2014 Fiscal Year Research-status Report
インターロイキン2と抗PD-L1抗体の併用によるGVHD/GVL分離法の開発
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26461449
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
松岡 賢市 岡山大学, 大学病院, 助教 (90432640)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 血液内科学 / 造血幹細胞移植学 / 免疫寛容 / 移植片対宿主病 / 橋渡し研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
同種造血幹細胞移植後に発症する慢性移植片対宿主病(慢性GVHD)に対して、インターロイキン2(IL-2)の少量投与により、制御性T細胞(Treg)の恒常性回復およびそれに伴う慢性GVHDの改善効果が明らかになっている。一方で、IL-2療法によるTreg増幅は抗腫瘍免疫を減弱させるのではないかとの懸念があり、その適用においては免疫学的機序の慎重な検証が必要である。今回の研究では、T細胞の免疫疲弊に重要な役割を果たすProgramed cell death-1(PD-1)に着目し、IL-2療法中のTreg恒常性を検討した。 まず、野生型B6マウスに低用量IL-2を2週間皮下投与し、Tregが選択的に増加する系を作成し、このTregの表現型について解析した。低用量IL-2によって増加するTregは、CD44+CD62L+のセントラルメモリー表現型を呈した。IL-2療法中のT細胞亜分画のPD-1発現を解析したところ、増加したCD44+CD62+Treg(CM-Treg)においてのみ、特異的にPD-1発現上昇がみられた。このPD-1の役割を検討するため、PD-1ノックアウトマウスに対して同様にIL-2を投与したところ、IL-2投与直後から、Tregの急激な活性化が見られたが、Treg数は一時的な増加の後に減少し、安定した増加が認められなかった。この過程を詳細に検討したところ、PD-1-KOマウスでは、IL-2投与により、CD44+CD62-のエフェクターメモリー表現型を呈するTregが一時的に増加するものの、このEM-Tregの増加は高い活性化誘導アポトーシス(AICD)によって相殺されており、持続的なホメオスタシス維持能力を欠如することが明らかになった。 これらの結果からIL-2療法中にTregに高発現するPD-1は、Tregの恒常性維持に不可欠な役割を持つことが推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
低用量IL-2がTregの増幅をきたし、その恒常性を改善することが臨床より報告されているが、その抗腫瘍効果への影響が懸念されている。このため、今後、低用量IL-2療法を、再発リスクの高い症例などにも安全かつ効果的に行うため、GVHD抑制効果を担保しつつGVL効果の維持・増強を可能とする運用が求められる。今回われわれは、抗腫瘍効果に直接関係するPD-1発現について検討した。低用量IL-2投与では、通常型CD4T細胞およびCD8T細胞のPD-1発現増強が見られなかった。一方で、Tregにはセントラルメモリー分画を中心にPD-1の発現が高まっており、急激なTreg増加を抑制的に制御し抗腫瘍効果を担保するとともに、その過活性化によるアポトーシスを抑制することで穏当で持続的なTreg増幅を可能としていることが示唆された。今年度から、低用量IL-2療法の医師主導治験を開始しており、この随伴研究の中で、マウスで確認されたこれらの治験を臨床のセッティングで検証していく予定である。 以上から、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
IL-2療法中のTregにおけるPD-1発現上昇は、その恒常性維持に重要な役割を果たしていることが、これまでの研究で明らかになったが、同種移植のおけるGVHDおよびGVL効果への影響は依然不明である。マウス同種骨髄移植モデルにおいて、移植後4日目より、IL-2を投与することでGVHDおよび生存期間の改善、さらにはGVL効果を観察する系をすでに確立しており、本系を用いて今後の検証を予定している。まずIL-2療法中におけるGVLの責任細胞を同定すべく、移植片より各種エフェクター細胞を除去し、GVLへの影響を検討する。また、IL-2に抗PD-1抗体を併用することによるTregのさらなる増幅効果が確認されたが、同種移植モデルにおける至適な投与時期、投与期間、投与量の検討を行う。さらに、その後に、抗PD-1抗体のGVLにおよぼす影響を検証するため、抗体を投与したマウスより各種エフェクター細胞を純化し、腫瘍細胞に対する効果をin vitroおよびin vivoにおいて検証する。特にIn vitroにおいてはIL-2や抗PD-1抗体は、T細胞やNK細胞のケモカインレセプターの発現パターンに影響するため、これらの細胞の生体内移動の変化も検証する予定である。また、現在低用量IL-2療法の国内臨床試験を開始しており症例の蓄積ならびに臨床検体の解析をすすめる。これらから、抗PD-1抗体とIL-2の併用によるGVL増強/GVHD抑制を目的とした臨床試験へ向けての基礎的知見が得られるものと考えている。
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Causes of Carryover |
