2014 Fiscal Year Research-status Report
肺動脈性高血圧症の進展を抑制する細胞内カルシウムシグナルの解明
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26461619
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
内田 敬子 慶應義塾大学, 医学部, 共同研究員 (50286522)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 肺高血圧症 / カルシウムシグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
①2型イノシトール三リン酸受容体(IP3R2)の肺動脈における発現様式の解析 肺の発生段階にそって、胎生期から成獣までのIP3R2の発現を観察した。IP3R2のLacZ遺伝子ノックインマウスを用いて、X-gal染色を全胎仔および組織切片で実施することで、発現様式を詳細に観察しえた。また、中膜及び内膜マーカーであるα-smooth muscle actin、およびCD31に対する抗体を用いた免疫組織化学法を同時に行った。その結果、肺動脈の発生の初期から成熟期のすべてにおいて、気道に併走した肺動脈第1分岐から末梢肺動脈まで、α-smooth muscle actin陽性である中膜に発現していることがわかった。一方、やはりα-smooth muscle actin陽性である気道平滑筋にはIP3R2の発現は見られなかった。つまり、IP3R2は平滑筋の中でも肺動脈平滑筋に特異的なマーカー分子になり得る可能性が示唆された。 ②低酸素曝露による肺高血圧モデルのIP3R2ノックアウトマウスと野生型マウスとの比較 10%酸素の低酸素下で8週間飼育すると再現性よく肺高血圧を作製できた。低酸素曝露のノックアウトマウスにおいて、野生型に比較して心エコー検査で肺高血圧所見の増悪が観察された。さらに、体重あたりの右心室重量が増加し右室肥大が認められた。またノックアウトマウスの肺組織切片では、肺動脈中膜肥厚の増悪と肺動脈平滑筋細胞におけるアポトーシスの抑制が観察された。したがって、ノックアウトマウスにおける肺高血圧症の増悪は、肺動脈平滑筋のアポトーシス抵抗性の増強によることが示唆された。なお、予備実験で認められたノックアウトマウスの肺組織におけるcGMPの増加は再現性が得られず、今後解析を行わないこととした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回IP3R2の発現を確認する方法として用いたLacZの活性部位が、内在性IP3R2タンパクの発現と一致しているか、IP3R2に対する抗体を用いた免疫組織化学法で確認する予定であったが、発現量が比較的高くなく増強が必要と予想されたため、未実施である。その他は予定した発現解析と肺高血圧モデルマウスのin vivo解析は実施できた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に実施したin vivo解析で得られたIP3R2ノックアウトマウスにおける肺高血圧症の増悪所見のメカニズムを解明するために、平成27年度は器官レベル、細胞レベル、分子レベルの解析を予定している。特に、IP3R2は細胞内カルシウム制御分子の一つであるため、肺動脈平滑筋細胞の初代培養細胞を用いた蛍光指示薬によるカルシウムイメージングの実験条件の検討に十分な時間を費やす予定である。また、同時に、ノックアウトマウスにおけるカルシウム関連分子の発現変化をqPCRやウエスタンブロットで観察する予定である。
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Research Products
(4 results)