2016 Fiscal Year Research-status Report
インフルエンザウイルス亜型間交叉反応性中和抗体の探索とそのエピトープ解析
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26461517
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
大島 信子 藤田保健衛生大学, 研究支援推進センター, 講師 (60387694)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 交叉反応性 / ファージ抗体ライブラリー |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに実施したファージ抗体ライブラリースクリーニングにより、126種類の抗インフルエンザ抗体を単離しており、抗原抗体反応に重要となる重鎖のCDR3アミノ酸配列をもとに81種類に分類できた。そのうち、A型インフルエンザグループ2の複数のH3N2型ワクチン株に幅広く交叉反応する抗体は6種類であり、更に4種類はグループ1のH1N1株にも交叉反応する抗体であった。これら抗体はインフルエンザウイルス中和抗体のターゲットであるヘマグルチニン(HA)に対する抗体であった。 今年度はこれら6種類から特にH1型に交叉反応する抗体を選び、HAに対する抗体であることを再確認し、H3型だけでなく2009年H1N1型HAへの結合も確認した。Fab型抗体を精製しHI活性を測定したところ活性は示さなかったため、HAのレセプター結合領域およびその周辺にはこれら抗体は結合しないことが明らかとなった。更に、精製抗体でH1型、H3型に対する結合活性を測定し、最も強い結合を示した抗体をIgG化してウイルス株に対する中和活性を測定したが、活性の検出はできなかった。しかし、これら抗体はB型株に対するスクリーニングでも単離されており、Fab型抗体でB型株に対する中和活性も示していることから、別の抗体クローンが中和活性を示す可能性が出てきた。また、これら抗体のHA上のエピトープ部位を決定するため、HAのdeletion mutant を作製し、細胞発現系を構築した。 本研究では、インフルエンザA型グループ2内の亜型間で交叉反応する抗体の単離を目指していたが、それ以上に幅広い交叉反応性の抗体単離にも成功した。中和活性はさらなる検討が必要となるが、Germline遺伝子との同一性からワクチン接種以前にすでに体内に獲得されている可能性が高く、過去のウイルス感染等により長年にわたり体内で維持され、機能してきたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度では、各抗体クローンの解析を主として行う予定であったが、インフルエンザA型H3N2ウイルス株だけでなくグループ1に属するH1N1株にも幅広く交叉反応する抗体の中和活性の有無が最も重要であると考えたため、Fab型による抗原への結合活性の強さから1種類の抗体に絞り込み、それに集中して解析を行った。しかしながら、そのIgG型抗体クローンの、中和活性および補体依存性細胞障害活性などの生物活性を検出することができず、その結果が判明した後、他の候補となる抗体クロ―ンの解析を行うこととなった。そのため、ウエスタンブロッティングによるHAへの結合活性再確認後は、当初予定していたエピトープ解析までは実施することができず、本年度当初の予定からは遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度実施できなかったエピトープ解析のために、HAのdeletion mutantを作製済みである。対象としているH3株に特異的な抗体またはH3-H1株に交叉反応する抗体はウエスタンブロッティングによるHAの検出が可能であるため、それを利用して、HAの各deletion mutantの細胞発現系から細胞溶解液を調製し、HA上のエピトープの絞り込みを行う。更に、競合ELISAにより同一エピトープを認識しているかどうかを評価する。 それと並行して、本研究で得られたデータをまとめ、論文作製、投稿および発表に向けて準備する。
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Causes of Carryover |
本年度予定していた各抗体クローンの解析に時間を要し、エピトープ解析が未実施で終わったため、それに予定していた消耗品費が未使用で終わった。抗体クローンの解析が終了できなかったため論文作製にも着手することができず、英文校正、投稿等に使用予定であった費用が未使用となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度終了予定であった抗体クローンのエピトープ解析を行う予定であり、その際の消耗品費に使用する。また、これまでに得られた本研究のデータをまとめ、論文作製、投稿および発表等を行う予定であり、その際にかかる英文校正費、投稿費用等に使用する予定である。
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