2016 Fiscal Year Research-status Report
プロテオミクスを利用した脳特異的アロマターゼ遺伝子発現を制御するタンパク質の解析
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26461389
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
本田 伸一郎 福岡大学, 薬学部, 准教授 (40257639)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 転写調節因子 / アロマターゼ / 中枢神経系 |
Outline of Annual Research Achievements |
免疫沈降反応により、マウス胎仔間脳部の細胞の抽出液からDeaf1タンパク質と相互作用する因子を単離し、LC-MS/MS解析を利用してタンパク質の同定を行うための準備実験を行った。Deaf1結合タンパク質が、免疫沈降反応において効率よく共沈殿する反応条件の検討を詳細に行い、以後の解析の使用に足る量の目的タンパク質が採取できるような条件を確立した。 また、N40株化細胞を用いて、ARP1、Lhx2、およびDeaf1のアロマターゼ脳特異的プロモーター活性への影響を検討した。N40はマウスの視床下部由来の細胞であり、アロマターゼを発現しているという点から、実験系として生理的条件に近いと考えられる。この結果を、以前から実験に用いていたCos7細胞でのそれと比較したところ、ほぼ同様の結果が得られ、細胞種の違いによるARP1、Lhx2、およびDeaf1のプロモーター活性への影響には、大きな差異は無いことがわかった。一方、N40細胞では、継代を繰り返すにつれて、アロマターゼmRNAの量が低下し、アロマターゼ遺伝子の発現量が低くなることがわかった。遺伝子の発現の低下には様々な原因が考えられるが、今回はDNAのメチル化による遺伝発現抑制の可能性について検討した。アロマターゼ発現量の低下したN40細胞をメチル化阻害剤存在下にて培養し、72時間後にアロマターゼmRNAの量を測定したところ、発現量の増加が認められた。しかしながら、その増加はわずかであり、胎仔脳において発現しているアロマターゼmRNAの量に比べ著しく低いままであった。このことより、N40細胞の長期培養によるアロマターゼmRNA遺伝子発現低下の原因は、DNAのメチル化だけではないことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成28年度の下半期に、deaf1タンパク質と相互作用する因子として単離したタンパク質のLC-MS/MS による解析作業を完了する予定であったが、免疫沈降実験の条件設定のために、予想以上の時間を要した。そのため、タンパク質同定のために行う解析の完了が次年度にずれ込むことになった。今年度中に研究課題を完了することができなかったため、「遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス胎仔間脳部の細胞を用いて、T7タグを付けたDeaf1を強制発現させたものと内在性Deaf1タンパク質を対象としたものの2種類の系を用いて免疫沈降反応を行い、Deaf1と相互作用するタンパク質の同定を試みた。詳細な免疫沈降の条件検討を行い、SDS-PAGEにて候補となる4つのタンパク質のバンドについてLC-MS/MS解析を行っている。タンパク質が同定されれた後は、それが既知のタンパク質であった場合はPCRなどを用いてクローン化する。さらにGST-pull downアッセイなど、別の手法を用いてタンパク質ータンパク質相互作用の確認を行い、アロマターゼ脳特異的プロモーターに及ぼす影響を調べる。
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Causes of Carryover |
28年度の下半期に、deaf1タンパク質と相互作用する因子として単離したタンパク質のLC-MS/MS による解析作業を完了する予定であったが、学部の事務業務の増加や、連携研究者の退職・転職準備に伴う研究業務の遅延により計画に遅れが生じた。また、解析は委託することとしたが、解析の一部は次年度になることが判明した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は前年度できなかったLC-MS/MS解析の費用にあてる。解析費用は使用額のおよそ3分の2程度を試算している。残り3分の1の費用は、成果発表のための経費に用いる。
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