2015 Fiscal Year Research-status Report
転写因子AFF4をターゲットとしたFGF21抵抗性の分子基盤の解明
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26461365
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
小森 忠祐 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (90433359)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森川 吉博 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (60230108)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | AFF4 / 転写因子 / FGF21 / 糖・脂質代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
AFF4の糖・脂質代謝における影響を検討するために、野生型とAFF4へテロ欠損マウスに高脂肪食を給餌し、その表現型を解析した。AFF4へテロ欠損マウスに高脂肪食を給餌しても、野生型マウスと比較して体重の増加率に差は認められなかった。また、普通食、及び高脂肪食給餌下においてAFF4へテロ欠損マウスの血糖値や血清インスリン値を測定したところ、野生型マウスとAFF4へテロ欠損マウスとの間で、血糖値に差は認められなかったが、血清インスリン濃度はAFF4へテロ欠損マウスで上昇しており、インスリン抵抗性が示唆された。そこで、腹腔内糖負荷試験とインスリン負荷試験を行ったところ、AFF4へテロ欠損マウスは、野生型マウスと比較して、強いインスリン抵抗性を示した。さらに、血清脂質濃度を測定したが、総コレステロール、中性脂肪、及び遊離脂肪酸濃度に有意な差はみられなかった。 昨年度、FGF21によるAFF4の発現誘導の検討を行ったが、AFF4はFGF21によって発現が誘導されなかった。そこで、本年度は、ヒスチジンタグのついていないFGF21を投与することで、再度FGF21によるAFF4の発現誘導の検討を試みたが、肝臓や脂肪組織など代謝性疾患に関与する諸臓器において、FGF21によるAFF4の発現誘導は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記載したように、本年度の研究は研究実施計画に基づきおおむね遂行できたが、FGF21によるAFF4の発現誘導の解析については予想どおりの結果が得られなかったため、実験計画を一部変更し、次年度に実施する予定である。一方で、本年度の研究結果より、AFF4が糖代謝と関連している可能性が示唆され、FGF21の糖・脂質代謝への作用におけるAFF4の役割の解明をめざす本研究にとって、非常に有用な情報であると考えられる。このように、本年度の研究は、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
生体内において、肝臓や脂肪組織などの代謝に関連した臓器で、AFF4が発現している細胞をin situ hybridization法や免疫染色法を用いて同定する。次に、それぞれの細胞を、細胞分離装置を用いて分取し、培養系を確立する。それら培養細胞の培養上清中にFGF21を添加した時の細胞内におけるAFF4の発現を経時的に検討する。また、野生型、およびAFF4へテロ欠損マウスよりAFF4発現細胞を分取し、それらの細胞の培養上清にFGF21を添加し、FGF21の作用に関連する分子の発現変化を分子生物学的解析方法や生化学的解析方法を用いて検討する。上記の実験がうまくいかなかった場合は、AFF4によるsiRNAを用いてAFF4をノックダウンする、もしくはAFF4をそれら培養細胞に過剰発現させた系を用いてAFF4の機能を解析する。申請者らは、AFF4の視床下部における機能解析の中で、AFF4に対するsiRNAを用いた実験やAFF4の過剰発現系を用いた実験を行っており(Komori et al., J Biol Chem, 2014)、効率的に実験を進めることができる。また、FGF21抵抗性に対するAFF4の役割の検討について、得られた成果を学会や学術論文に発表する。
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Causes of Carryover |
平成27年度に、FGF21によるAFF4の発現誘導の解析を行い、その結果をもとに、AFF4ヘテロ欠損マウスにFGF21を投与した時の表現型を解析するとともに、学会において発表する予定であったが、肝臓や脂肪組織などの代謝に関連した臓器において、FGF21によるAFF4の発現誘導が認められなかった。そこで、計画を変更し、生体内のAFF4発現細胞を同定し、その細胞におけるFGF21の作用に対するAFF4の機能的役割を、培養系を用いて解析することとしたため、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の様に、生体内におけるAFF4発現細胞の同定、FGF21の作用に対するAFF4の機能的役割の培養系を用いた解析、およびこれらの結果の学会での発表を次年度に行う予定で、未使用額はその経費に充てる。
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