2014 Fiscal Year Research-status Report
ペルオキシソーム病患者血清の新規脂質分子に着目した病態解明と臨床指標への医用展開
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26461532
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
横山 和明 帝京大学, 薬学部, 教授 (50246021)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 極長鎖脂肪酸 / リピドミクス / メタボローム / ペルオキシソーム病 / 副腎白質ジストロフィー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、先天代謝異常症のうち極長鎖脂肪酸を蓄積するペルオキシソーム病である副腎白質ジストロフィー(ALD)を主な対象として、高感度のLC-MS/MSシステムを用いたリピドミクス解析を行うことにより、脳の白質部の炎症性脱髄という後天的発症の診断マーカー分子を見いだすことを目的としている。 本研究の実施項目は、1解析系の構築、2リピドミクス解析、3ターゲット分子のサンプル中での存在様式と代謝系の解析、4診断マーカーの探索、の4つを計画している。申請時には2と3はホスファチジルセリンを中心に記載したが、実際にはより広範な脂質クラスについて解析を実施している。 平成26年度の実施概要は以下の通りである。解析系の構築では、定量解析と構造解析の測定系を目指している。脂質定量解析では三連四重極型LC-MS/MSを用い、脂質クラスごとに極性基に特徴的なフラグメントイオンと想定される親イオンでMRM解析を網羅的に行い定量する。ホスファチジルイのシートール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、リゾホスファチジルコリンについて測定が可能となった。脂質構造解析ではイオントラップ型LC-MS/MSを用い、定量解析で差があったホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリンのシグナルについて、脂肪酸とリゾ体のフラグメントイオンを測定し構造が決定できるような測定系が構築できた。糖脂質に関しても、市販品を用いてガングリオシド数種の糖鎖解析条件をほぼ確定することができた。リピドミクス解析に関しては、ALDの原因遺伝子ABCD1のノックアウトマウスと正常マウス各4例の脳を用いて、上記各脂質クラスについて定量解析を行った。その結果、約500近くのシグナル中、ノックアウトマウスに特定的に増加しているシグナル数十個と減少しているシグナル十数個を検出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
解析系の構築はリン脂質、リゾリン脂質、糖脂質、アシルCoA、中性脂質を主な対象としている。脂質定量解析については、リン脂質に関しては完了した。それ以外の脂質についても条件検討を進めている。手法としては選択性と感度に優れるMRM解析を網羅的に行うが、その前提として各脂質の脂質構造解析系で得られるフラグメントイオンパターンが必要であり、その中で効率のよいものを選んでMRMを組む必要があるため、構造解析系の確立が必要である。ここでフラグメントイオンパターンの解析を行い構造を推定する。糖脂質やアシルCoA、中性脂質についてはフラグメントイオン取得条件の確定が論文的にも確定していないので詳細に検討しており、上記のようにいくつかについてほぼ確定することができた。これら脂質の定量解析系の構築にはこれらの結果を活用できる見込みである。リン脂質の構造解析については脂肪酸とリゾ体のフラグメントイオンを測定し構造が決定できるような測定系が構築できた。初年度はリン脂質についてはほぼ予定通り完了し、それ以外の脂質についてはやや遅れている。 リピドミクス解析については、患者サンプルに先立ちノックアウトマウスの脳を用いて定量解析を行うことができた。その結果に基づく構造解析を実施中であり、と正常マウス各4例の脳を用いて、上記各脂質クラスについて定量解析を行った。その結果、約500近くのシグナル中、ノックアウトマウスに特定的に増加しているシグナル数十個と減少しているシグナル十数個を検出した。これらのシグナルの分子の構造解析や、患者サンプルの解析は2年度目になるがこれは当初の計画通りである。 ALD発症前診断マーカーの探索に関しては初年度には実施できなかったが、研究期間全般を通して実施するという計画の通りである。 以上より一部が予定より遅れているものの、全般としてはほぼ計画に沿うものである。
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Strategy for Future Research Activity |
解析系の構築では引き続き糖脂質、アシルCoA、中性脂質の構造解析系の構築を進め、その結果を踏まえてMRMを用いた定量系を確立する。また糖脂質、アシルCoAについては生体サンプルからの抽出法とLCでの分離系についても検討していく。 リピドミクス解析については、解析系が確立した脂質について、ノックアウトマウスの各種臓器について解析し、より微量な患者サンプルについても解析する。 診断マーカーに関しては、患者サンプルのうち発症者のものと発症前の患者のもの比較検討することにより、差のあるものについて検討していく。 ターゲット分子のサンプル中での存在様式と代謝系の解析については、リピドミクスの結果より、差がある分子のサンプルである患者血液中での存在状態や、生合成酵素について検討していく。
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Causes of Carryover |
現在までの達成度の欄に記載した通り、各研究項目の遂行に当たって若干の遅れが生じた部分があり、その部分に伴う支出額が下回ることとなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度は計画通りの研究推進を目指しており、実施が遅れた部分の実験を遂行するために予定通りの消耗品等に使用する。
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Research Products
(1 results)