2016 Fiscal Year Research-status Report
C型インフルエンザの隔年流行の要因と抗原変異が及ぼす臨床への影響
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26461563
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
松嵜 葉子 山形大学, 医学部, 准教授 (00292417)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | C型インフルエンザウイルス / 抗体保有率 / 抗原変異 / 遺伝子進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の研究で次のような実績を得た。 1.C型インフルエンザウイルスHE蛋白の中和エピトープの同定のため、抗HE 単クローン抗体に対するエスケープ変異株を昨年度までに240個採取している。今年度はこれら240個の変異株のHE遺伝子の塩基配列を決定し、アミノ酸変異箇所の同定を行った。 2.2013-2014シーズンはC型インフルエンザウイルスを21株分離し、2014-2015シーズンは2株が分離されたのみで、偶数年におきる隔年流行を裏付ける結果を得ている。今年度(2015-2016シーズン)は偶数年にあたるが、山形県では32株の分離があり隔年流行を認めた。抗原解析の結果はすべての株がサンパウロ系統株だった。昨年度の報告で、流行の主流が2012年まで主流だったサンパウロ系統から神奈川系統に変わりつつある可能性を指摘したが、それを裏切る結果となった。 3.隔年流行と抗体保有率の関連を明らかにする目的で実施している山形県住民のC型インフルエンザウイルスに対する抗体保有調査を今年度も実施した。昨年度の結果と比較して全体に抗体保有率の低下が認められ、2015年のC型インフルエンザウイルスの活動が低下していた事を血清学的にも裏付ける結果だった。 4.A型やB型インフルエンザウイルスに比べて流行の規模の小さい理由として抗原変異の起こりにくさ、すなわち遺伝子の進化の遅さが示唆されている。今年度は1947年から2014年までに国内外で分離された102株のC型インフルエンザウイルスの遺伝子の解析を実施し、その進化を比較した。その結果、表面蛋白をコードするHE遺伝子の進化速度は5.2×10-4 であり、A型インフルエンザウイルスのHA遺伝子の進化速度の1/8から1/11、B型インフルエンザウイルスのHA遺伝子の進化速度の1/4である事が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた研究計画について、実績概要で記したような成果を出すことができた。C型インフルエンザウイルスの流行が隔年で起きる理由として、当初予定していなかった遺伝子進化の面からの解析を加えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
採取した240個の中和抵抗性変異株のアミノ酸変異箇所の同定が終了したことから、それらの中和エピトープの位置付けをHE蛋白の3次構造上で示す予定である。また、これらの抗原変異株と親株を用いて、8種類の単クローン抗体との抗原抗体反応を実施し、HE蛋白の抗原地図の作製を行う。山形県住民の抗体保有調査も引き続き実施する予定である。
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Causes of Carryover |
予定よりも物品の購入を抑えたため、繰越額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度実施予定の研究の試薬消耗品費として使用する予定である。
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Research Products
(3 results)