2016 Fiscal Year Research-status Report
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26461400
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
川端 浩 金沢医科大学, 医学部, 教授 (10329401)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 血液内科 / 鉄代謝 / ヘプシジン / フェリチン / 赤血球造血 / エリスロフェロン |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までの研究で、鉄代謝制御の要になる液性因子ヘプシジンのプロモーター活性をGFP発光を指標としてハイスループットでスクリーニングできる系を開発した。また、貯蔵鉄のマーカーである血清フェリチンの役割について、H-フェリチンがトランスフェリン受容体1を介して主に赤芽球に取り込まれることを見出した。これらはいずれも論文として公表した。 今年度は、施設の倫理委員会の承認と患者のインフォームドコンセントを得て保存してある患者検体を用いて、鉄代謝関連の液性因子の測定を行い、その臨床的意義についての解析を行った。 (1)肝臓から分泌される鉄代謝制御因子ヘプシジンの発現を抑制することがマウスの系で示されている、赤芽球が分泌する液性因子エリスロフェロンについて、市販のELISAキットを用いて、さまざまな血液疾患患者の血中濃度を測定した。その結果、骨髄における赤芽球の増加と、血清エリスロフェロン濃度に明らかな相関を認めなかった。測定系の問題、あるいは、マウスとヒトにおけるエリスロフェロンの発現や役割の違いによるものかもしれない。 (2)血液腫瘍患者の造血幹細胞移植前の血清ヘプシジン値、血清フェリチン値と、移植成績、生着、移植後の合併症等の関係を解析し、論文化した。移殖前の血清ヘプシジン値、あるいは血清フェリチン値が高いと、有意に移植後の全生存率が低下した。移殖前のヘプシジン値が高いと、血小板生着が有意に遅延したが、赤血球と好中球の生着には影響を与えなかった。これらの結果から、移殖前の血清ヘプシジン値は、鉄過剰状態だけでなく、骨髄環境に関連した指標となるのではないかと推測した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
血清ヘプシジン値と造血幹細胞移植成績、特に血小板生着との関連についてはCancer Medicine誌に論文として発表することが出来た。 しかしながら、当該年度に予定していたエリスロフェロンに関する研究が、十分に進まなかった。また、われわれが前年度までに見出して論文化したH-フェリチンの赤血球造血抑制効果の、メカニズムの解析も、今年度は十分な成果が挙げられなかった。 研究遅延の原因は、研究代表者が7月に所属施設を変更し、研究室の引越しやセットアップのために時間を要したためである。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に研究室移転のために進まなかった、下記の研究を推進する。 (1)鉄貯蔵蛋白であるH-フェリチンの、赤血球造血抑制効果や免疫系への作用について、その機序を解析する。具体的には、ヒトのCD34陽性細胞から赤芽球系へ分化させるインビトロの確立した系で、遺伝子組み換えヒトフェリチンを添加して、発現の変化する遺伝子をマイクロアレイを用いて抽出する。抽出された遺伝子のなかから、文献的な情報などにより重要なものを絞込み、real-time PCR, Western Blotなどにより発現変化を確認する。これらの赤血球造血における役割を、ノックダウンなどの手法により解析する。 (2)赤血球造血と鉄代謝をつなぐ因子と想定されているエリスロフェロンの血清中濃度を測定する系を開発する。このために、まず遺伝子組み換え蛋白と、それに対する抗体作成を行う。遺伝子組み換え蛋白は、機能解析にも用いる。新しく構築した系で、血液疾患患者の血清中の濃度を測定して、臨床的な意義を明らかにする。
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Causes of Carryover |
研究代表者が昨年の7月に所属施設を変更し、これに伴って研究室を引っ越した。研究室のセットアップに時間を要し、研究計画に遅れが生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
(1)鉄貯蔵蛋白であるH-フェリチンの、赤血球造血抑制効果や免疫系への作用について、その機序を解析する。具体的には、ヒトのCD34陽性細胞を赤芽球系分化させるインビトロの系で、遺伝子組み換えヒトフェリチンを添加して、発現の変化する遺伝子をマイクロアレイを用いて抽出する。抽出された遺伝子のなかから、重要なものをreal-time PCR, Western Blotなどにより選択し、これらの赤血球造血における役割をノックダウンなどの手法により解析する。 (2)赤血球造血と鉄代謝をつなぐ因子と想定されているエリスロフェロンの血清中濃度を測定する系を開発する。このために、まず遺伝子組み換え蛋白と、それに対する抗体作成を行う。遺伝子組み換え蛋白は、機能解析にも用いる。あたらしく構築した系で、血液疾患患者の血清中の濃度を測定して、臨床的な意義を明らかにする。
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Research Products
(2 results)