2014 Fiscal Year Research-status Report
インフルエンザウイルス亜型間交叉反応性中和抗体の探索とそのエピトープ解析
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26461517
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
大島 信子 藤田保健衛生大学, 研究支援推進センター, 講師 (60387694)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 交叉反応性中和抗体 / ファージ抗体ライブラリー |
Outline of Annual Research Achievements |
亜型間での広い交叉反応性を示すインフルエンザウイルスに対する中和抗体を単離するため、ファージ抗体ライブラリーの作製から開始した。 1968年以降インフルエンザ発症歴のないドナーに季節性インフルエンザワクチンを接種し、その血液から10の9乗オーダーのファージ抗体ライブラリーを作製した。1968年および1999年のH3N2ワクチン株でスクリーニングを実施し、スクリーニングに使用したワクチン株に結合するクローンを単離した。ウイルス核タンパクに結合する抗体クローンを除外し、134個の抗体クローンを解析対象とした。これら抗体クローンの重鎖のアミノ酸配列を決定し、59種類の抗体の存在を確認した。 5種類のH3N2ワクチン株(1968年、1985年、1999年、2007年、2009年)に対する結合活性測定の結果、59種類中3種類が全てのワクチン株に対し活性を示した。更にウエスタンブロッティングで、3種類のうち2種類の抗体がヘマグルチニン(HA)に対する抗体であることを確認した。 インフルエンザウイルスの中和抗体はHAをターゲットとしているため、この2種類の抗体を候補として絞り込んだ。テストしたH3株全てに結合活性を示すことから、この2種類の抗体は、H3株HAの保存された領域を認識している可能性が高いと考えている。さらに、この保存領域が、H3と同じグループ2の他の亜型でも保存されている場合は、グループ2内の亜型間での中和が期待できる。一方、その保存領域がグループ1のウイルス株でも保存されている場合は、グループ1,2間での交叉反応性を示す可能性もある。 今後はこれら抗体のエピトープ解析を行う必要があるとともに、ウイルスの中和能を有するかどうかについても検討を行う必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、H3N2ワクチンでのファージ抗体ライブラリースクリーニングによる抗HA抗体単離が最も重要であるが、使用ワクチンとライブラリーの組み合わせによっては抗核タンパク抗体が大量に単離されることがあり、これを回避することが最大の課題であった。今回の最初のスクリーニングにおいては、懸念通り抗核タンパク抗体の大量単離という結果となったが、抗原であるワクチンの条件検討を行うことにより抗核タンパク抗体の単離数を減少させ、多数の抗HA抗体の単離が可能となった。その結果、比較的早い段階から抗HA抗体の解析が可能となり、広い交叉反応性の可能性を持つ2種類の抗HA抗体単離に成功した。 グループ2内の亜型間で交叉反応性を持つ抗体が得られたかどうかが今後の課題だが、H3N2型ウイルス株全てに対し結合する抗HA抗体クローンが2種類得られたことで、亜型間交叉反応性抗体取得への可能性が広がった。
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Strategy for Future Research Activity |
単離された抗体のエピトープ解析を実施する。HIテストを実施することでHAのレセプター結合領域周辺への結合の有無を確認するとともに、エピトープがあらかじめ判明している抗HA抗体との競合ELISAを実施しその絞りこみを行う。また、これら抗体の中和活性の有無も確認するとともに、グループ2およびグループ1に属する他の亜型に属するウイルス株に対する反応性も検討する。 一方、広い交叉反応性の可能性のある抗体クローンをさらに単離する必要があるため、他のH3N2ワクチン株でのライブラリースクリーニングを実施する。抗核タンパク抗体の単離を極力抑えるため、スクリーニングに使用するワクチン株の条件検討を行いスクリーニングをすでに実施したものの、抑えることができなかった。今後は、さらにスクリーニング時の条件検討として、ワクチン側だけでなくファージ抗体ライブラリー側を前処理することも加え、効率よく抗HA抗体を単離することを目指す。
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Causes of Carryover |
当該年度はライブラリー作製に時間がかかり、スクリーニング開始時期が遅れたのに加え、抗HA抗体を単離するためのスクリーニング条件の検討に少し時間を要した。2種類のH3N2型のワクチン株に対する抗HA抗体は比較的早く単離が可能となったが、予定していた他のワクチン株でのスクリーニングでは、抗HA抗体の単離に成功していない。そのため、スクリーニングで得られた抗HA抗体クローンの数が当初の予定より少なく、各クローンの種々の解析数の減少に伴い、それにかかる消耗品費が減少した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該年度で行う予定であったスクリーニングの条件検討後、スクリーニングを実施し、次年度ではより多くの抗HA抗体クローンの単離を目指す予定である。その結果、抗HA抗体の解析数が増加する予定であり、各抗体クローンの種々の解析に使用する予定である。
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