2016 Fiscal Year Research-status Report
免疫修飾作用を持つ分子標的薬と免疫療法の併用療法における新機軸の開発
Project/Area Number |
26461419
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北脇 年雄 京都大学, 医学研究科, 助教 (50378684)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 免疫チェックポイント阻害薬 / 分子標的薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
免疫チェックポイント阻害剤はがん免疫療法のブレークスルーをもたらし,外科療法,化学療法,放射線療法につぐ,新たながん治療の柱として免疫療法の地位を確立させた。免疫チェックポイント阻害剤は,既存治療が無効のがん患者にも有効性を示し,がん免疫療法ががん治療の新たな領域を切り拓く力を持っていることを明確にした。しかし,免疫チェックポイント阻害剤の奏効率は,多くの癌種で約20%前後に留まっており,決して高いとは言えない。また,一部の患者で免疫反応の過剰活性化による重篤な副作用を来たすこともあることが問題点である。 一方,フィラデルフィア染色体陽性白血病の治療薬として開発されたチロシンキナーゼ阻害薬ダサチニブは,治療標的であるABLキナーゼのみならず,広範なキナーゼを阻害するオフターゲット効果を持ち,免疫細胞における重要なシグナル伝達を担うSrcファミリーキナーゼなどのキナーゼを阻害し免疫修飾作用を持つ。実際,ダサチニブ治療を受けている患者の一部でCD8陽性T細胞,NK細胞などのリンパ球が増加し,リンパ球増加のある患者では治療効果が高いことが示されている。つまり,ダサチニブに抗腫瘍免疫を高める働きがある可能性が示唆されている。 我々はこのようなダサチニブの免疫修飾作用が免疫チェックポイント阻害剤の治療効果を増強することができるのではないかと考え,研究を行っている。免疫チェックポイント阻害剤とダサチニブの併用療法をマウスの腫瘍モデルで検証する実験を計画しており,予備実験としてマウスの複数の腫瘍細胞株のチロシンキナーゼ阻害薬に対する感受性をin vitroで見る実験を行った。また,免疫反応に関与する分子の発現がIFN-γ刺激によって増強される反応がチロシンキナーゼ阻害薬によってどのような影響を受けるかを検証している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
In vitroにおけるマウス腫瘍細胞株に対するチロシンキナーゼ阻害薬による影響を検証する実験に時間がかかった。また,研究を遂行している大学院生がマウスの実験手技の習得に時間がかかり,in vivoモデルでの検証の実験の進行が遅れている。しかし,すでにin vivoモデルにおける検証は開始しており,今後は研究を進めることができる。
|
Strategy for Future Research Activity |
In vivoモデルにおける免疫チェックポイント阻害剤とチロシンキナーゼ阻害剤の併用の実験を行い,これらの治療の組み合わせで相乗効果のあるものを探索する。また,腫瘍組織,リンパ組織の細胞を採取して免疫学的な解析を行い,相乗効果のあるものとないものの比較により,相乗効果がどのようなメカニズムで起こっているかを検討する。
|
Causes of Carryover |
マウスのin vivoモデルでの実験の進行に遅れが生じたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初から予定していたマウスのin vivoの治療モデルでの実験を積み重ね,免疫学的な解析を行うために使用する。
|