2014 Fiscal Year Research-status Report
2型糖尿病発症・進展におけるグルカゴン分泌の病態生理学的意義の解明
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26461336
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
河盛 段 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50622362)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松岡 孝昭 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10379258)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | グルカゴン / 糖尿病 / シグナル伝達 / インスリンシグナル / ストレス応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では将来の新規糖尿病治療法の確立を視野に入れ、糖尿病の病態悪化に深く関与しているグルカゴン分泌異常の発症要因・時期・メカニズムの解明を目指し検討を行っている。 1.代謝要因による生体内グルカゴン分泌変化の検討 糖尿病におけるグルカゴン分泌異常の発症メカニズム・要因・疾患進展における発症時期の解明を目的に、高蛋白質食(糖質制限食)・高脂肪食・高糖質食をマウスに慢性負荷し、各種代謝パラメータの変化を解析した。6週令C57B6雄性マウスに対し、当初の計画どおりの各種栄養素変更食の16週間負荷を行った(6/30~11/3、4群、各3匹)。高蛋白質糖質制限食摂取群において随時血糖・体重が低値となる傾向にもかかわらず、耐糖能及びインスリン抵抗性の悪化傾向を認め、その背景としてインスリン分泌の低下とともに血中グルカゴン高値を認め、グルカゴン分泌異常の発症が示唆された。 2. グルカゴン分泌異常発症の分子メカニズムの解明 グルカゴン分泌細胞株InR1Gを用い、糖尿病を模倣する慢性高グルコース負荷により惹起されるグルカゴン制御異常の責任分子メカニズムを検索した。InR1Gに対する慢性高グルコース負荷は、糖尿病と同様のグルカゴン分泌パターン異常を惹起し、この時に生理的グルカゴン分泌調節に重要であるインスリンシグナルAkt の障害、ストレスシグナルJNKの活性化を認めた。Akt活性化障害の一方、ERK活性化には亢進を認め、糖尿病下のα細胞量的異常への関与も示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
動物実験においては、当初の計画通りにマウス及び医学的に妥当性を有する特別飼料を設計・準備することができ、これらを用いて負荷実験を施行しえた。加えて様々な特別餌の負荷によりマウスにおいて体重や血糖、インスリン作用といった重要な代謝学的パラメータの変化を誘導することができ、計画通りの病態生理学的解析が可能となっている。特に、これまでその経過が不明であったグルカゴン分泌について変化を認めており、本実験の意義の大きさを確認できた。一方で、さらなる科学的な意義の探索並びに再現性の確認のためにはサンプル数の増加が必要であるが、本報告書作成時には既に同様のプロトコールを踏襲する形で第2セットの負荷実験を進行させるなど、解析予定数の確保に向け研究を推進している。 細胞株を用いた分子生物学的実験においては、糖尿病を模倣するべく行った慢性高グルコース負荷が、糖尿病において臨床上認められるグルカゴン分泌異常と同様の異常をInR1Gにおいて惹起し、実際にその異常に介在する責任メカニズムの一端を同定し得た。加えてインスリンシグナルではAkt活性化障害の一方、ERK活性化には亢進を認めるなど、想定外の変化が認められており、これらさらなるメカニズム解明の礎となる所見を見出した。 従って、現在までは概ね当初の計画通りの実験・研究進行が得られており、今後の研究の進展に向けた基礎的なデータを着実に蓄積していることより、研究計画はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
動物実験においては、当初の計画通りの実験プロトコールの確立とそれに則った実験データを得ており、今後もサンプル数増加によるデータの蓄積により代謝学的パラメータ変化を捉えるとともに、本実験により初めて見出されたグルカゴンの経時的変化についてさらなる検討を行う。現在、新たな対象での負荷実験を進行させており、グルカゴン分泌異常・代謝異常発症のパターン・時期などの解明を目指す。今後はこれらに加えて、これらに対する治療介入の効果を検討する予定としている。グルカゴン分泌異常状態に対し、DPP-4阻害薬治療によるグルカゴン分泌・各種代謝異常抑制/改善効果を検討する計画としている。 一方細胞株を用いた分子生物学的実験においては、これまでに得られた結果を踏まえ、その再現性の確認とともに、責任シグナルの確定を行う。さらにこれまで動物実験にて得られた変化について、本実験系を利用した治療介入による変化の再現・確認とともに分子生物学的裏付けの取得を行い、包括的な病態の解明を目指す。
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Research Products
(1 results)