2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26461259
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
河原 克雅 北里大学, 医学部, 教授 (70134525)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安岡 有紀子 北里大学, 医学部, 講師 (50348504)
福田 英一 北里大学, 医学部, 助教 (20433716)
石井 大輔 北里大学, 医学部, 講師 (10327413)
野々口 博史 北里大学, 北里大学メディカルセンター, 副院長 (30218341)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 腎集合管 / 間在細胞 / アルカリ分泌 / 酸負荷 / 低リン食 / 高Ca血症 / 高Ca尿症 |
Outline of Annual Research Achievements |
アメリカ腎臓学会(San Diego, 2015.11.3-7)、日本生理学会(札幌、2016.3.22-24)で研究成果を公表した。要点は、(1) Ca感知受容体(CaSR)のネフロン内局在を調べ(Tyramide-ISH法;二重染色法)、マウス腎皮質集合管B型間在細胞(IC-B)側底膜にのみ発現していることを明らかにした。遺伝子発現量は、アルカリ負荷で増加し、酸負荷で減少した。しかし、ネフロン内局在、CaSRの生理学的意義には異論が有り、現在、我々およびアメリカ、イギリスの研究グループは、それぞれ独自の実験データを蓄積中である。(2) 低リン食飼育(7日間)マウスが、高Ca血症、高Ca尿症、低Pi尿症、アルカリ尿、代謝性アシドーシス(MA)を示す事を報告した。(3) 低リン食飼育マウスにおけるMAでは、集合管IC-A(酸分泌細胞)の細胞高、側底膜のCl-/HCO3- 交換輸送体 (AE1)の発現量は変化せず、MAによる酸排泄促進効果は見られなかった。(4) 一方、皮質集合管IC-B(アルカリ分泌細胞)の細胞高、管腔膜・側底膜のCl-/HCO3- 交換輸送体 (Pendrin・AE1)の発現量は増加した。(5) 低リン食飼育マウスにおけるMAの病態生理学的機序として、「皮質集合管IC-B管腔膜に局在するPendrinの過剰発現・機能亢進による不適切な尿アルカリ化とそれに伴う非調節性の血漿酸性化による」と結論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) Ca感知受容体(CaSR)mRNA・蛋白質の腎ネフロン内発現(腎皮質集合管IC-B)と細胞内局在(側底膜)を、特異性の高い全く独自の方法(Tyramide-ISH法)と二重染色法を組み合わせて明らかにした。さらに、CaSRの発現量は、発現細胞(IC-B)の機能調節に合致した発現応答を示した。つまり、アルカリ負荷で発現量が増加し、酸負荷で減少した。CaSRの局在と機能的役割については、国内外の学会および研究会で公表している。 (2) 低リン食飼育(7日間)マウスが、高Ca血症、高Ca尿症、血漿[Pi](正常)、低Pi尿症、アルカリ尿、代謝性アシドーシス(MA)を示す事は今まで報告がなかった。しかし、低リン血症によりアシドーシスになった患者の救命救急関連の文献を調べると類似の症状(低リン血症、高Ca血症、高Ca尿症、酸塩基異常)があった。われわれは、これらの文献データにより我々の研究の方向性の正しさを確認した。 (3) 5/6腎摘マウスの切除面からの距離に逆比例した糸球体・尿細管組織障害を顕微鏡レベルで確認した。また、顕微鏡レベルでは線繊化が見られない領域の「拡大糸球体」において、Nestinの発現誘導を証明した。これらは、2016年6月の日本腎臓学会(横浜)で、発表予定である。 (4) 外部機関から購入したMDCK細胞を使って、Confluent以降の時間依存的Dome形成を観察し、等張液環境下におけるDomeの退縮変化(Dome内液の分泌)について、薬理学的作用を調べた。
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Strategy for Future Research Activity |
CaSRが腎皮質集合管IC-B(側底膜)に発現し、機能している事を、全く独立した実験系で証明する。 (1) 単離皮質・髄質外層集合管(単離CCD・OMCD)、単離Henleループの太い上行脚(単離TAL)において、非侵襲的に細胞内Caシグナルを測定し分析する(共焦点レーザー顕微鏡を使った細胞内Caシグナルの光学的測定など)。 (2) CaSRの特異的アゴニストとされているネオマイシン、R568を投与し、細胞内Caシグナル変化を観察し、解析する。 (3) 酸負荷・アルカリ負荷による集合管細胞の形状変化(光学顕微鏡レベルで確認済み)を、単離尿細管においても計測できるよう、実験方法、実験装置の改良を含め検討している。 (4) 皮質集合管IC-B(側底膜)のCaSRが、高Ca血症により発現誘導および細胞内シグナル機能亢進しているかについて、実験的に明らかにする。
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Causes of Carryover |
マウス腎単離尿細管標本作製のための技術的修得に時間を費やしたため。この方法は、無酵素処理のマウス腎臓のスライス標本を、先端の細いピンセットを使い実体顕微鏡下でほぐす技術である。単離尿細管の技術修得は難しいので年間の実験数が減り、さらに、コラゲナーゼ等の薬品を使わないので、消耗品費の総支出額が減った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、無酵素処理マウス腎臓から単離尿細管標本作製技術を修得しているので、実験数は平成27年度に比べ増加が見込まれる。実験数増加に見合った、消耗品費支出が見込まれる。
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Research Products
(4 results)