2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26461634
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
福井 義浩 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (50144168)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂田 ひろみ 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 講師 (50294666)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 抗てんかん薬 / バルプロ酸 / 脊髄神経 / ホールマウント免疫染色 / 発達障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、妊娠中の抗てんかん薬服用に起因する胎児の発達障害を予防するための知見を得ることを目的としている。平成26年度は、埋め込み式infusion pumpを用いたバルプロ酸(VPA)投与法でてんかん治療域レベル(50~100μg/ml)の血中濃度を保つための投与条件の検討、および胎生期VPA曝露に起因した脊髄神経形成異常について、投与量や投与時期による発生率の変動を検討した。 非妊娠SDラットの背部皮下に小型infusion pump(iPRECIO, プライムテック)を留置し、種々の濃度や流速でVPA投与を行い、血中VPA濃度を測定した。その結果、濃度500 mg/ml, 流速20μl/hの投与は、投与後1~24hの血中VPA濃度が63.3~88.0μg/mlとなり、安定的に治療域VPA濃度を保つために適当であると考えられた。 また、VAP投与時期による脊髄神経形成異常の出現頻度等の変化を検討するため、ICRマウスのGD 6, 7, 8, 又は9にVPA (400 mg/kg)を皮下投与した。GD10で胎仔を採取し、抗neurofilament抗体を用いたwhole-mount免疫染色を行い脊髄神経の走行を観察した。VPA曝露胎仔では、神経束の消失、隣接する分節との合流や分節の二分化などの分節性走行の乱れが認められた。これらの脊髄神経形成異常の発生頻度はGD8に投与した群で最も高かった(36.8%)。次に、VAP投与量による脊髄神経形成異常の出現頻度等の変化を検討するため、前述の検討で脊髄神経異常の頻度が最も高かったGD8に、200, 400, 又は700 mg/kgのVPAを皮下投与し、同様に胚仔の脊髄神経を観察した。その結果、脊髄神経束の消失や隣接する分節への合流などの主要な脊髄神経形成異常は、VAP投与量に依存して発生頻度が変化した。分節の二分化など比較的発生頻度が低い形成異常は投与量の影響を受けなかった。以上より、胎生期VPA曝露による脊髄神経形成異常の発生頻度は、VPAの曝露時期や曝露量の影響を受けることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は実験計画書に従って、まず、埋込式小型infusion pumpを用いて、ラットの血中バルプロ酸濃度をヒト治療域である50~100μg/mlの範囲内に保投与条件について検討し、至適条件を見いだす事に成功した。次のステップとしては、infusion pumpを留置した雌ラットを交配させてバルプロ投与を行い、その仔を用いた解析を行うことであるが、妊娠日に合わせてバルプロ酸投与にはpumpを留置した後でも投与条件のプログラム変更が可能な新型のinfusion pumpの使用が必要となる。本年度の予算でこのpumpとマネージメントシステムを購入したが、初期不良のため本年度前半は使用することができなかった。現在は既にアプデートが完了しており、妊娠動物への投与実験についての計画を進めているところである。平成26年度に計画していた胎生期バルプロ酸曝露による脊髄神経異常の閾値と臨界期の検討は、従来通りの皮下投与による検討で進めており、脊髄神経異常の発生率が妊娠8日目の投与で最大になること、また脊髄神経異常の発生率は投与量依存的に増加することなどを明らかにした。 また、平成27年度の実験計画として予定していた、脊髄神経異常に対しての葉酸の予防効果、および脊髄神経異常のメカニズムを解明するための各種遺伝子発現の解析にも既に取り組んでおり、pumpの初期不良はあったものの、実験計画は大幅な遅れがなく進められていると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、新型の埋込式小型infusion pumpで妊娠中のラットの血中バルプロ酸濃度をヒト治療域である50~100μg/mlの範囲内に保ち、仔に脊髄神経形成異常を初めとした形態異常が生じるか否かを検討する予定である。また、胎仔だけではなく、出生後の仔を用いた形態的および機能的障害の有無についても観察する予定である。また、平成26年度からすでに取り組みを始めた、脊髄神経形成異常のメカニズムを解明するための遺伝子発現の解析や葉酸の予防効果についての解析を更に進める事で、バルプロ酸による脊髄神経形成異常の病態についてさらに明らかにしていきたい。
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Causes of Carryover |
平成27年3月納品となり、支払いが完了していないため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年4月に支払い完了予定である。
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