2014 Fiscal Year Research-status Report
若年性特発性関節炎における新規バイオマーカーとしてのmiRNAの同定
Project/Area Number |
26461578
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
川田 潤一 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (20532831)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 嘉規 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (20373491)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 若年性特発性関節炎 / マイクロRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
タンパクをコードしていないnon coding RNAの一種であるマイクロRNA (miRNA)は、生体内の様々な遺伝子発現を調節することで、生命体の恒常性維持に密接に関与している。一方で、miRNAによる調節機能の破綻は様々な疾患に帰結し、腫瘍や関節リウマチなどの自己免疫性疾患にもmiRNAが関与していることが明らかになりつつある。miRNAは血清などの体液中でも安定して存在するという特徴があり、様々な疾患において、新規の疾患バイオマーカーとしての有用性が示されている。 若年性特発性関節炎 (juvenile idiopathic arthritis; JIA) は、小児リウマチ性疾患の中では、最も高頻度な疾患である。サイトカインシグナルを遮断する生物学的製剤の導入により、その予後は改善を認めている。その一方で、難治性の経過をたどる例も稀ではなく、早期診断や、疾患活動性を適切に評価した上での、積極的な治療介入が求められる。JIAに疾患特異的なmiRNAや、疾患活動性を反映するmiRNAの同定により、病態の解明や、診断および治療に有用な新規バイオマーカーとして応用が期待される。 本研究では、JIA患者の血清および、血球を用いて、成人のリウマチ性疾患で発現の亢進が報告されているmiRNAを中心にreal-time PCRによる定量を行った。現在までのところ、miR-146aや、miR-223の発現が、全身型JIAで有意発現が亢進していることを見出した。 一方で、少関節型JIAは、成人の関節リウマチに類似した疾患と考えられているが、関節リウマチで発現の亢進が報告されているmiR-155は、少関節型JIA患者において発現の亢進は認めなかった。これらのことは、JIAの病態を考える上で興味深い知見であり、今後も検討を進めていく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、JIA患者の血清および、血球を用いて、成人のリウマチ性疾患で発現の亢進が報告されているmiRNAを中心に、real-time PCRによる定量系の確立を試みた。患者より採取した血清および血球からmiRNeasy Kitを用いてmiRNAを抽出した。TaqMan MicroRNA Reverse Transcription Kitを用い、cDNAを合成するとともに、目的とするマイクロRNAおよび、コントロールのためにスパイクしたelegans miR-39のリアルタイムPCRを行った。elegans miR-39のCT値と比較することで、目的とするmiRNAの相対定量を試みたところ、健常人を含むほぼすべての血清および血球検体でマイクロRNAの定量が可能であった。 全身型JIA 8例、多関節型JIA 16例、少関節型JIA 5例、健常小児 5例から採取した血清中のマイクロRNAの定量を行った。また、一部の患者では血球のマイクロRNAも定量した。さらに、各疾患群では、急性期と回復期の検体でマイクロRNAを測定することで、疾患活動性に伴う変化を確認した。 本年度に測定したマイクロRNAの中では、血清中のmiR-146aや、miR-223の発現が、全身型JIAで有意に亢進していた。一方で、これらのマイクロRNAの血球での発現亢進は確認されなかった。血清よりも検体数が少ないため、今後も症例を蓄積していく。 一方で、少関節型JIAは、成人の関節リウマチに類似した疾患と考えられているが、関節リウマチでの発現の亢進が報告されているmiR-155は、少関節型JIA患者において発現の亢進は認めなかった。これらのことは、JIAの病態を考える上で興味深い知見であり、今後も検討を進めていく予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度の行った検討から、小児の患者血清を用いてマイクロRNAの定量が可能であるとが示された。これまでは主に成人のリウマチ性疾患で関連が報告されているマイクロRNAを中心に測定を行ったが、次年度以降は測定するマイクロRNAをさらに増やしていく予定である。また、可能であればマイクロRNAアレイや、次世代シーケンサー等を用いた網羅的な解析を行う予定である。 マイクロRNAの疾患バイオマーカーとしての有用性を検討するために、発現が亢進もしくは低下していたマイクロRNAとJIAの疾患活動性の関連や、日常診療で用いられる指標である血沈やMMP-3等との関連を検討する予定である。さらには疾患の予後や治療反応性とマイクロRNAの発現との関連についても解析を行う予定である。一方で、JIAの病態と深く関与していると考えられている各種サイトカイン(IL-6、IL-18、TNF-αなど)の血清中の値と、miRNAとの関連についても解析することで、近年臨床応用されている生物学的製剤の治療効果予測の可能性についても検討したい。また、マイクロRNAの標的遺伝子と関連しているタンパク質の発現を、患者白血球より抽出したタンパク分画を用いたウエスタンブロッティング法や、患者血清を用いたELISA法により評価することも計画している。 JIAに特異的に発現しているマイクロRNAが同定された場合には、機能解析を行う予定である。滑膜細胞株や、マクロファージ細胞株などに、目的とするマイクロRNAをLipofectamine等で遺伝子導入し、細胞株でのマイクロRNAの標的遺伝子やタンパク質の発現の変化を、リアルタイムPCR法、ウエスタンブロティング法により解析することを計画している。
|
Research Products
(10 results)