2014 Fiscal Year Research-status Report
構成的アルドステロン産生に着目した副腎皮質リモデリングの分子機構
Project/Area Number |
26461387
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
向井 邦晃 慶應義塾大学, 医学部, 専任講師 (80229913)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樋口 明弘 慶應義塾大学, 医学部, 講師(非常勤) (20383755)
荻島 正 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70177153)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アルドステロン / ステロイドホルモン / 副腎 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の全体構想は、副腎皮質のアルドステロン(ALDO)産生機能と組織構築の統御、そこからの逸脱に関わる分子機構の解析により、正常組織の形成・維持から病態に至る分子基盤を理解することである。近年、正常副腎皮質の細胞層形成は、被膜細胞から前駆細胞へ、さらに選択的ホルモン産生能を持った実質細胞への分化と内奥部への移動によることが示された。これに対し研究代表者らは、このスキームでは説明できない組織様式を正常副腎に発見した。すなわち正常及び非腫瘍部副腎の被膜下に自律的にALDOを産生する細胞集塊(ALDO産生細胞クラスター, APCC)が生じることを示した。一方、ALDO産生腺腫(APA)にイオンチャネル・ポンプ遺伝子4種の体細胞変異が報告され、ALDO産生の自律性に関与することが示された。 APCCはAPA同様に自律的にALDOを産生することが推定されることから、研究代表者はAPCCにもAPAに検出された体細胞変異が存在することを疑った。明らかな腺腫を認めないが原発性ALDO症により摘出された副腎2例に対してALDO合成酵素CYP11B2の免疫組織化学を行ったところ、APCC部とマイクロAPA部から構成される融合病変(進展型APCC)が検出された。これらの進展型APCCにおける体細胞変異の解析を行った。 進展型APCCと非病変部の薄切試料からゲノムDNAを調製し、イオンチャネル・ポンプ遺伝子4種についてAPAに検出された既知の体細胞変異近傍を次世代シーケンサーにより解析した。その結果、進展型APCCにおいてもAPAに検出されたKCNJ5 (p.G151R)などの既知の体細胞変異が検出された。同一副腎の中の異なる病変には異なる体細胞変異が生じうること、APAでは報告のない新規の体細胞変異を持つ病変が存在すること、既知の変異を持たない進展型APCCが存在することが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
代表者は、APCC及び進展型APCCに疑われる体細胞変異の解析にはゲノム全体を対象とすべきであると考えていた。しかし、病変が微小であることから、病変部位から必要量のDNAを調製することが困難であった。最近APAに起きた体細胞変異解析の報告が蓄積しつつあり、その結果によるとイオンチャネル・ポンプをコードする4遺伝子に特定の塩基置換が集中的に起きていることが判明した。代表者はこの結果に着目して、解析対象をそれらの変異部位を含む領域に限定した。その結果、微量のDNAから当該領域の塩基配列を解析することができた。得られた塩基配列データによると、APAについて報告された既知の体細胞変異が検出された。また、新規の体細胞変異が検出された。一部の病変には解析した配列に変異は検出されなかった。 以上から、(1)解析対象のゲノム部位を限定することにより微小な組織からの体細胞変異解析が可能であることが判明した。(2)APAにおける既知の体細胞変異が進展型APCC病変にも起きていることが判明した。この結果は進展型APCCからAPAへ移行する可能性を示唆している。(3)進展型APCCには新規の体細胞変異が同定された。この結果からはAPAとは異なる体細胞変異も進展型APCCの形成に関わる可能性が示唆された。これら3点により、本課題はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者は研究結果を踏まえ、APAの形成について次の仮説を持っている。(1)正常副腎皮質の被膜下に第1の体細胞変異が生じ、これが原因の少なくとも一部となってAPCCが被膜下に形成される。(2)APCCはアンギオテンシンIIなどによる誘導を受けずにALDOを自律的に産生する。(3)APCCを構成する細胞に第2の体細胞変異が生じ増殖が活性化してマイクロAPA部を形成する。(4)マイクロAPA部には、ALDO産生能を持つ細胞、ALDO産生能を失いコルチゾール産生能を獲得した細胞、ALDOとコルチゾール両方の産生能を持たない細胞の少なくとも3種類が生じる。 これまでの研究経過により、微小組織から調製したゲノムDNAを用いて特定の遺伝子の限定した領域を対象に次世代シーケンサーを用いて塩基配列を解析できることが判明した。これを受けて上記仮説の検証を行うため、次年度には計画を一部変更する。進展型APCCは被膜下のAPCC部と内奥部のマイクロAPA部から構成される。これらの部位別にゲノムDNAを調製し、4遺伝子の特定領域の塩基配列を解析する。例数と部位数を増加させることが必要と考えている。さらにAPAは構成する細胞のステロイド産生機能が均一ではないことから、APA内のCYP11B2とCYP11B1の発現分布にもとづいた機能別微小部位からゲノムDNAを調製して同一ゲノム領域を対象として塩基配列解析を行う。 