2014 Fiscal Year Research-status Report
脂肪幹細胞からのプレ巨核球前駆細胞の同定と特性の解析
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26461410
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
松原 由美子 慶應義塾大学, 医学部, 特任准教授 (70365427)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松岡 佐保子 慶應義塾大学, 医学部, 研究員 (20317340)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 血小板 / 巨核球 / 脂肪幹細胞 / 再生医学 / 細胞・組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の研究代表者あるいは分担者らのグループは、既存の階層的血球分化モデルと異なる血小板産生経路の存在と造血幹細胞(HSC)の中に血小板へ分化しやすい細胞が存在する事を論文報告した(2013 Nature、2012 Bloodなど)。血小板を放出する巨核球は細胞表面因子や転写因子の発現において、HSCに近いパターンをとる事から巨核球分化過程の研究は注目を集めている。本研究は、新規概念すなわち脂肪幹細胞から分化し、自らトロンボポエチンを分泌・消費しながら高率に巨核球分化に向かうプレ巨核球前駆細胞(PMP細胞)の同定と特性解析を行う。この成果は、不明点の多い血小板産生の疑問解決、その基礎研究成果が十分でないために後れている血小板減少症の予防・治療に対する有用性の高い新規アプローチ法開発につながると考えている。今年度は、自験データあるいは文献報告の考察によるPMP表面抗原の絞り込みを行った。使用した細胞は、マウス初代培養細胞(骨髄と皮下脂肪組織の脂肪幹細胞)、ヒト初代培養細胞 (骨髄と皮下脂肪組織の脂肪幹細胞: Cell Application社)である。これまでに脂肪幹細胞から巨核球分化過程における機序の解明研究において見いだしているヒトおよびマウスPMP表面抗原の候補、CD41、CD63、CD71、CD109、CD150の発現検討を行ったところ、CD71の発現有無が細胞により異なっていることを認めた。CD71の発現の有無による細胞分離をFACSを用いて行った。これら分離された細胞は、巨核球分化誘導培地で培養され、その巨核球産生量をSingle cell analyzerでCD41陽性の数としてカウントした結果、CD71陽性脂肪幹細胞ではCD71陰性脂肪幹細胞に比し、約6倍の巨核球産生を認めた。これら結果は、CD71がPMP細胞表面抗原マーカー候補であることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、新規概念すなわち脂肪幹細胞から分化し、自らトロンボポエチンを分泌・消費しながら高率に巨核球分化に向かうプレ巨核球前駆細胞(PMP細胞)の同定と特性解析を行うことである。使用した細胞は、マウス初代培養細胞(骨髄と皮下脂肪組織の脂肪幹細胞)、ヒト初代培養細胞 (骨髄と皮下脂肪組織の脂肪幹細胞: Cell Application社)である。これらの中で主に使用した細胞はヒト脂肪幹細胞である。本年度の検討内容として計画された主な項目は (1) PMP表面抗原の候補絞り込みであるが、良好な結果が得られた為、(2) 使用している細胞の表面抗原発現解析、(3) PMPから巨核球以外の血球への分化誘導、に関しても遂行した。 (1)に関しては、CD71陽性の脂肪幹細胞が陰性の脂肪幹細胞に比し、巨核球分化効率が約6倍高いことから、CD71がPMP表面抗原マーカー候補であることを見いだした。(2) 表面抗原発現解析において、ヒト脂肪幹細胞は、CD29(+)、CD13(+)、CD73(+)、CD90(+)、CD44(+)、CD34(-)、CD14(-)、CD11b(-)、CD235(-)、CD56(-)、CD41(-)の均一な発現を認めた。すなわち巨核球分化誘導前の脂肪幹細胞は、間葉系細胞の表面抗原を有し、血球系細胞の表面抗原は有していない。(3)造血幹細胞から巨核球へ分化誘導を行う方法において、造血幹細胞を脂肪幹細胞に置き換えても巨核球を得ることが出来る。しかし、造血幹細胞から赤血球や白血球へ分化誘導を行う方法において、造血幹細胞を脂肪幹細胞に置き換えても赤血球や白血球への分化は認められなかった。これは、脂肪幹細胞が血液細胞の中でも巨核球へ特異的に分化能を持つことを示唆している。 これら結果を得たことにより、本研究は計画に従い、順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請時は、平成27年度において、(2) PMPにおける未分化抗原、間葉系幹細胞、造血幹細胞などの表面抗原の有無を解析、
(3) PMPから巨核球以外の血球への分化の検討を計画したが、平成26年度に結果の多くを得る事が出来た。 従って次年度は、当初の計画の(4) Single cellによるPMP遺伝子発現解析Single cellにおける候補因子の遺伝子発現をFluidigmシステムによる定量解析を行う。そして当初の計画では平成28年度に遂行予定の(5) PMPの含有因子や分泌因子の解析 遺伝子発現やこれまでの知見に基づき、トロンボポエチンなど候補因子の含有因子や分泌因子をELISA法にて定量解析を行う。 今年度の結果からCD71は脂肪幹細胞群におけるPMP細胞の表面抗原マーカーのひとつの候補と考えられるが、CD71陽性脂肪幹細胞の分化誘導効率は100%には達していない。従って、引き続き表面抗原探索を行うが、その際に項目(4)のsingle cell解析結果との抱き合わせ解析が非常に有効であると考えている。
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Causes of Carryover |
差額は、消耗試薬費用から生じている。この理由は、本研究における使用頻度が高く、そして高額の抗体試薬などをメーカーのキャンペーン価格時に計画的に購入することで予定の試薬費用よりも低く抑えることが出来たためです。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
差額分の462286円に関する使用計画は、100,000円を論文投稿に関わる費用、362286円を細胞研究用試薬に使用します。
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[Journal Article] Megakaryopoiesis2014
Author(s)
Keiichi Tozawa, Yukako Ono-Uruga, Yumiko Matsubara
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Journal Title
Clin Exp Thromb Hemost
Volume: 1
Pages: 54, 58
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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