2014 Fiscal Year Research-status Report
新規治療戦略の確立をめざした慢性骨髄系腫瘍幹細胞の同定
Project/Area Number |
26461424
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
竹中 克斗 九州大学, 大学病院, 講師 (30301295)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | がん幹細胞 / 異種移植モデル / 免疫不全マウス / SIRPA / 骨髄増殖性腫瘍 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトがん幹細胞を標的とする新世代のがん治療法は、急性骨髄性白血病(AML)において、その実用化が目前である、一方で、高齢者造血器腫瘍の多くを占める慢性骨髄性腫瘍(骨髄増殖性腫瘍(MPN)および骨髄異形成症候群(MDS))では、疾患原因遺伝子や疾患進行のメカニズムが解明されておらず、この分野の分子標的治療の開発が遅れている。本邦の人口高齢化に伴い、今後、MPN/MDS症例の増加が予想されるが、MPN/MDSでは、腫瘍性幹細胞も未だ同定されていない。幹細胞アッセイに用いられる現存の異種移植モデルでは、MPN/MDS細胞の生着が非常に低く、MPN/MDS幹細胞研究の障壁となっている。本課題では、次世代免疫不全マウスをさらに改良し、繁殖能力の高いB6ラインに、Rag2欠損、IL2Rg欠損によってマウスT細胞分化を完全遮断し、ヒトSIRPAノックインによる完全マクロファージ寛容の導入と、ヒトIL-3導入による骨髄系細胞増殖の促進など、MPN/MDS幹細胞の生着効率を高めた新規ラインを樹立し、MDS幹細胞の分離・同定と、疾患モデルマウスを確立を行う。 我々は、すでに、B6バックグランドでRag2およびIL2Rγを欠損したマウスに、NOD型SIRPA変異を導入した免疫不全マウスB6. Rag2(null )IL2Rγ(nul)lSIRPA(NOD/NOD)ライン(BRGS)を樹立しており、当該年度では、完全マクロファージ寛容導入と、骨髄サイトカイン環境改善のため、ヒト型SIRPA、ヒトIL-3をノックインしたラインの樹立を目指し、各ラインにおけるヒト造血幹細胞の生着効率について検証を行った。次年度でBRGSラインと交配し、最終ラインを樹立し、新型マウスラインのヒト細胞の生着効率を検証するとともに、MPN/MDS幹細胞のアッセイを進める予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
急性骨髄性白血病(AML)においては、既存の免疫不全マウスを用いた異種移植系によって、がん幹細胞のアッセイが盛んに行われているが、一方、同じ骨髄系腫瘍であるMPN/MDSにおいては、正常正常造血幹細胞やAMLにて確立された免疫不全マウスの実験系を用いても、生着率が極端に低く、マウス内で疾患の再構築が得られない。このため、MPN/MDSにおいては、がん幹細胞の純化・同定が進んでいない。その原因として、免疫不全マウスの骨髄微小環境が、MPN/MDS幹細胞を維持できない可能性が考えられる。本課題では、現存する免疫不全マウスによるアッセイ系に様々な改良を加え、MPN/MDS疾患モデルの樹立を目指している。 我々は、ヒト細胞の生着にマクロファージ寛容が重要な役割を持つことを見出しており、本課題では、ヒト型SIRPAをノックインし、完全なマクロファージ寛容を導入した免疫不全マウスを樹立する。さらに、IL-3は骨髄球系細胞の重要な増殖因子であるが、マウスIL-3はヒトIL-3と交差活性がない。そこで、同時にヒトIL-3ノックインマウスを作製し、上述のマウスと交配する。 当該年度では、基礎となるBRGSラインの樹立が完了し、さらに、ヒトSIRPA、ヒトIL3ノックインライン樹立の樹立をほぼ終え、BRGSマウスとの交配によって、最終ラインの樹立が進みつつある。マウスの交配に時間を要しているが、目的とする基盤ラインは樹立ができており、基盤ラインのヒト正常造血幹細胞の生着効率の検証もほぼ終了している。次年度では、最終ラインの樹立とともに、MPN/MDS幹細胞のアッセイに進むことが可能で、研究計画は、おおむね順調に進行している。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに、基礎となるBRGSラインの樹立が完了し、さらに、ヒトSIRPA、ヒトIL3ノックインラインの樹立もほぼ終了し、現在、マウスコロニーの拡大を行っている。同時に、B6マウスとのバッククロス、および凍結杯による保存を行っている。マウスコロニーの拡大など新規ラインの使用には時間がかかるため、次年度も引き続いてラインの確立を継続する。このように、我々の樹立した骨髄系腫瘍幹細胞のアッセイに最適化した次世代免疫不全マウスを用いて、MPN/MDS骨髄より腫瘍性幹細胞分画の同定を試みる。MPN/MDSは、HSCレベルの未熟細胞のゲノム異常によって生じると考えられ、正常HSC分画であるCD34+CD38-分画にMPN/MDS幹細胞が存在することが予想される。MPN/MDSにおいて、異常HSCと正常HSCとを分離して解析することが難しいことが、MPN/MDS幹細胞の解析が困難の理由となっている。申請者らは、 前自血病状態であるMDSにおいて、 AML特異的表面抗原TIM-3が、 異常HSCを識別する有効なマーカーである事を見出している。 病期進行と幹細胞分画内のTIM-3+細胞の増加が相関していることから、TIM-3をマーカーとして用いることにより、これまで純化が困難であったMPN/MDSの腫瘍幹細胞が純化できると考えられる。これらのマーカーを組み合わせて、腫瘍性幹細胞を高純度に分離し、上述の新規異種移植アッセイ系にて腫瘍再構築能を検証する。MPN/MDSでは、病期進行の過程でいくつもの分子異常が蓄積され、複数分画に腫瘍性幹細胞が存在する可能性もある。我々の新規マウスラインでは、移植後の長期観察が可能であり、限界希釈法による各分画の腫瘍性幹細胞の頻度や、レンチウイルスによるマーキングによって腫瘍性幹細胞クローンの解析を行い、病期進行のin vivo動態についても検討を試みる。
