形分析に基づく高血圧性臓器障害の病態解明
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26461248
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
橋本 潤一郎 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50333795)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高血圧 / 大動脈 / 血流 / 臓器障害 / 腎機能 / 血行動態 / 動脈硬化 / 臨床病態学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、高血圧患者を主な対象として、胸腹部大動脈の血流波形を超音波ドップラ法によって記録する研究実施体制を確立した。また、胸部近位下行大動脈の双方向性血流に関して、新規の波形解析アルゴリズムに基づいた定量的かつ詳細な分析方法を独自に開発した。同時に、種々の中心血行動態指標(中心血圧・大動脈スティフネス等)および高血圧臓器障害指標をあわせて評価し、血流波形との相互関連についてデータ解析を行った。 これらの分析の結果、本年度内において、大動脈双方向性血流と高血圧性腎障害の関連に関する新知見を得ることができた。具体的には、近位下行大動脈における拡張期逆流が高血圧患者の腎機能と独立に関連することを見出し、大動脈逆流が増加するほど腎内への流入血流が減少して糸球体濾過率が低下することを実証できた。加齢等に伴う大動脈の硬化が腎機能の低下を引き起こすことは以前からよく知られているが、その病態学的機序は不明であった。大動脈内の逆流が大動脈硬化に起因する腎障害の原因であることを示したのは、知りうる限り本研究が初めてである。 以上の研究成果は、本年度の国際高血圧学会ならびに日本高血圧学会等において口頭にて発表(シンポジウム・パネルディスカッション・招待講演等)を行った。本成果は、米国心臓協会雑誌であるHypertension誌において原著論文として掲載されることが確定している。また、関連する研究内容について、国際・国内雑誌において総説等として公開を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現在までの達成度は、以下のようにまとめられる。 1.近位下行大動脈血流波形に関して、独自の解析アルゴリズムを開発し、非侵襲的かつ定量的な評価が可能となったこと。 2.上述の記録・分析法を広く対象者に適用し、関連データ(基本情報、血圧・生化学データ、臓器障害指標等)とともに血流波形データを順調に蓄積してきたこと。 3.データ分析の結果、重要な所見を得ることができ、国内・国外の主要学会ならびに国際主要雑誌において成果を公開したこと。 これらの点から本研究は、開始から1年という期間内において、当初の計画以上に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策を以下に列挙する。 1.平成26年度において確立した方法を用いて、データ収集を継続し、データベースをさらに拡充・強化する。2.大動脈血流の関心領域を、胸部近位下行大動脈のみならず胸部遠位および腹部大動脈まで広げ、異なる大動脈部位における血流波形の相違ならびに主要臓器血流との関連について検討する。3.大動脈双方向性血流と高血圧性臓器障害の関連について、腎臓以外の臓器(脳や心臓等)においても検討を行う。4.対象者を高血圧患者のみならず、一般健診受診者や健常ボランティア等にも拡げ、大動脈血流の生理的意義を明らかにするとともに、健常人と高血圧患者の比較を行って大動脈血流の病的変化について検討する。5.平成26年度に収集した横断的データを基に、臓器障害の進展や抑制を評価する前向き追跡研究データベース構築のための基盤作りを行う。
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Causes of Carryover |
当初の予定と比較して、物品費ならびに旅費にかかる費用が少なかった。また、探索的な研究を主な目的とした本年度においては、研究が比較的順調に進み、研究者単独でも実施が可能であったため、研究補助のための人件費を必要としなかった。一方、健常者を対象とした研究については当初より開始が遅れ、謝金の必要性が生じなかった。これらの結果、全体として今年度使用額は予定より少額となり、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度においては、研究遂行ならびにデータ分析に必要な物品費が今年度よりも増加する見込みである。また、次年度には今年度に得られた研究成果の発表や今後の研究推進のための情報収集を目的とした国内・国際学会への積極的な参加を予定しており、今年度と比較して旅費が増加する予定である。さらに、次年度からの研究領域拡大に伴って、研究補助者等にかかる新たな人件費等が必要となる予定である。
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