2015 Fiscal Year Research-status Report
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26461400
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川端 浩 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10329401)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 血液内科学 / 鉄代謝 / ヘプシジン / フェリチン / 赤血球造血 / GDF15 / ヘモクロマトーシス / 鉄芽球性貧血 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 生体の鉄代謝制御ホルモンであるヘプシジンのプロモーター制御下にGFPを発現する肝臓がん細胞株を作成し、これを活用したバイオアッセイによってヘプシジンの発現を抑制する化合物を複数同定した(Kawabata H, et al. Exp hematol 43: 404-413, 2015)。 (2) 貯蔵鉄のバイオマーカーであるフェリチンが造血系のどのような細胞にどういった機序で取り込まれるかについて、蛍光標識した遺伝子組み換えヒト・フェリチンを用いてフローサイトメトリーで解析した。その結果、赤芽球系細胞が特異的にHフェリチンを取り込むこと、その機序としてトランスフェリン受容体1が関わっていること、Hフェリチンの細胞への取り込みは、閾値以上のレベルのトランスフェリン受容体の発現が必要であることを見出した(Sakamoto S, Kawabata H, et al. PloS one 10: e0139915, 2015)。さらに、ヒト骨髄細胞を用いたコロニーアッセイで、Hフェリチンが赤芽球系のBFU-Eコロニーの形成を選択的に抑制することを見出した。 (3) TGFβスーパーファミリーに属するGDF15の血清濃度が骨髄線維症患者で極めて高い事、GDF15がヒトの赤芽球だけでなく巨核球にも発現すること、GDF15がin vitroおよびマウスのゼノグラフトを用いた系で、間葉系支持細胞の骨への分化を促すことを見出した(Uchiyama T, Kawabata H, et al. Cancer Med 4: 1558-1572, 2015)。GDF15の血清濃度が、貧血の重症度に比例して増加することも見出している。 (4) 遺伝性鉄過剰症の2家系について倫理委員会の承認と被験者の同意のもとで遺伝子検査を行い、それぞれ遺伝性ヘモクロマトーシス4型および遺伝性鉄芽球性貧血(XLSA)と診断し、病態についての解析を行った(2編の症例報告、in press)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、「研究成果の概要」に記載したような鉄代謝と赤血球造血にかかわる研究の成果を、3編の原著英文論文として公表することができた。また、これらの成果を踏まえたうえで、日本内科学会の和文学会誌と日本血液学会の和文学会誌に2編の総説論文として発表した。さらに、日本血液学会のシンポジウムと日本鉄バイオサイエンス学会のシンポジウムでも講演を行った。このように、研究成果について一定の情報発信ができた点で、本研究はまずまずの進捗があったものと自己評価している。 その一方で、当初の計画にあった細胞内の鉄代謝関連分子の相互作用についての解析はやや遅れている。また、昨年から新たに開始した、新規の鉄代謝ホルモンであるエリスロフェロンに関する研究も、次年度の課題として残されている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)最近、鉄代謝と赤血球造血をつなぐ因子として同定されたエリスロフェロン(FAM132b)に関して、研究を推進する。具体的には、①エリスロフェロンを細胞株に強制発現させて、その上清がヘプシジンの発現を抑制することを確認する。確認できれば、その機序についての検討を行う。②赤芽球系の細胞株を用いて、エリスロフェロンの発現を変化させる因子について調べる。③さまざまな貧血疾患におけるエリスロフェロンの血中濃度をELISA法により測定し、病態との関連を調べる。 (2)前年度までの研究で、Hフェリチンがトランスフェリン受容体1を介して赤芽球に特異的に取り込まれることが判明した。しかしながら、フェリチンのどの部位が取り込みに重要か、トランスフェリン受容体1のどの部位が重要か、不明である。フェリチンおよびトランスフェリン受容体1にさまざまな変異を導入して、フェリチンの取り込みに重要な構造を解析する。 (3)前年度までの研究で、Hフェリチンが赤芽球系のコロニー形成を特異的に抑制することが分かった。今年度は、Hフェリチンがヒトの造血幹細胞から赤血球にいたる過程のどの段階で影響を与えているのかについて検討する。
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Causes of Carryover |
鉄代謝にかかわる因子として最近同定されたエリスロフェロンに関する研究計画を練り直したことと、年度末に近い時期の不急の消耗品の購入を次年度明けの購入に繰り越したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用分は、おもにエリスロフェロンに関する研究に用いる消耗品日に当てる計画である。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] The role of growth differentiation factor 15 in the pathogenesis of primary myelofibrosis.2015
Author(s)
Uchiyama T, Kawabata H, Miura Y, Yoshioka S, Iwasa M, Yao H, Sakamoto S, Fujimoto M, Haga H, Kadowaki N, Maekawa T, Takaori-Kondo A
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Journal Title
Cancer Medicine
Volume: 4
Pages: 1558-1572
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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