2014 Fiscal Year Research-status Report
半月体形成性腎炎における(プロ)レニン受容体を介した病態機序の解明と新規治療法
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26461612
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
漆原 真樹 徳島大学, 大学病院, 講師 (50403689)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
香美 祥二 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (00224337)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アンジオテンシン / 半月体形成性腎炎 / レニン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目標は従来のレニン・アンジオテンシン系(renin-angiotensin system: RAS)阻害薬にはない直接レニン阻害薬(direct renin inhibitor: DRI)の腎炎進展抑制作用を解明し、新たな治療法の開発につなげることである。そのために以下のことを明らかにする。RASは全身の血圧および水分調節の最も重要な制御機構の一つである。その一方で、腎臓内でのRASの活性化は糸球体内圧の上昇、糸球体細胞の過形成、細胞外基質の蓄積を誘導し腎障害の進展に深く関与することが明らかとなっている。そのため、RAS阻害薬であるアンジオテンシン変換酵素阻害薬やアンジオテンシンⅡタイプ1受容体拮抗薬は腎障害進展の抑制を目的として臨床の現場で広く用いられている。しかし、近年になって最も新しく開発されたRAS阻害薬であるDRIの腎障害、とりわけ腎炎進展抑制効果はまだ十分解明されていない。当該年度はラットに抗基底膜抗体を投与することにより半月体形成性腎炎モデルを作成しDRIを投与する実験を行い、腎炎の抑制効果の評価を行った。その結果、DRIを投与した腎炎ラットは無治療群に対して糸球体半月体の形成率の抑制と蛋白尿の低下がみられた。また、DRI投与により組織における炎症マーカーであるMCP-1や腎炎進展および線維化の重要な因子であるTGF-betaも低下し、さらに1型コラーゲンの発現も低下していた。DRIは腎炎の進展を炎症、線維化といった病態においても抑制しうる可能性があることが判明した。本研究では(プロ)レニン受容体に着目し、腎炎の病態におけるその役割を解明する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究目標はラット形成性腎炎モデルの作成と直接レニン阻害薬(DRI)の腎炎抑制効果の評価、および腎炎進展因子と(プロ)レニン受容体などのレニン・アンジオテンシン系構成因子の発現変化の検討である。まず、抗基底膜抗体を投与することにより糸球体半月体を形成する進行性の腎炎をラットに惹起した。さらにDRIを投与した腎炎ラットは無治療群と比較して糸球体半月体の形成率の抑制と蛋白尿の低下がみられ、DRIの治療効果が確認できた。また、DRI投与により組織における炎症マーカーであるMCP-1や腎線維化の重要な因子であるTGF-betaも低下し、さらに1型コラーゲンの発現も低下していた。そして、(プロ)レニン受容体の発現も低下していることも判明した。このように当該年度は本研究の初年度であり、研究計画においても腎炎モデルの作成とDRIの治療効果、および病態に関与する種々の因子の確認が出てきおり本研究を進めていく基礎データが出来つつあると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこの直接レニン阻害薬(DRI)を投与した半月体形成性腎炎モデルにおけるレニン・アンジオテンシン系(RAS)の構成因子や腎炎進展因子のさらなる解析を進めていく。そして、ラットの腎臓から糸球体半月体の構成細胞であるボウマン嚢上皮を単離培養し、腎炎の関与するサイトカインなどの刺激によってどのような因子の発現が上昇し、DRIによって抑制されるのかを検討する。その際に、細胞内シグナル経路の解明も行い、それが腎炎モデル内でも再現されているかを評価する。最終的には糸球体半月体を形成したヒト腎炎組織においても免疫染色等でこれらの因子が発現しているかを検討し、臨床応用が可能かどうかを探求する。
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