2014 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病病態形成ヘパトカイン・セレノプロテインPおよびその受容体の結晶構造解析
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26461328
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
菊地 晶裕 金沢大学, 医学系, 博士研究員 (90321752)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 糖尿病 / ヘパトカイン / セレノプロテインP / タンパク質結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病病態を形成するヘパトカイン(肝臓由来の分泌タンパク質)であるセレノプロテインP(SeP)の結晶構造解析を目指し、ヒト血漿から精製したSePを用いて結晶化条件のスクリーニングを行った。SePは糖鎖修飾のため電気泳動のバンドがブロードであり、精製タンパク質そのままでは結晶化に不利である。そこで、糖鎖を切断することで構造上の均一性を改善した試料を用いてスクリーニングを行ったが微結晶が得られるのみであった。 さらに、本年度は組み換え体を用いた結晶化条件のスクリーニングも開始した。具体的にはSePに含まれるセレノシステインをシステインに置換した組み換え体の発現系を構築した。システイン置換体はHEK293細胞を用いて発現させ、上清からアフィニティークロマトグラフィーにより精製を行うことが出来た。しかし、ヒト血漿由来のSePと同様に電気泳動のバンドはブロードであり、また、セレノシステインがシステインに置換されているため、分子量はヒト血漿由来のSePと比べて小さくなるはずであるが、精製した置換体はヒト血漿由来のSePとほぼ同一な分子量であった。これらはシステイン置換体においても糖鎖が付加していることを示しており、結晶化条件のスクリーニングと合わせて、糖鎖切断の条件検討も必要と思われる。また、293SGnTI(-)細胞を用いて均一な糖鎖が修飾したシステイン置換体の発現・精製も検討したい。
Biacoreを用いてヒト血漿から精製したSePと受容体との相互作用を解析したところ、SePが特異的に結合すると思われる結合ドメインを見出した。さらなる解析を行い、アフィニティーを算出すると共に、システイン置換体と受容体との相互作用の解析を行うことも必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
SePの結晶化条件検討 近年では放射光施設を利用することで微結晶でも回折実験を行うことが出来るため、本年度はヒト血漿由来のSePから得られた微結晶を用いての回折実験を予定していた。しかし、精製のロットにより結晶化の条件が変わったり、微結晶ですら得られなかったりしており、予備的な回折実験も行うことが出来なかった。一方、システイン置換体の発現・精製条件の検討を開始しており、結晶化条件のスクリーニングを行うターゲットを追加する準備は整ってきた。
受容体の結合ドメインの同定 Biacoreを用いた相互作用解析での最適な測定条件を決めることが出来なかった。特に、再生条件が決まらず、アフィニティー解析に至っていない。発現させる結合ドメインの領域やタグの種類・位置、さらにはセンサーチップへの固定方法など再検討が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト血漿由来のSePを用いた結晶化条件のスクリーニングを引き続き行う。本年度に実施出来なかった微結晶の回折実験を放射光施設にて行い、微結晶による結晶構造解析の可能性を見極める。ここでヒト血漿由来SePの結晶構造解析が困難となれば、システイン置換体での結晶化を優先とする。 そこで、次年度はシステイン置換体を用いた結晶化条件のスクリーニングを行うが、その効率を考えて理化学研究所に設置されている結晶化自動装置の利用を検討している。また、均一な糖鎖のみを修飾させる293SGnTI(-)細胞を用いたシステイン置換体の発現・精製も試みる。さらに、システイン置換体を受容体のSePが特異的に結合すると思われる結合ドメインに結合させた複合体の結晶化も試みる。そのためには、Biacoreによりヒト血漿由来SePと受容体との相互作用解析を行ってアフィニティーを求めるとともに、システイン置換体と受容体との相互作用についても解析を行い、それをヒト血漿由来のSePと比較する。 システイン置換体がヒト血漿由来のSePと同様な相互作用をするのであれば、SePを標的とした阻害剤の探索をハイスループットスクリーニングで行う。当初の研究計画では、インシリコスクリーニングにより阻害剤候補を探索する予定であったが、システイン置換体であれば、受容体の結合ドメインと同様に組み換え体として得ることが可能であるため、蛍光タグなどを付加させることも出来る。そのため、アッセイ系の構築はヒト血漿由来のSePを用いるのに比較すれば構築しやすいことが期待される。ハイスループットスクリーニングにより阻害剤の候補を見つけることができれば、熱エネルギー的に「SeP-受容体」の2者複合体よりもさらに安定化した「SeP-阻害剤-受容体」のような3者複合体を形成させることが出来る可能性もあり、結晶構造解析に対しても有利になると考えられる。
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Causes of Carryover |
組み換えタンパク質を発現させるための培養用インキュベーターを設備備品費として申請していたが、他で確保した研究費で購入したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
組み換えタンパク質用の培養・精製に用いる試薬類や結晶化条件スクリーニングに用いる消耗品、結晶構造解析のデータ処理に向けた環境整備に使用する計画である。また、結晶化自動装置を用いた結晶化条件のスクリーニングやハイスループットスクリーニングは他機関での実施となるため旅費としても使用する計画である。
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