2014 Fiscal Year Research-status Report
遺伝性血管性浮腫におけるブラジキニン分解酵素活性の解析と疾患概念の確立
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26461493
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
大澤 勲 順天堂大学, 医学部, 非常勤講師 (60407252)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
恩田 紀更 順天堂大学, 医学部, 助教 (60465044)
井下 博之 順天堂大学, 医学部, 助教 (80646117)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 遺伝性血管性浮腫 / C1-inbitor / C4 / アミノペプチダーゼP / アンジオテンシン転換酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)遺伝性血管性浮腫(hereditary angioedema: HAE)患者の集積 本邦では350人程度のHAE患者が診断されている。順天堂医院にHAE専門外来を開設したことにより、HAE患者が集積し、現在42名のHAE患者の診療にあたっている(うち5名は平成26年度に増加)。血液サンプルは、インフォームド・コンセントの上で採取し、12検体を保存することができた。 2)HAE患者の検討 HAEのみならず、HAE以外の原因による血管性浮腫(angioedema: AE)の患者も鑑別診断のために受診するようなり、HAEと対比した形で研究を始めることができた。HAE I型及びII型23名、mast cell-mediated AE(mast-AE) 33名、drug induced AE(d-AE) 5名、idiopathic AE(i-AE) 11名の臨床的背景を比較検討した。HAEでは他のAEに比して発症年齢(19.5±8.0歳)が有意に低く、AEの家族歴(82.6%)も有意に多かった。HAEにおけるAEの出現部位としては、四肢、頚部、陰部、喉頭、消化管に多いことが特徴で、既往歴には気道閉塞による気管切開(2名)と腹痛による入院(4名)があった。血清C4濃度は基準値以下がHAEで95.6%、mast-AEで6%、d-AEで1%、i-AEで0%あった。C1-inbitor(C1-INH)活性はHAE全例で基準値以下であったが、その他のAEでは全例が基準値以上であった。以上の研究成果は、日本アレルギー学会学術集会での口頭発表と医学雑誌Allergy International 2014;63:595-602に掲載することができた。 3)Bradykinin (BK)分解酵素と症状の関連 上記のHAE患者のクロスセクショナルな検討では、C1-INH活性の程度とAE発作の重症度や頻度との関連性は見いだせず、C1-INH以外の因子によるAEの出現機序を解明する必要性が明確になった。BK分解酵素活性群のうちangiotensin converting enzyme、Dipeptidyl Peptidase-4、carboxypeptidase Nについては、ELISAによる活性測定システムを用意することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HAE患者のAE発症の機序には最終的にブラジキニンが関与している。ブラジキニンは数種類の分解酵素により速やかに失活する。本研究のテーマである分解酵素の活性測定には、新鮮な血液の採取が必要であると同時に、検査結果の信頼性を高めるために可能な限り一括測定を行うことがのぞましい。現在患者検体は12検体であるが、40検体を採取した時点での測定を目標としたい。BK分解酵素群のうちaminopeptidase P(APP)の測定系確立が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
1)患者血清の確保:患者血清の確保は目標の40例に到達するよう、一般外来や救急外来での採取を徹底する。さらに患者ごとの発作時と非発作時の検体も集める。 2)APP活性の測定系確立:Arg-Pro-Pro を基質に用い、血清と反応後、Spectrometer で遊離したarginine を測定する方法(Cyr M. et a.l Am J Physiol Heart Cir Physiol 2001)を、当施設の研究員の協力を得て確立させる。 3)検体測定:非発作時と発作時の患者検体を用いてBK分解酵素群の活性測定を行い、クロスセクショナルな検討と継時的な検討を行う。 4)その他:全国から集まるHAE患者の情報から、本邦のHAE患者の特徴を海外と比較検討する。C1-INHに異常の見られないHAE III型(現在HAE with normal C1-inhibitorと呼ばれている)の存在を明らかにし、AE発症機序へのBK分解酵素群の活性を検討する。 4)次年度の研究費の使用計画:物品費については、主にHAE患者の型分類のための外注によるC1-INH抗原測定(保険適応外)と、酵素活性測定のための試薬など消耗品、コンピュータの購入に充てる。旅費については、国内学会(アレルギー学会・日本補体学会)、国際学会(European Academy of Allergy, asthma and Clinical Immunology 2015))への参加・発表の経費に充てる。また、研究成果を医学雑誌へ発表する際の論文掲載費も捻出予定である。
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Causes of Carryover |
患者検体の集積を待ち、条件を一定にした一回の測定で結果を出す必要があるため、測定時に必要な経費が使われていない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、患者検体の集積もおわり、確立された実験系で測定を行う。
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Research Products
(6 results)