2015 Fiscal Year Research-status Report
プロテオミクスを利用した脳特異的アロマターゼ遺伝子発現を制御するタンパク質の解析
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26461389
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
本田 伸一郎 福岡大学, 薬学部, 准教授 (40257639)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アロマターゼ / 中枢神経系 / 転写調節因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の目的の一つは、脳で発現してアロマターゼの脳特異的プロモーターに作用する転写因子のうち、Deaf1やARP1と相互作用する因子を同定することであった。このような因子を免疫沈降法により効率的に共沈殿させ、単離・同定するためには、Deaf1やARP1を目的の細胞に高濃度に発現させる必要がある。アロマターゼを発現する初代培養神経細胞に様々な方法を利用して遺伝子導入を試み、最も発現の高い方法を確定した。また、今年度は単離した転写因子の翻訳後修飾、特にリン酸化による機能制御の可能性についても検討した。脳におけるアロマターゼ遺伝子の発現は、α1アドレナリン受容体アゴニストによって増加する。この受容体の細胞内情報伝達には、種々のタンパク質リン酸化が関与している。一方、申請者はDeaf1などが細胞内でリン酸化されることを確認しており、これらの転写因子のリン酸化とアロマターゼ遺伝子発現の関連が推測された。そこで、キナーゼ阻害剤が脳内アロマターゼの発現にどのような影響を及ぼすか、マウス胎仔間脳部の初代培養神経細胞系を利用して調べた。その結果、カルモジュリン依存性プロテインキナーゼを主として多くのキナーゼを阻害するK252aは、培養開始3日目までに認められるアロマターゼmRNAの増加をほぼ完全に阻害した。また、プロテインキナーゼC(PKC)の阻害剤であるBisindolylmaleimide Iも、アロマターゼmRNAの増加を大きく阻害したが、PKCのアイソフォームのうち、主にPKCα、β、およびγを特異的に阻害するGo6976やGo6983では、ほとんど阻害が認められなかった。これらの結果は、周生期の脳におけるアロマターゼの発現増加にPKCの特定のアイソフォームを含む複数のキナーゼが関与することを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アロマターゼの脳特異プロモーターに形成されるDeaf1あるいはARP1を含む転写制御因子複合体を免疫沈降により単離するため、マウス間脳部の初代培養神経細胞にそれらのタンパク質を効率良く強制発現させる方法を検討した。本研究に使用する間脳部の神経細胞は、トランスフェクション操作においてダメージを受けやすく、導入効率も悪い。そのため、簡便なリポソーム法では免疫沈降に十分なタンパク質の発現が得られず、遺伝子導入の条件設定には予定以上の時間を要した。効率の良い遺伝子導入にはウイルスベクターを利用した方法などを使用することが必要となり、発現タンパク質のデザインおよびベクター構築に時間を要し、年度内に予定していた実験を行うことができなかった。もう一つの方法として、内因性に発現しているタンパク質で免疫沈降させるために、Deaf1やARP1を強く認識する抗体を作製し、外部から遺伝子を導入することなく免疫沈降を行うという可能性も検討している。一方、転写因子の翻訳後修飾による転写機能制御の検討については、SUMO化およびリン酸化について解析を行っているので、次年度(28年度)も申請書に準じて実験を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス胎仔間脳部の初代培養細胞への高効率の遺伝子導入方法は概ね確定した。ウイルスベクターを用いた遺伝子導入法により、T7タグとの融合タンパク質としてDeafやARP1を発現させ、相互作用するタンパク質を免疫沈降により単離する。その一方で、申請者は内因性のDeaf1およびARP1タンパク質の抗体も作製している。内因性タンパクの発現量は低いので、タンパク質の同定に必要な量が分離できるか否かの確証はないが、同様に免疫沈降による単離を検討する。このような方策により単離できた転写因子複合体に対してLC-MS/MS解析を行い、この複合体中に含まれるタンパク質を網羅的に同定する。これと並行して、昨年度に行ったプロテインキナーゼと脳内アロマターゼの遺伝子発現との関係を詳細に調べる。アロマターゼ発現量を低下させるプロテインキナーゼ阻害剤の特徴を手掛かりとして、胎仔間脳部で周生期に発現しているプロテインキナーゼを調べる。さらに、初代培養神経細胞系を用いたノックダウン実験により、アロマターゼ遺伝子発現との関連性を明確にする。また、リン酸化のターゲットとなる因子がどのようなタンパク質なのかを調べる。現在までの研究において、申請者は、Deaf1が細胞内でリン酸化を受けていることを確認し、ARP1には脱リン酸化酵素とホモロジーの高いタンパク質が結合することを見出している。これら転写因子のリン酸化/脱リン酸化が、脳のアロマターゼ遺伝子の発現制御に関与する可能性について検討する。
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Causes of Carryover |
マウス胎仔間脳部の初代培養神経細胞への高効率の遺伝子導入法の条件設定に時間を要し、LC-MS/MS解析のために使用する予算を使えなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越予算は、マウス胎仔間脳部の初代培養神経細胞におけるDeaf1タンパク質の高レベルの発現法が確定したのちに免疫沈降を行い、相互作用するタンパク質を単離するために必要な試薬類、およびLC-MS/MS解析のために使用する。次年度(28年度)に交付予定である予算は、概ね申請書の記載に準じて使用する。
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[Journal Article] Aromatase knockout mice reveal an impact of estrogen on drug-induced alternation of murine electrocardiography parameters2015
Author(s)
Kurokawa, J., Sasano, T., Kodama, M., Li, M., Ebana, Y., Harada, N., Honda, S., Nakaya, H., Furukawa, T
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Journal Title
J. Toxicol. Sci.
Volume: 40
Pages: 339-348
Peer Reviewed
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