2015 Fiscal Year Research-status Report
脳虚血後微小循環障害の機序解明- アンギオテンシンに注目して -
Project/Area Number |
26461278
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
林 健 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (40314679)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 元 埼玉医科大学, 医学部, 助教 (00646680)
福岡 卓也 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (50646221)
栗田 浩樹 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (70262003)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 微小循環障害 / 脳虚血 / アンギオテンシン / 再灌流 |
Outline of Annual Research Achievements |
われわれの研究は、一過性虚血後脳(血栓溶解療法が施行された脳梗塞患者の脳の病態を反映していると考えている)における微小循環障害について、アンギオテンシンIIとその受容体の役割を解明することにある。 平成26年度の研究において、アンギオテンシンII type 1受容体(AT1)欠損マウスと野生型マウスを用いて比較検討を行い、前者において一過性虚血後の白血球や血小板のrollingやadhesionが低下していることを発見した。このことはAT1受容体からの刺激が虚血後脳における微小循環障害の一要因になっていることを示すものである。 平成27年度は、あらたにアンギオテンシンII type 2受容体(AT2)欠損マウスを用いて研究した。ヒトの脳梗塞により近似している一過性中大脳動脈閉塞モデルでの検討を試みているが、モデル作成が安定しないため、結論を言える一貫したデータはそろっていない。そのため、比較的安定している両側総頸動脈一過性閉塞モデルを作成し、これにより検討した。すると、AT2欠損マウスにおいては、一過性虚血後脳の細動脈および細静脈における白血球や血小板のrollingやadhesionが野生型マウスよりも増加していることが判明した。このことは、AT2受容体からの刺激が虚血後脳における微小循環障害を抑制する作用をしているということである。この結果は、国際医学誌「J Thromb Thrombolysis」に発表・掲載された。 現在までの研究で得られた結果からは、「アンギオテンシンIIはAT1に作用すると虚血後の脳微小循環障害をもたらし、AT2受容体に作用すると脳微小循環障害を軽減する方向に作用する」というものである。このことはAT1受容体阻害剤内服患者の脳梗塞が比較的軽い傾向にある臨床的知見と合致するものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アンギオテンシンII type 1受容体(AT1)およびアンギオテンシンII type 2受容体(AT2)の2つの受容体の脳微小循環障害における役割を解明できたのは期待通りの成果であり、その点については順調な進捗と考えている。国際医学誌にも発表し、このプロジェクトのおおむねのconclusionは得られた。 その一方で、(ヒトの脳梗塞により近いと考えられる)一過性中大脳動脈閉塞モデルが安定していないのは、想定以上の遅れである。両側総頸動脈一過性閉塞モデルで得られた結論を本モデルでも確認できれば、血液脳関門の破壊との関連など、より踏み込んだ機序の解明に道を開くことができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で用いているC57blackマウスは、ナイロン栓子による中大脳動脈閉塞モデル作成が難しい傾向にある。そのため、平成27年度の「推進方策」に記載したとおり、本モデルの安定した作成と一貫した結果の追及は行いながらも、両側総頸動脈一過性閉塞モデルでの研究も引き続き行っていく予定である。白血球や血小板のrollingやadhesionの検索からさらに進み、血管透過性の評価などを行っていく予定である。このことは、血栓溶解療法による脳梗塞の出血性変化との関連で臨床的事項と関連している課題である。 ナイロン栓子による中大脳動脈閉塞モデルに関しては、使用機材の再検討、ナイロン栓子の工夫などを引き続き行っていく。
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Causes of Carryover |
平成27年度の研究進捗は、若干の遅れはあるものの、おおむね順調であった。次年度使用額の発生は平成26年度の研究の遅れと未使用額の存在によるところが大きい。 ナイロン栓子による一過性中大脳動脈閉塞モデルの作成が安定していないため、組織学的検討が不十分であり、結果的にそれに関連しての消耗品の購入があまりないことも影響している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は組織学的検索に要する試薬や消耗品の使用が多く見込まれる。これには、ナイロン栓子による一過性中大脳動脈閉塞モデルでの検索のみならず、(本モデルが安定しなかった場合でも)両側総頸動脈一過性閉塞モデルでも血管透過性評価などを行う予定だからである。
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Research Products
(1 results)