2016 Fiscal Year Research-status Report
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26461556
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
佐久間 啓 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生研究分野, プロジェクトリーダー (50425683)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ミクログリア / 骨髄未分化細胞 / IL-34 / TGFβ / Time-lapse imaging |
Outline of Annual Research Achievements |
マウスの骨髄未分化細胞をアストロサイトと共培養してミクログリアに類似した性質を持つ細胞(以下ミクログリア様細胞)を誘導する実験系を用いて、分化を促進する因子をさらに詳細に解析した。分化過程の骨髄細胞はEdUの取り込みが認められ、分裂増殖していることがわかった。またミクログリア様細胞の誘導はCSF1R阻害剤または中和抗体の投与によりほぼ完全に抑制されることから、CSF1R依存性の変化であることを確認した。ミクログリアの重要な形態学的特徴として、多数の分枝した細長い突起を持ち、これらを活発に伸縮する点が挙げられる。そこで分化誘導したミクログリア様細胞の突起運動をtime-lapse imagingで観察したところ、培養ミクログリアと同様の突起の伸縮運動が認められた。またミクログリア様細胞の分化誘導因子として我々はIL-34の重要性を報告したが、IL-34の存在下で誘導した細胞はCD45やF4/80がミクログリアと比較して高く、抑制性の性質を十分に獲得していないことがわかった。そこで免疫制御性サイトカインであるTGFβに着目した。TGFβは単独ではミクログリアに特徴的な突起を有する細胞を誘導することはできなかったが、IL-34とTGFβの両者を投与することにより、形態学的にも細胞表面マーカーの発現パターンからもミクログリアに類似した細胞を誘導することができた。TGFβは中枢神経系に発現していることから、IL-34と協調的に作用することによりミクログリアの形質獲得に重要な役割を担っていると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は骨髄未分化細胞からのミクログリアの分化誘導に関する研究をさらに進め、IL-34とTGFβの協調的作用という新たな知見を得ることができた。しかしtime-lapse imagingの条件設定に予想以上に時間を要したことから期間内に研究を完遂することができず、このため1年間の研究期間延長を申請した。従って当該年度の研究の進捗状況は予定よりもやや遅れている。本研究で得られた知見はミクログリアそのものの分化および維持機構の解明にも重要な示唆を与えることから、今後は異なる実験系を用いてIL-34とTGFβの作用を検証したいと考えている。これらの成果は現在論文として投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度は延長後の最終年度にあたり、これまで得られた知見を新たなミクログリアの実験系に応用する予定である。我々はマウス混合グリア培養よりミクログリアを除去しても、約3週間の間にミクログリアが再び増加するという現象に注目した。このミクログリア再分布の実験系を用いて発達期の脳におけるミクログリアの動態を解析し、ミクログリアの増加のメカニズムとそれに関わる因子を同定することを試みる。この実験系はこれまでの骨髄未分化細胞を用いた実験系と比べてミクログリア本来の分化・増加の機序をより正しく反映することから、従来の研究方針に若干の変更を加え、新たな実験系を用いた研究へとシフトする。残りの研究期間を考慮するとミクログリア再分布の機序の全容を解明することは困難と予想されるが、進展が見られた場合は今後の研究へ発展的に継続することを考えたい。
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Causes of Carryover |
ミクログリアの発生・分化について調べていく過程で、ミクログリアの増殖をリアルタイムで追跡するためにtime-lapse imaging解析を行う必要が生じた。これらの解析を実施するための予備的検討に想定以上に時間を要したため、期間内に研究目的を達成することが困難となり、1年間の研究期間延長を申請した。このため、次年度の研究に必要な予算が必要となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
Time-lapse imagingをはじめとする新たな実験に必要な物品費ならびに、最終的な研究成果を発表するための学会参加旅費等に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)