2014 Fiscal Year Research-status Report
GATA1およびコヒーシン遺伝子変異による白血病発症の分子機構の解明
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26461559
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
金崎 里香 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60722882)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 白血病 / 転写因子 / コヒーシン |
Outline of Annual Research Achievements |
ダウン症新生児の約10%は、未熟な巨核球が一過性に増殖する血液疾患(TAM)を発症する。そしてその約20%は巨核球性白血病(ML-DS)へ進行する。本研究の目的は、ML-DS発症の分子機構を明らかにすることである。 研究代表者らは、TAMにおける転写因子GATA1s低発現(L)タイプの遺伝子変異がML-DS発症の危険因子であること、ML-DSにおいてはコヒーシン複合体を形成する因子に遺伝子変異が高頻度に存在していることを報告している。そこで、本研究は 1.GATA1sの低発現がどのように白血病化に影響するのか 2.遺伝子変異によるコヒーシン複合体の機能低下とML-DS発症との関連性の検証 の2点に注目して実施している。 1.については、まず、TAM 検体のGATA1s(L)群と(H)群のマイクロアレイにて遺伝子発現プロファイル比較を行なった。Gene Set Enrichment Analysis (GSEA)で有意に変動した遺伝子セットのうち、白血病化に関与する可能性のある候補をピックアップしている。 続いて、白血病化に関与する可能性のあるGATA1sの標的遺伝子を抽出するため、TAM細胞やML-DS由来細胞株のGATA1sのクロマチン免疫沈降-シークエンス(ChIP-seq)を計画していたが、完全長型GATA1の標的遺伝子とも比較する必要性を考慮し、まずはGATA1変異のない巨核球系細胞株でChIP-seqを実施した。次に同細胞株を用い、CRISPR/Casシステムによるゲノム編集で完全長型GATA1に代わってGATA1sのみが発現する細胞株(LタイプおよびHタイプ)を作成したところである。 2.については、コヒーシン遺伝子の発現量をノックダウンするため、CRISPR/Casシステムによるゲノム編集を準備中である。今後は細胞増殖能や遺伝子発現への影響を解析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度に実施予定の実験は主に以下の4点を計画していたが、達成度はChIP-seqとコヒーシンの実験の進行度から、やや遅れていると評価した。 1. GATA1s(L)タイプと(H)タイプのTAM検体での遺伝子発現プロファイリング比較については達成済みである。 2. ML-DS由来細胞株やTAMの細胞でのGATA1sのChIP-seqは、完全長型GATA1の標的遺伝子とも比較する必要性を考慮し、まずはGATA1変異のない巨核球系細胞株でChIP-seqを実施するという計画変更を行なった。ChIP-seqがサンプル調整の条件が結果に多大な影響を及ぼすため、条件の検討に時間と労力を費やした。ようやく本実験に移行したところである。 3.遺伝子発現プロファイリングと ChIP-seq の結果の統合については、 計画変更でTAMの細胞でのGATA1sのChIP-seq を実施していないため、現時点では未達成である。しかし、GATA1変異のない巨核球系細胞株を用いたCRISPR/Casシステムによるゲノム編集で、GATA1sのみが発現する細胞株の実験系を構築したため、この系でChIP-seqとRNA-seqを実施してデータを統合して、それを参照してTAMのサンプルのデータを解析することも有効だと考えている。 4.コヒーシン複合体の機能低下のTAM細胞に及ぼす影響を明らかにするための実験については、今年度がChIP-seq中心の研究になってしまったことから、現在のところは実施できていない状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
1. GATA1sの低発現がどのように白血病化に影響するのかについての研究 GATA1変異のない巨核球系細胞株についてCRISPR/CasシステムによるGATA1遺伝子のゲノム編集を行ない、完全長型GATA1に代わってGATA1sのみが発現する細胞株(LタイプおよびHタイプ)を作成済みである。そこでこれらのGATA1sのChIP-seqとRNA-seqを行ない、完全長GATA1とGATA1sの標的遺伝子の違いを明らかにする。また、GATA1sの量の差に由来する遺伝子発現の変化と白血病化との関連性を明らかにする。GATA1sと相互作用を示す可能性のある因子については、免疫沈降法やtwo-hybrid assay、Proximity ligation assays (PLA) を行ない両者の結合の検出を試みる。 2. 遺伝子変異によるコヒーシン複合体の機能低下とML-DS発症との関連性についての研究 まずは遺伝子変異のない巨核球系細胞株を用いて、コヒーシン複合体を構成する因子の遺伝子にCRISPR/Casシステムによるゲノム編集を行ない、機能低下を引き起こした上で、細胞増殖能への影響を解析する。コヒーシン複合体の機能が低下することでクロマチンのループ形成が減少し、遺伝子発現に変化が生じると予測されるため、RNA-seqで遺伝子発現プロファイリングを行なう。また、GATA1sとの相互作用の有無の検討のため、免疫沈降法やPLAを実施する予定である。
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Causes of Carryover |
平成26年度は、本研究の核であるChIP-seq実験をするにあたって、条件検討に予想以上の時間と労力を費やしたため、ChIPの本実験がまだ半ばである。また、それに伴い、同年度に計画していたコヒーシンに関する実験を始める時間的余裕がなかった。そのため、使用額が計画よりも下回った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度で時間を費やしたChIP-seq実験はすでに軌道に乗っており、本実験をいくつも計画している。また、コヒーシンに関する実験も27年度には開始する予定であり、前年度分の助成金を有効に活用できる見通しである。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] 非ダウン症小児急性巨核芽球性白血病にみとめられた新規GATA1インフレーム変異2014
Author(s)
王汝南, 金崎里香, 土岐力, 照井君典, 佐々木伸也, 工藤耕, 神尾卓哉, 佐藤知彦, 池田史圭, 荒木亮, 落合英俊, 伊藤悦朗
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Journal Title
弘前医学
Volume: 65
Pages: 227-237
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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