2014 Fiscal Year Research-status Report
小児胆汁うっ滞性疾患における胆汁酸/糖・脂質代謝制御機構破綻のメカニズムの検討
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26461608
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
近藤 宏樹 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 招へい教員 (10373515)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
別所 一彦 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80423169)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 胆汁鬱滞 / FGF19 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、ヒト慢性胆汁うっ滞患者の摘出肝において肝細胞内のCYP7A1 mRNA発現が胆汁酸高値でありながら脱抑制されていることを見出し、ヒト摘出肝および胆汁うっ滞モデルマウスを用いて慢性胆汁うっ滞状況下における胆汁制御機構破綻のメカニズムを探索を開始した。摘出肝は肝硬変のため線維化領域が多いため、より肝細胞を選択的に解析するためマイクロダイセクション法をもちいて肝小葉を切り出し、抽出したRNAを用いてcDNAを合成、解析に供した。まず、他の胆汁酸合成律速酵素CYP8B1 mRNA発現を見たところ、CYP7A1と同様に発現は高値を示した。 次に胆汁酸に反応してCYP7A1の発現を負に制御する核内転写因子FXRやSHPの発現解析を行った。その結果、高胆汁酸血症に一致してFXR、SHPともmRNA発現は胆汁鬱滞群の方が対照群と比較して有意に増加しており、従来の報告通り、胆汁酸増加に反応していることが分かった。逆にCYP7A1の発現を正に制御する核内転写因子LRH-1とHNF4αのmRNA発現は、同様に胆汁鬱滞群の方が対照群と比較して有意に増加していた。つまり何らかの原因でCYP7A1やCYP8B1の発現が、FXR/SHP経路から免れていることが示唆された。 我々は血清および肝組織中FGF19は高値であり、FGF19の受容体であるFGFR4 mRNAおよびKLB mRNAは発現が亢進し、FGFR4は活性化されているにも関わらずそのシグナル伝達経路の下流である、ERK、JNKのリン酸化は抑制されていたことを報告しており、その他のFGF19/FGFR4/KLB経路の関連分子についてさらに検討を行った結果、内因性ERKインヒビターであるSPRY2のmRNA発現において、胆汁鬱滞群の方が対照群と比較して有意に増加していることが判明した。このメカニズムについて今後、さらなる検討を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は、ヒトの慢性胆汁鬱滞疾患患者において高胆汁酸血症にもかかわらず胆汁酸合成律速酵素CYP7A1の発現が抑制されていないことを報告し、その異常な制御メカニズムを説明する現象の一つとしてFGF19/FGFR4/KLB経路の関連分子である内因性ERKインヒビター・SPRY2の発現が胆汁鬱滞群の方が対照群と比較して有意に増加していることを見出した。この発見は新規であり大きな成果と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
FGF19/FGFR4/KLB経路の関連分子である内因性ERKインヒビター・SPRY2の発現が胆汁鬱滞群の方が対照群と比較して有意に増加していることを新規に見出したことからこの現象をmRNAレベルとタンパクレベルで詳細に解析し、早期に実験結果をまとめ、論文作成を行うことを目指す。
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