上記計画に加えて当初の計画通り、APCCにおけるCYP11B2遺伝子の選択的かつ構成的発現機構に関して、APCC部と非APCC部からクロマチンを調製し、CYP11B2遺伝子の転写開始点近傍DNAの塩基修飾を解析することにより、遺伝子の塩基配列以外の構造に関するAPCC部と非APCC部の間の差異を明らかにする。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は次の2点による。 (1)試薬等の支出額が計上額を下回ったこと。研究当初、微小な組織の体細胞変異の検出には試行錯誤を繰り返す必要性を考えていた。しかし、試料の調製、増幅、塩基配列解析などの過程が予想ほど困難を伴わずに解析を行うことができた。この結果、物品費(消耗品等)の使用額が減少した。 (2)旅費、その他(運搬費等)の支出額が計上額を下回ったこと。計上していた研究打合せや試料の運搬のための費用を支出しなかったため使用額が減少した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度には、解析対象とする例数、試料数を増加させる必要があるので、生じた次年度使用額を解析に必要な試薬等の物品費(消耗品等)に計上する。品名としては、組織染色試薬、遺伝子配列解析関連試薬等である。
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article] Primary aldosteronism: functional histopathology and long-term follow-up after unilateral adrenalectomy2015
Author(s)
Volpe, C., Hamberger, B., Hoog, A., Mukai, K., Calissendorff, J., Wahrenberg, H., Zedenius, J., Thoren M.
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Journal Title
Clin. Endocrinol. (Oxf)
Volume: 82
Pages: 639-647
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Multiple sampling from the central veins with their tributaries can detect bilateral hyperaldosteronism with a cortisol-producing adenoma in a hypertensive patient2014
Author(s)
Sakuma, I., Saito, J., Matsuzawa, Y., Omura, M., Matsui, S., Nishimoto, K., Mukai, K., Nishikawa, T.
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Journal Title
J. Steroids Horm. Sci.
Volume: 5(2)
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Adrenal nodularity and somatic mutations in primary aldosteronism: one node is the culprit?2014
Author(s)
Dekkers, T., ter Meer, M., Lenders, J.W.M., Hermus, A.R.M., L. Schultze Kool, L., Langenhuijsen, J. F., Nishimoto, K., Ogishima, T., Mukai, K., Azizan, E.A.B., Tops, B., Deinum, J., Kusters, B
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Journal Title
J. Clin. Endocrinol. Metab.
Volume: 99
Pages: E1431-E1451
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Immunohistochemical analysis of cortisol and aldosterone secreting adrenocortical carcinoma2015
Author(s)
Murakami, M., Yoshimoto, T., Komatsu, N., Nakano, Y., Minami, I., Mihara, M., Izumiyama, H., Hashimoto, K., Ban, D., Ochiai, T., Takemoto, A., Yukimori, A, Nakajima, H., Akashi, T., Homma, K., Nishimoto, K., Mukai, K., Hasegawa, T., Tanabe, M., Ogawa, Y.
Organizer
The 97th Annual Meeting of The Endocrine Society
Place of Presentation
米国・サンディエゴ市
Year and Date
2015-03-05 – 2015-03-08
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