2015 Fiscal Year Research-status Report
GFAP遺伝子異常症であるアレキサンダー病の臨床および病態機序に関する研究
Project/Area Number |
26461297
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
滑川 道人 自治医科大学, 医学部, 講師 (30332993)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
嶋崎 晴雄 自治医科大学, 医学部, 講師 (30316517)
直井 為任 自治医科大学, 医学部, 研究員 (30598694)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | GFAP / アストロサイト / 脊髄小脳変性症 / 遺伝性痙性対麻痺 |
Outline of Annual Research Achievements |
アレキサンダー病はアストロサイト特異的マーカーであるGFAP遺伝子に変異を持つ,唯一のmonogenic glial cytopathyである.臨床的には1)乳児型,2)若年型,3)成人型の亜型に分類される.1)乳児型は前頭葉優位の大脳白質,2)若年型は後頭蓋窩(脳幹および小脳),3)成人型は特に延髄~頸髄に病変の主座があり,それぞれの臨床症状および頭部MRI画像は異なる.臨床症状および遺伝子変異の連関は,現在のところ不明である. そこで我々は,臨床的にアレクサンダー病が疑われる症例において,GFAP遺伝子診断を積極的に施行している.平成27年度には新たに2症例のGFAP遺伝子検査を施行したが,いずれも陰性であった.なお本研究の前のスクリーニング検査では,新たなSCA1を3例,Machado-Joseph病を2例,見出した.うち2例は非常に興味深い症状を呈しており,現在論文作成中である. さらにGFAP遺伝子変異が認められないもののアレキサンダー病に合致する臨床症状を呈する家系を対象とし,次世代シーケンサーを用いた新規遺伝子の同定を目指している.現在,常染色体優性遺伝形式を取る,痙性対麻痺と白質脳症を呈する家系を対象にして研究が進行中である. 一方,疾患の病態生理を解明するため,同時に基礎研究も遂行中である.特に変異型GFAPタンパクが神経変性を引き起こす機序を解明するにあたり,アストロサイトに特異的に発現する小胞体ストレスセンサーであるOASISタンパクに注目している.この相互連関を解明すれば,アストロサイトの分化の調整に新たな知見が加えられるだろう.さらに本研究はアレキサンダー病のみにとどまらず,脳血管障害,頭部外傷,神経感染症,自己免疫疾患など広範な神経疾患におけるアストロサイトの関与を明らかにできる可能性があり,神経科学研究のブレイクスルーとなりうる可能性を秘めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
臨床研究のひとつである,アレキサンダー病のGFAP遺伝子診断に関しては,2例を実施したが,いずれも陰性であった.すなわち臨床症状および遺伝子変異の連関(Genotype-Phenotype Correlation)に関する新たな知見を得ることはできなかった.本研究をさらに進めるためには,当施設でGFAP遺伝子診断をしていることを,さらに広く啓発してゆくことが必要であろう. 一方,その前段階である,既知の脊髄小脳変性症および遺伝性痙性対麻痺の遺伝子診断においては,いくつかの新知見を得ることができ,現在論文準備中である. 次に次世代シーケンサーを用いた新規遺伝子の同定の研究であるが,これも滞っている.研究代表者が2015年4月に異動し,後任に患者を引き継いだのだが,その後,患者が転院後に死亡され,協力的であった患者家族が,研究の同意を撤回された.よって研究が頓挫してしまった.現在,異動先の病院で,新たな家系をリクルートしているところである. また,培養細胞系を用いた変異GFAPとOASISとの連関についての基礎研究は,未だ着手されていない.その最大の原因は,研究代表者の異動である.2015年4月に新病院へと異動したため,その業務内容の変更,研究室のセットアップ,各種申請書類作成などに予想以上の時間がかかった.さらに研究を共同して進める予定であった,研究分担者の協力が得られなくなったことも挙げられる.
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Strategy for Future Research Activity |
前述のような経緯により,研究は遅延していたが,研究代表者も異動して1年が経過し,臨床業務と研究とのリズムもつかめてきた.さらに学内での倫理委員会において,本研究申請も昨年度のうちに承認されている. 臨床研究に見合う症例も徐々に蓄積され,非常に興味深い家系にも遭遇している.それは痙性対麻痺と白質脳症を呈する,常染色体優性遺伝形式をとる家系であり,次世代シーケンサーを用いた新規遺伝子の同定を目論んだ研究に適合する可能性がある.更なる症例のリクルートのため,当施設で提供できる遺伝子診断について,広く啓発してゆく. 基礎研究の方も,状況が整備されてきており,開始目前である.
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Causes of Carryover |
前述した通り,2015年4月より研究代表者である滑川道人が,自治医科大学(本学)から自治医科大学附属さいたま医療センターへと異動になった.それによりこの1年間は研究が思うように進まず実験が先送りとなり,その分,年度内に使用するはずだった予算が余った.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度には,研究が遂行できるように誠意努力する.具体的には臨床研究部門に関しては,患者のリクルートを積極的に行うべく,当センターで提供できる遺伝子診断システムについて広く啓発する. 基礎研究も,すでに研究開始の障害となるものはなく,スタート目前である.
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Research Products
(5 results)