2014 Fiscal Year Research-status Report
TET2変異による造血器腫瘍の発症と進展メカニズムの解明
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26461408
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
下田 和哉 宮崎大学, 医学部, 教授 (90311844)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 骨髄増殖性腫瘍 / TET2 / JAK2 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨髄系腫瘍である骨髄増殖性腫瘍(MPN)の10-15%、骨髄異形性症候群(MDS)の18-23%にみられるTET2変異は、その機能欠損マウスの解析から、造血幹細胞の自己複製能を亢進させる変異であることを我々は報告してきた。本研究では、骨髄増殖性腫瘍に高頻度に認めるTET2変異が、造血器腫瘍の発症、進展に果たす役割を明らかにすることを目的に、TET2変異により発現が変化する遺伝子の同定を行った。TET2変異マウス、野生型(WT)マウスより分取した造血幹細胞分画を含むKSL細胞の遺伝子発現を網羅的に比較し、TET2変異マウスにおいて発現が亢進している49遺伝子、低下している56遺伝子を明らかとした。これらの遺伝子は「TET2の標的遺伝子」候補と考えられ、さらなる解析を進める予定である。 さらに、MPN発症におけるTET2、JAK2変異の協調作用をin vivoにおいて検討した。両遺伝子の単独変異、2重変異のマウスを作製、解析し、2重変異マウスはJAK2単独変異マウスに較べ血球増加、脾腫の程度が大であり、さらにより早期に死亡することから、TET2変異はMPNの重症化に関与していることを明らかとした。引き続き、競合連続移植実験を行い、JAK2変異単独細胞は長期の造血を維持できないこと、これにTET2変異が加わった2重変異細胞は長期の造血を維持し、かつMPNを発症することを見出し、TET2変異はJAK2変異造血幹細胞の機能を強化しMPN発症を支持することを明らかとした。これらのことから、JAK2変異MPNにおけるTET2欠損の2つの役割、即ち「JAK2変異造血幹細胞の機能を強化しMPN発症を支持する役割」と「MPNを重症化させる役割」を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
骨髄性腫瘍において変異がみられるTET2変異の機能解析を目的に、TET2変異マウス、野生型(WT)マウスの造血幹細胞において発現が変化する105遺伝子を同定した。これらの遺伝子は「TET2の標的遺伝子」候補と考えられ、TET2が5メチルシトシンを5ハイドロキシメチルシトシンへ変換する酵素であり、TET2変異によりその酵素活性が低下することを指標に、TET2欠損造血幹細胞において発現が変化している遺伝子の、CpG領域、non-CpG領域のシトシンのメチル化状態の解析に進む。さらに、TET2、JAK2遺伝子の単独変異、2重変異のマウスを作製、解析を行い、JAK2変異MPNにおいてはTET2欠損が2つの役割を果たしていること、即ち「JAK2変異造血幹細胞の機能を強化しMPN発症を支持する役割」と「MPNを重症化させる役割」があることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
TET2は5メチルシトシンを5ハイドロキシメチルシトシンへ変換する酵素であるため、TET2の標的遺伝子においてはシトシンが脱メチル化された領域が存在すると予想される。野生型(WT)造血幹細胞と比較しTET2欠損造血幹細胞において発現が亢進している遺伝子、低下している遺伝子の、CpG領域、non-CpG領域のシトシンのメチル化状態を、bisulfate法によりTET2欠損細胞とWT細胞で比較する。発現が変化し、かつCpG領域、non-CpG領域のシトシンのメチル化状態が変化している遺伝子は、TET2標的遺伝子の可能性が高い。これらの機能解析を、TET2酵素活性が低下すると試験管内で継代できるコロニー数が増加することを指標に、レトロウイルスベクターを用い、発現が亢進している遺伝子に関してはshRNAiを、低下している遺伝子に関してはその遺伝子をTET2変異細胞に導入後、試験管内でコロニー形成を行い、TET2標的遺伝子に幹細胞活性を亢進させる作用があるかを検討する。 MPNに加え、MDSの発症に果たすTET2の役割も検討する。TET2変異は、MPNのみならずMDSの約20%にも観察される。TET2変異にJAK2変異が重複した時にMPNが発症するのと同様に、TET2変異に別の変異が重複した時にMDSが発症する機序が想定される。その候補としてAML1変異をTET2変異細胞に導入後、レシピエントマウスに移植し、MDSが発症するかを検討する。 これらの検討を通じて、骨髄系腫瘍発症、進展に果たすTET2の機能を明確にする。
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[Journal Article] Gene expression profiling of loss of TET2 and/or JAK2V617F mutant hematopoietic stem cells from mouse models of myeloproliferative neoplasms2015
Author(s)
Kameda T, Shide K, Yamaji T, Kamiunten A, Sekine M, Hidaka T, Kubuki Y, Sashida G,Aoyama K, Yoshimitsu M, Abe H, Miike T, Iwakiri H, Tahara Y, Yamamoto S, Hasuike S, Nagata K, Iwama At, Kitanaka A, Shimoda K
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Journal Title
Genomics Data
Volume: 4
Pages: 102-108
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Loss of TET2 has dual roles in murine myeloproliferative neoplasms: disease sustainer and disease accelerator2015
Author(s)
Kameda T, Shide K, Yamaji T, Kamiunten A, Sekine M, Taniguchi Y, Hidaka T, Kubuki Y, Shimoda H, Marutsuka K, Sashida G, Aoyama K, Yoshimitsu M, Harada T, Abe H, Miike T, Iwakiri H, Tahara Y, Sueta M, Yamamoto S, Hasuike S, Nagata K, Iwama A, Kitanaka A, Shimoda K
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Journal Title
Blood
Volume: 125
Pages: 304-315
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Presentation] Loss-of-TET2 induces clonal expansion of JAK2V617F mutant stem/progenitor cell and initiates MPNs2014
Author(s)
Kamada T,Shide K, Akizuki K, Sekine M, Kamiunten A, Shimoda H, Hidaka T, Kubuki Y, Kitanaka A, Marutsuka K, Shimoda K
Organizer
第76回日本血液学会学術集会
Place of Presentation
大阪市
Year and Date
2014-10-31 – 2014-11-02
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