2014 Fiscal Year Research-status Report
エピジェネティック制御因子HDAC8のATL発がんにおける役割の解明
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26461437
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
樋口 智紀 近畿大学, 医学部, 助教 (00448771)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
義江 修 近畿大学, 医学部, 教授 (10166910)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | HDAC8 / SOX4 / ATL / エピジェネティック |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに我々は、成人T 細胞白血病/リンパ腫(ATL)においてFra-2が細胞増殖に寄与することを明らかにし、また、Fra-2の下流標的遺伝子として原がん遺伝子c-Myb、MDM2、Bcl-6、SOX4を同定した(Nakayama et al., Oncogene 2008)。さらに、これらの原癌遺伝子の中で、肺癌や前立腺癌など様々な悪性腫瘍の発癌に関与することが報告されているSOX4のATLでの発現と役割を解析し、その下流標的遺伝子としてGCKR、NAP1、HDAC8などを同定した(Higuchi et al., Blood, 2013)。HDAC8は腫瘍においてがん抑制遺伝子の発現抑制など多くの遺伝子発現を制御するヒストン脱アセチル化酵素(HDACs)の一つである。また、HDACs阻害薬は様々な腫瘍に対し強力な抗腫瘍作用を示すことから、有望な抗がん剤として開発が進められている。したがって、HDAC8はATLにおいて有用な治療標的となる可能性がある。しかしながら、HDAC8のATL発がん過程における役割は不明である。ATLにおけるHDAC8の役割を明らかにするため、本年度我々はATLにおけるHDAC8の発現解析と機能解析、下流標的遺伝子の同定を行った。 その結果、1)qPCRによるSOX4およびHDAC8の発現解析の結果、ATLの臨床検体で一貫したHDAC8の発現がみられ、細胞株でも同様である、2)ATL細胞株におけるsiRNAを用いたHDAC8ノックダウンによって細胞増殖が抑制される、3)HDAC8をノックダウンしたATL細胞株のマイクロアレイ解析から、p21/Cip1など様々ながん抑制遺伝子の発現上昇がみられるとともに、細胞増殖に関わるCDK4、EIF1A、ICBP90/UHRF1、TCF19など複数の原がん遺伝子の発現低下もみられることが明らかとなった。これらのことから、成熟T細胞性腫瘍であるATLにおいて、HDAC8は重要な発癌因子の一つであることが明らかとなり、SOX4-HDAC8経路がこれら腫瘍において鍵となる発癌機構であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の我々の想定通り、ATLにおいてHDAC8がその細胞増殖に関与することを強く示唆する結果が本年度の研究成果から得られた。また、HDAC8発現抑制系を用いたDNAマイクロアレイ解析を行った結果、HDAC8標的候補遺伝子群の中にp21/Cip1をはじめとするがん抑制遺伝子が複数存在することが確認できた。また、HDAC8がCDK4、EIF1A、ICBP90/UHRF1、TCF19など複数の原がん遺伝子の転写活性化に関与することも確認できた。したがって、我々はATLにおけるHDAC8の細胞増殖に関わる分子機構の一端を明らかにすることができたと考えられる。これは本年度の研究計画通りの結果であり、よって、本研究計画は順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、研究計画通りに進めることができた。よって、次年度も当初の研究計画に従って進めていく。まず、ATLにおいてHDAC8下流遺伝子の発現誘導に関与するHDAC8の直接的な標的分子の同定とその作用機構についてエピジェノティクス解析も含めて検討する。HDAC8は直接的には遺伝子発現抑制に作用するため、HDAC8発現抑制系によるDNAマイクロアレイ解析で得られたHDAC8下流候補遺伝子群CDK4、EIF1A、ICBP90/UHRF1、TCF19などの直接的な転写活性化因子は別に存在することが推測される。したがって、これらの下流候補遺伝子群の中で、特に細胞増殖あるいはアポトーシス抵抗性に大きく影響を与えると考えられる遺伝子の転写活性化因子を主体にHDAC8がどのように関与するのか、その分子機構について検討を行う。
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Causes of Carryover |
本研究計画の実行において、主に必要となる研究経費は細胞培養や解析に使用する試薬、キットなどの消耗品費にある。本年度の研究計画の進行状況から次年度使用予定額を上回る可能性が生じたため、本年度は当初購入予定であったそれらの消耗品類の一部について、より安価な代用品の購入に切り替え、次年度の補填としたいと考えた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度同様、次年度もこれら消耗品費に研究費を使用する。また、次年度に必要となる機器の多くは当該研究施設にて整備されており、当該研究施設の機器で解析できない場合でも外部受託解析が可能であるため新たに購入する必要はない。しかしながら、本研究目的を達成するためにsiRNA 、real-time PCR解析に必要なTaqMan probe、免疫組織染色に用いる抗体、次世代シーケンサー用の消耗品類など一般試薬類と比較して単価がやや高価なものが必要となるため、次年度の研究費だけでは十分でない可能性がある。したがって、本年度未使用の助成金はこれらの研究経費への補填とする予定である。
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[Journal Article] Molecular analysis of loss of CCR4 expression during mogamulizumab monotherapy in an adult T cell leukemia/lymphoma patient.2015
Author(s)
Taguchi M, Imaizumi Y, Sasaki D, Higuchi T, Tsuruda K, Hasegawa H, Taguchi J, Sawayama Y, Imanishi D, Hata T, Yanagihara K, Yoshie O, Miyazaki Y.
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Journal Title
Annals of Hematology
Volume: 94(4)
Pages: 693-695
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Generation of colonic IgA-secreting cells in the caecal patch.2014
Author(s)
Masahata K, Umemoto E, Kayama H, Kotani M, Nakamura S, Kurakawa T, Kikuta J, Gotoh K, Motooka D, Sato S, Higuchi T, Baba Y, Kurosaki T, Kinoshita M, Shimada Y, Kimura T, Okumura R, Takeda A, Tajima M, Yoshie O, Fukuzawa M, Kiyono H, Fagarasan S, Iida T, Ishii M, Takeda K.
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Journal Title
Nature Communications
Volume: 5
Pages: 3704
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] CXCL16 suppresses liver metastasis of colorectal cancer by promoting TNF-α-induced apoptosis by tumor-associated macrophages.2014
Author(s)
Kee JY, Ito A, Hojo S, Hashimoto I, Igarashi Y, Tsuneyama K, Tsukada K, Irimura T, Shibahara N, Takasaki I, Inujima A, Nakayama T, Yoshie O, Sakurai H, Saiki I, Koizumi K.
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Journal Title
BMC Cancer
Volume: 14
Pages: 949
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] High efficiency of photon-to-heat conversion with a 6-layered metal/dielectric film structure in the 250-1200 nm wavelength region.2014
Author(s)
Liu MH, Hu ET, Yao Y, Zang KY, He N, Li J, Zheng YX, Wang SY, Yoshie O, Lee Y, Wang CZ, Lynch DW, Chen LY.
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Journal Title
Optics Express
Volume: 22 Suppl 7
Pages: A1843-1852
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] A pleomorphic carcinoma of the lung producing multiple cytokines and forming a rapidly progressive mass-like opacity.2014
Author(s)
Matsumoto M, Nakayama T, Inoue D, Takamatsu K, Itotani R, Ishitoko M, Suzuki S, Sakuramoto M, Yuba Y, Yoshie O, Takemura M, Fukui M.
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Journal Title
BMC Cancer
Volume: 14
Pages: 588
DOI
Peer Reviewed
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