2014 Fiscal Year Research-status Report
転写因子AFF4をターゲットとしたFGF21抵抗性の分子基盤の解明
Project/Area Number |
26461365
|
Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
小森 忠祐 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (90433359)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森川 吉博 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (60230108)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | AFF4 / 転写因子 / FGF21 / 視床下部 |
Outline of Annual Research Achievements |
AFF4へテロ欠損マウスは絶食後の再摂食量が野生型と比較して低下するため、視床下部における摂食関連分子の発現を検討した。摂食促進作用を持つニューロペプチドY(NPY)やアグーチ関連蛋白(AgRP)の遺伝子発現は、野生型マウスの視床下部において絶食により増加するが、AFF4へテロ欠損マウスの視床下部ではそれらの増加量が減少していた。プロオピオメラノコルチンやコカイン・アンフェタミン調節転写産物などの摂食抑制に作用する遺伝子の発現は、野生型マウスとAFF4へテロ欠損マウスの視床下部において絶食により同様に減少していた。また、AFF4は絶食時の視床下部弓状核においてNPYやAgRPを発現しているニューロンに発現していた。以上のことより、AFF4は、絶食時の視床下部において、NPY/AgRP陽性ニューロンに作用し、NPYやAgRPの発現を制御している可能性が示唆された。 また、AFF4へテロ欠損マウスは絶食時の体温低下が起こりにくく、その原因として褐色脂肪における熱産生抑制が考えられるため、AFF4へテロ欠損マウスの褐色脂肪における熱産生関連分子の発現について検討した。野生型マウスを絶食すると、熱産生を促進する分子である脱共役蛋白(UCP)-1やペルオキシソーム増殖因子活性化受容体コアクチベーター(PGC)-1の発現が褐色脂肪において減少するが、AFF4へテロ欠損マウスを絶食してもUCP-1の遺伝子発現に変化は認められず、PGC-1の発現は増加していた。これらの結果より、AFF4へテロ欠損マウスの褐色脂肪では、絶食時におけるUCP-1やPGC-1の発現が保持され、それによって熱産生を保っている可能性が示唆された。また、絶食時の褐色脂肪におけるAFF4の発現を検討したところ、その発現が増加したことより、AFF4は、直接褐色脂肪に作用して熱産生関連遺伝子の発現を制御している可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究実施計画のうち、AFF4へテロ欠損マウスの表現型の詳細な検討を行った。AFF4へテロ欠損マウスは、絶食時の視床下部におけるNPYやAgRPの発現増加が抑制されており、それが原因で絶食後の再摂食が低下している可能性が示唆された。また、AFF4へテロ欠損マウスでは絶食時の褐色脂肪におけるUCP-1やPGC-1の発現低下が認められず、このことが絶食時の体温低下が起こりにくい原因となっている可能性が示唆された。本年度の研究実施計画では、AFF4へテロ欠損マウスの糖・脂質代謝異常の検討が残っており、次年度に遂行する予定である。一方、AFF4が絶食時の褐色脂肪組織において増加していることが明らかとなり、新たなAFF4の機能の発見へと繋がる可能性が考えられた。また、次年度の研究実施計画である高脂肪食負荷時におけるAFF4の役割の検討において、AFF4へテロ欠損マウスに高脂肪食をすでに給餌し始めている。以上のことより、本年度の研究は、おおむね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
AFF4の糖・脂質代謝における影響を検討するために、AFF4へテロ欠損マウスを高脂肪食給餌下におき、血中における血糖値、インスリン値、脂質濃度を測定する。また、肝臓における脂質(中性脂肪やコレステロール)やグリコーゲンの含有量をオイルレッドO染色やPAS染色により組織学的に解析するとともに、糖新生や脂肪酸の合成、取り込み、β酸化に関わる遺伝子の発現を、リアルタイムPCR法などの分子生物学的解析方法を用いて検討する。さらに、腹腔内糖負荷試験やインスリン負荷試験、ピルビン酸負荷試験により肝臓の糖代謝におけるAFF4の役割について検討する。 本年度の研究の結果より、AFF4はNPY/AgRPニューロンや褐色脂肪に直接作用し、それぞれ摂食行動や熱産生と関連している可能性が示唆された。そこでAFF4が高発現している組織において、いずれの細胞にAFF4が発現しているのかを組織学的手法を用いて検討する。また、AFF4が発現している細胞を分取し、それらの細胞にAFF4を移入することにより、AFF4の細胞内における直接的な作用について詳細に検討する。 AFF4とFGF21の関連性を検討するために、AFF4へテロ欠損マウスに絶食、もしくは高脂肪食負荷をかけ、血中、及び各組織におけるFGF21の発現量を測定する。 本年度、平成28年度に行う予定であった「FGF21によるAFF4の発現誘導の検討」を行ったが、FGF21によるAFF4の発現誘導が認められなかった。次年度は、FGF21の濃度を変える、HisタグのついていないFGF21を投与するなどの改善策をとり、再度検討を行う。 FGF21の生体内作用に対するAFF4の役割を検討するために、AFF4へテロ欠損マウスにFGF21を投与し、糖代謝や脂質代謝を上記の方法により検討するとともに、エネルギー代謝(基礎代謝量や行動量、体温など)について検討する。
|