昨年度は、マウス実験のために、遺伝子改変型ヒトサイトカイン(IL-2)の購入を予定していたが、製薬会社からの無償供与を延長することができたため、当初の見積もりよりも消耗品購入費を少なくすることができた。また岡山大学における動物実験施設の改築工事のため、予定の実験規模を縮小せざるを得なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、昨年度に引き続き、マウス、抗体といった実験に必要な基礎試薬を購入を行うが、動物実験施設の再稼働により実験数、規模が増大できるため、これに伴い、各購入費も増加が見込まれる。また、臨床治験が開始になるため、この随伴研究としての検体解析のためのヒト抗体試薬を購入する予定である。
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Research Products
(17 results)
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[Journal Article] Programmed death-1 pathway in host tissues ameliorates Th17/Th1-mediated experimental chronic graft-versus-host disease.2014
Author(s)
Fujiwara H, Maeda Y, Kobayashi K, Nishimori H, Matsuoka K, Fujii N, Kondo E, Tanaka T, Chen L, Azuma M, Yagita H, Tanimoto M.
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Journal Title
J Immunol.
Volume: 193(5)
Pages: 2565-73.
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Increased mitochondrial apoptotic priming of human regulatory T cells after allogeneic hematopoietic stem cell transplantation.2014
Author(s)
Murase K, Kim HT, Bascug OR, Kawano Y, Ryan J, Matsuoka K, Davids MS, Koreth J, Ho VT, Cutler C, Armand P, Alyea EP, Blazar BR, Antin JH, Soiffer RJ, Letai A, Ritz J.
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Journal Title
Haematologica
Volume: 99(9)
Pages: 1499-508
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Enhanced expression of PD-1 modulates CD4+Foxp3+ regulatory T cell homeostasis during low-dose IL-2 therapy in patients with chronic Graft-versus-Host disease2014
Author(s)
Takeru Asano, Haesook T. Kim, John Koreth, Robert Soiffer, Yusuke Meguri, Takanori Yoshioka, Hideo Yagita, Mitune Tanimoto, MD, PhD, Jerome Ritz, MD and Ken-ichi Matsuoka
Organizer
56th ASH Annual Meeting & Exposition
Place of Presentation
San Francisco
Year and Date
2014-12-08 – 2014-12-12
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[Presentation] Early homeostatic expansion of regulatory T cells after HSCT is susceptible to environmental factors2014
Author(s)
Takanori Yoshioka, Ken-ichi Matsuoka, Yusuke Meguri, Takeru Asano, Yuriko Kishi, Taiga Kuroi, Tatsunori Ishikawa, Kyosuke Saeki, Eiko Hasegawa, Yoshikazu Yamamoto, Katsuma Tani, Yasuhiro Shiote, Nobuharu Fujii, Eisei Kondo, Yoshinobu Maeda, Taro Masunari, Kumiko Kagawa, Koichi Nakase and Mitsune Tanimoto
Organizer
第76回 日本血液学会総会
Place of Presentation
大阪府大阪市
Year and Date
2014-10-31 – 2014-11-02
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