2014 Fiscal Year Research-status Report
APC及びPSによる第VIII因子制御機構の解明及び新規血友病A治療薬の開発
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26461592
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
武山 雅博 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (30572010)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野上 恵嗣 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (50326328)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 第VIII因子 / プロテインS / 血液凝固 / 活性型プロテインC / 抗凝固 |
Outline of Annual Research Achievements |
血液凝固第VIII因子(FVIII)は、血液凝固反応において必須の糖蛋白であり、この欠乏により血友病Aを引き起こす。最近血栓症患者においてFVIIIが高値であることが証明され、FVIIIが出血傾向だけではなく血栓形成にも関与することが注目されている。よってFVIIIは出血と血栓の相反する病態において極めて重要な因子であるといえる。しかし、FVIIIを中心とする凝固血栓形成や制御機序は未だ不明な点が多い。凝固制御機構として、抗凝固因子である活性型プロテインC(APC)は、その補因子であるプロテインS(PS)とともに、FVIIIaや活性型第V因子を不活化し凝固を負に制御する。これまでの研究でPSがそれ単独でFVIIIとFIXaの結合を競合阻害し、抗凝固作用を発揮することを発見した。さらにPSのFVIII結合部位は重鎖A2ドメインであることも明らかにしたが、今回PSのFVIII上結合部位が軽鎖にもあることをELISAを用いた検討で発見した。さらに、PSとFVIII軽鎖の結合は、FVIII軽鎖濃度依存性に阻害され、PSとFVIII軽鎖の結合は特異的な結合であることを確認した。現在PSのFVIII軽鎖結合部位の同定を進めている。以前、PSのFVIII重鎖結合部位はFIXaの結合部位とover lapすることを示したが、FVIII軽鎖上のPS結合部位も同様にFIXaとover lapする可能性が高いと考えられる。そのため、FVIII軽鎖上のFIXa結合部位であるアミノ酸残基1800-1818の配列をもとに、合成ペプチドを作成した。EDC cross-linkerを用いることで、FXとビオチン化ペプチド(1800-1818)の直接的な結合を確認した。今後さらにPSのFVIII軽鎖上結合部位を詳細に検討することで、新たな凝固制御メカニズムの解明を進めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は4つの課題① FVIII重鎖上のAPC結合部位の同定。② FVIII軽鎖上のPS結合部位の同定。 ③ C4bp存在下でのPSのFVIIIに対する作用の検討。④ APCおよびC4bp存在下でのPSのFVIIIへの作用の検討を想定していた。②について、実験条件の検討や実験装置の故障などもあり時間がかかっており、①について研究時間が十分でなく達成することができていない。また、③④については、予想していた結果とは反対の結果がでたため、現在その原因について検討を行っている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
FVIIIは血液凝固だけでなく、抗凝固因子であるAPCやPSとも直接密接に関連し、血液凝固制御に非常に重要な因子であり、課題②については引き続き研究をつづけ、十分に行えなかった課題①についても、できるだけ早く取り組んでいきたい。FVIIIとC4bp, PS, APCの関連についても、実験条件等をふくめて検討をおこない、研究を進めていきたい。 また、最近後天性血友病患者のインヒビター解析から、FVIII上の凝固第X(a)因子(FX)の新規結合部位の同定をすすめている。FVIIIのFX結合部位はAPCとover lapしている可能性が有り、FVIIIを中心とした凝固・抗凝固メカニズムの解明がさらに進む可能性があると考えられ、引き続き研究を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは、上述したとおり、当初の4つの課題のうち特に①を十分に進めることができなかったためである。①についてはできるだけ早く研究を進めるとともに、②についても引き続き積極的に行っていく予定であり、元来次年度の予定にあげていた研究費に当該研究費をあわせて実験、研究を行っていく所存である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
①純化FVIII,PS, APCなどの蛋白の購入 ②蛋白結合実験(Biacore)に用いるセンサーチップ ③変異FVIII作成のためのprimer作成費用、各種細胞培養液、コンピテント細胞 ③ELISA, western blotting用の各種抗体や試薬 以上の消耗品の購入に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)