|
Causes of Carryover |
本研究課題は、おおむね順調に進展しており、当該年度予定の新規免疫不全マウスの基盤ラインを複数樹立できた。常時200~300匹のマウスの維持が必要であり、当該年度では、マウス飼育・維持に必要な動物実験費が非常に多くかかり、研究費使用計画の多くを占めた。基盤ラインの完成に伴い、MPN/MDS腫瘍性幹細胞のアッセイを開始予定であるが、マルチカラーフローサイトメトリーを用いて幹細胞を純化していく過程で、既知の抗体に加えて、新規の幹細胞特異的抗原に対する抗体、また、移植マウスの解析においても、hCD45をはじめとした抗体が複数必要になる。フローサイトメトリーによる解析に、多額の予算を要するが、抗体試薬の購入にあたっては、一括購入の方が、割引率など有利である。当該年度の残高では、抗体試薬の一括購入の予算が不足するため、次年度予算と併せて、抗体を購入した方が、予算の効率的利用につながると判断した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
上述のように、次年度では、マルチカラーフローサイトメトリーを用いて幹細胞を純化していく過程で、CD34、CD38、分化抗原(5-7種類)など既知の抗体に加えて、新規の幹細胞特異的抗原に対する抗体が必要になる。また、移植マウスの解析においても、hCD45をはじめとした抗体が複数必要になる。また、樹立した新規マウスラインの評価のため、mCD45などの抗マウス抗体も複数必要である。次年度使用額は、次年度予算を併せて、抗体試薬の一括購入の予算として使用予定である。
|
-
[Journal Article] A multinational, open-label, phase 2 study of ruxolitinib in Asian patients with myelofibrosis: Japanese subset analysis.2015
Author(s)
Oritani K, Okamoto S, Tauchi T, Saito S, Ohishi K, Handa H, Takenaka K, Gopalakrishna P, Amagasaki T, Ito K, Akashi K.
-
Journal Title
Int J Hematol
Volume: 101
Pages: 295-304
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
-
[Journal Article] CD41 marks the initial myelo-erythroid lineage specification in adult mouse hematopoiesis: redefinition of murine common myeloid progenitor.2015
Author(s)
Miyawaki K, Arinobu Y, Iwasaki H, Kohno K, Tsuzuki H, Iino T, Shima T, Kikushige Y, Takenaka K, Miyamoto T, Akashi K.
-
Journal Title
Stem Cells
Volume: 33
Pages: 976-987
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
-
[Journal Article] Efficacy and safety of ruxolitinib in Asian patients with myelofibrosis.2015
Author(s)
Jung CW, Shih LY, Xiao Z, Jie J, Hou HA, Du X, Wang MC, Park S, Eom KS, Oritani K, Okamoto S, Tauchi T, Kim JS, Zhou D, Saito S, Li J, Handa H, Jianyong L, Ohishi K, Hou M, Depei W, Takenaka K, Liu T, Hu Y, Amagasaki T, Ito K, Gopalakrishna P, Akashi K.
-
Journal Title
Leuk Lymphoma
Volume: 56
Pages: 2067-2074
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
-
[Journal Article] The ordered acquisition of Class II and Class I mutations directs formation of human t(8;21) acute myelogenous leukemia stem cell.2014
Author(s)
Shima T, Miyamoto T, Kikushige Y, Yuda J, Tochigi T, Yoshimoto G, Kato K, Takenaka K, Iwasaki H, Mizuno S, Goto N, Akashi K
-
Journal Title
Exp Hematol
Volume: 42
Pages: 955-965
DOI
Peer Reviewed