2014 Fiscal Year Research-status Report
膵島β細胞破壊評価法の確立と1型糖尿病の発症・進展予知への応用
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26461339
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
川崎 英二 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (70336171)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 自己免疫 / インスリン / 遺伝子 / 膵島β細胞 / 細胞性免疫 / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
1型糖尿病や他の自己免疫疾患における免疫療法のめざましい進歩の一方で、膵島β細胞破壊を適確に評価できる指標の開発が望まれている。本研究では、メチル化/ 非メチル化インスリンDNAの解析による膵島β細胞破壊の半定量的評価法を開発し、1型糖尿病および他の自己免疫疾患において膵島β細胞破壊と膵島関連自己抗体の関連を網羅的に解析することで、1型糖尿病の発症・進展予知のための高感度予知法を開発し、最終的には進展阻止への応用を行うことを目的としている。本研究の内容は国際的にも先駆的かつ独創的なものであり、その成果は現在国際的に展開されている介入試験においても非常に重要な位置づけになると考えられる。 平成26年度においては、膵島β細胞内におけるインスリン遺伝子プロモーター領域のCpGの脱メチル化を利用した膵島β細胞破壊の半定量測定法を確立し、膵島関連自己抗体の出現・消失・出現順序と膵島β細胞破壊の関連について検討することを計画した。そこで、まず凍結保存された健常人血清より遊離DNAを抽出し、DNA methylation kitにてバイサルファイト処理を施したのち、インスリン遺伝子をCpG非特異的プライマーを用いたPCR法で増幅した。次に、PCR産物を精製後、CpG特異的プライマーを用いた定量PCR法により、DNAメチル化および非メチル化インスリン遺伝子の量を半定量化した。この際、遊離DNAを用いたPCRで増幅産物が得られるまでCpG非特異的プライマーのデザインやPCR条件を見極めるまで数ヶ月を必要とし、大幅な時間的遅れが生じてしまった。また、最初のPCR産物の濃度が高いと定量PCRの際に意味のあるサイクル数が得られず、テンプレートとして用いるPCR産物の希釈倍率の検討にも時間を要した。最終的には安定してデータが得られる条件を見出し、劇症1型糖尿病、緩徐進行1型糖尿病の保存血清を用いて定量PCRにおけるサイクル数を利用した非メチル化インデックスの算出が可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
バイサルファイト処理を施した血清より抽出した遊離DNAを用いて、インスリン遺伝子をCpG非特異的プライマーで増幅する実験において、末梢血中の遊離DNA量が極めて少量であるため定量ができないことや、PCRプライマーを評価する陽性コントロールDNAが無いことにより、問題が生じているプロセスを発見することが困難であり、試行錯誤により定量PCRの結果を得るまでにかなりの期間を要したため、全体的に研究計画が遅れてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に確立したメチル化/ 非メチル化インスリンDNAの解析法を用いて、劇症1型糖尿病発症時、IFN治療により1型糖尿病が誘導された慢性C型肝炎および緩徐進行1型糖尿病の経時的保存血清を用いた膵島β細胞破壊の動態解析をおこなう。また、膵島自己抗原のペプチドのランダムファージディスプレイライブラリーを作製し、膵島関連自己抗体エピトープのファインマッピングを進める。尚、自己抗原ごとのライブラリー作製に時間を要し当初の予定通りに進まない場合、市販のファージ提示系ランダムペプチドライブラリーを用いることとする。引き続いて、膵島β細胞破壊の測定結果およびエピトープ解析の結果に基づき、インスリン依存状態への進展との関連を解析する。
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Causes of Carryover |
実験の基礎検討に予定より多くの期間を要し、研究計画に遅れが生じたため、平成26年度に購入予定であったファージディスプレイライブラリー作成のための消耗品を購入できなかったことにより当該助成金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度に膵島β細胞破壊の半定量法が確立したため、保存血清を用いた早急な検討を進めるとともに、生じた次年度使用額と翌年度分の予定助成金を合わせ、ファージディスプレイライブラリー作成および、平成27年度に予定している膵島関連自己抗体の免疫グロブリン・アイソタイプの解析のための試薬を購入し、研究成果を学会ならびに論文として発表することを計画している。
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[Presentation] 緩徐進行1型糖尿病2014
Author(s)
川﨑英二
Organizer
第57回日本糖尿病学会年次学術集会
Place of Presentation
リーガロイヤルホテル(大阪市)
Year and Date
2014-05-22 – 2014-05-24
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