2014 Fiscal Year Research-status Report
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26461400
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川端 浩 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10329401)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 血液内科学 / 鉄代謝 / ヘプシジン / フェリチン / 赤血球造血 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)ヘプシジン・プロモーター制御下にGFPを発現する遺伝子を導入した肝がん細胞株をもちいた、プロモーターのバイオアッセイ系を構築した。この系によって、トランスフェクションの影響を排除した、高感度でhigh throughputなプロモーター・アッセイが可能となった。これを活用してヘプシジンの発現を変化させる物質のスクリーニングを行った。その結果、apomorphinやCGS-15943、SU9616などの化合物が、細胞毒性を呈さない濃度でヘプシジンのプロモーター活性を抑制することを見出した。これらは特に、BMP6によるヘプシジン発現刺激を抑制した。この抑制効果は、リアルタイムPCR、および培養上清中のヘプシジン定量(LC-MSマス・スペクトロメトリ法)で確認した。CGS-15943、SU9616には、ヘモジュベリンとトランスフェリン受容体2の発現を現弱させる効果も見られた。(Experimental Hematology, in press)。 (2)貯蔵鉄のバイオマーカーであるフェリチンが造血系のどういった細胞に取り込まれているかについて、蛍光標識した合成ヒトHフェリチンおよびヒトLフェリチンを用いて解析した。その結果、Hフェリチンは赤芽球系・巨核球系細胞株と、骨髄の赤芽球に特異的な高い取り込みを認めたのに対し、Lフェリチンの取り込みは非特異的なものであった。さまざまな遺伝子変異を導入したトランスフェリン受容体1を安定的に発現させたCHO-TRBb細胞を用いた実験で、トランスフェリンとHフェリチンは異なった様式でトランスフェリン受容体1を介して細胞に取りこまれることを見出した。さらに、Hフェリチンが赤血球造血を抑制することなどをコロニーアッセイで確認した(論文投稿中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定通りに進んだ点としては、①ヘプシジンプロモーターのバイオアッセイ系の改良が進み、論文が1編受理されたことと、②赤芽球のフェリチン受容体の研究が進み、初期の結果をまとめて論文投稿中の段階に来られたことである。①で得られたヘプシジン抑制物質の、ヘモジュベリンとトランスフェリン受容体2の発現を現弱させる効果は興味深く、機序や効果に関するさらなる解析に発展させたい。また、このバイオアッセイ系は、臨床検体中のヘプシジン発現調節活性の測定など、今後さまざまな研究に活用可能である。 一方、当初の計画より遅れているのは、細胞内の鉄代謝関連蛋白の相互作用に関する研究である。これは現在進行中であるが、十分な結果が出せていない。また、当初の計画では主要な内在性のヘプシジン抑制因子として可溶型ヘモジュベリンを予想していたが、本研究開始後にUCLAのTom Ganzのグループが赤芽球が放出する強力なヘプシジン抑制因子としてエリスロフェロンを同定したことを発表した(Kautz L, et al. Nat Genet;46: 678-84. 2014)。昨年の米国血液学会ではいくつかの研究グループからこれに関する報告が出され、赤血球造血と鉄代謝をつなぐ因子としてエリスロフェロンが確実視される。このため、われわれの当初の研究計画は若干の軌道修正を迫られている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)すでに予備実験として、Tom Ganzのグループが見出した赤芽球が分泌するヘプシジン発現抑制因子エリスロフェロンの高い発現を、赤芽球系細胞株で確認した。この発現がどのような因子によって制御されているかについての解析を行う。当初は、さまざまな血液疾患患者の可溶型ヘモジュベリン濃度をELISAで測定する計画であったが、最近の他のグループからの情報により、エリスロフェロンの血中濃度測定に変更する。そのために、まず、エリスロフェロンの発現プラスミドを作成し、さまざまな細胞に強制発現させる。その上清を用いて市販のELISAを評価し、もし信頼性がおける測定値が得られれば、患者検体の血清エリスロフェロン濃度を測定する。無効造血疾患で高い発現が予想されるが、臨床指標との関連を解析する。 (2)創薬を目標とし、ヘプシジンのプロモーターバイオアッセイ系を用いて、ヘプシジン発現を変化させる化合物のさらなる同定を目指す。また、血液疾患患者の血清および血漿中のヘプシジン発現抑制活性を測定して、臨床的な意義を分析する。 (3)われわれは、Hフェリチンが赤血球造血を抑制することを見出した。その機序について、まずマイクロアレイによって遺伝子発現の変化を調べる。また、最近HフェリチンがNCOA1の介在でオートファジーによってリソソームで分解されるという報告が出されており(Mancias JD, et al. Nature;509: 105-9. 2014)、同様の経路が細胞外から取り込まれたHフェリチンでも作用している可能性について調べる。具体的には、NCOA1のノックダウンによって細胞外から取り込まれたHフェリチンの動態が変化するかどうか、免疫沈降や蛍光標識などによってHフェリチンの受容体であるトランスフェリン受容体1とNCOA1が共局在するか、などの解析を行う。
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Research Products
(3 results)