2015 Fiscal Year Research-status Report
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26461634
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
福井 義浩 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 教授 (50144168)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂田 ひろみ 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 准教授 (50294666)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 抗てんかん薬 / バルプロ酸 / 脊髄神経 / 発達障害 / 神経管閉鎖不全 / 葉酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、主に胎生期バルプロ酸曝露によって生じる脊髄神経形成障害について、その感受期、閾値、分子基盤について明らかにし、さらに多剤曝露の影響や葉酸の効果についても評価することで、抗てんかん薬の発生毒性をこれまでとは異なる見地から再評価することを目的としている。平成26年度に胎生期バルプロ酸(VPA)曝露マウスで生じる脊髄神経の形成障害において、VPA投与の量または時期の違いによる脊髄神経形成異常の有病率の変化を検討した。平成27年度は、胎生期VPA曝露による脊髄神経形成異常に対する葉酸(FA)の効果を検討し、神経管閉鎖不全(NTDs)に対する効果と比較した。その結果、VPA+FA(3mg/kg)群ではこれまでの報告と同様にNTDsの発生率は有意に低下したが、脊髄神経異常の発生率に有意な差は、認められなかった。また、本研究では葉酸の溶媒をDWからPBSに替えることで、葉酸の吸収効率が高まることを確認した。そこで同様量の葉酸をPBSを溶媒として投与し、VPAによるNTDs及び脊髄神経形成異常に対する効果を検討したところ、NTDsの発現が有意に上昇した。よってVPAが引き起こすNTDsやせき髄神経形成異常に対しての葉酸の予防効果は、母体の血中葉酸濃度によって異なる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、当初の研究計画書に基づき平成26年度には胎生期バルプロ酸(VPA)曝露マウスで生じる脊髄神経の形成障害において、VPA投与の量または時期の違いによる脊髄神経形成異常の有病率の変化を検討した。平成27年度は、胎生期VPA曝露による脊髄神経形成異常に対する葉酸(FA)の効果を検討し、神経管閉鎖不全(NTDs)に対する効果と比較した。その結果、VPA+FA(3mg/kg)群ではこれまでの報告と同様にNTDsの発生率は有意に低下したが、脊髄神経異常の発生率に有意な差は認められなかった。また、本研究では葉酸の溶媒をDWからPBSに替えることで、葉酸の吸収効率が高まり、同量の葉酸を投与しても母獣の血中葉酸濃度が上昇することを確認した。そこで同量の葉酸をPBSを溶媒として投与し、VPAによる脊髄神経形成異常及びNTDsに対する効果を検討したところ、脊髄神経形成異常の有病率は変化しなかったが、NTDsの有病率が有意に上昇した。また、DWに溶解した葉酸を二倍量(6mg/kg)投与することで母獣の血中葉酸濃度を上昇させると、脊髄神経形成異常がやや増加傾向を示した。以上より、母体の血中葉酸濃度によってVPAが引き起こす脊髄神経形成異常やNTDsに対する葉酸の効果が異なる可能性が示唆された。これらの研究は当初の実施計画に基づいて行われており、よって本研究は概ね計画通りに進められていると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、胎生期VPA曝露によって引き起こされる脊髄神経形成異常の機序を明らかにするために、VPA曝露マウスからRNAを抽出し、定量的RT-PCRやDNAマイクロアレイなどで各種遺伝子発現の解析を継続して行う。また、脊髄神経形成異常が体節の形成異常に基づくことが予想されることより、ホールマウントin situ ハイブリダイゼーションにより体節形成過程に発現する体節関連遺伝子群の局在についても観察する。また、これまで本研究により明らかになった脊髄神経発生異常の閾値に近いVPA量の投与とフェニトインなど他の抗てんかん薬の投与を同時に行い、多剤投与によりVPAによる脊髄神経発生異常の閾値が変化するか否かを検討する。これまでに得られた本研究の成果は本年度7月に国際学会(the 10th FENS Forum of Neuroscience)で発表する予定である。さらに現在、本研究での成果を国際学術専門誌に投稿する準備を進めており、本年度中の掲載を目指して取り組んでいく予定である。
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Causes of Carryover |
平成28年度3月納品となり、支払いが完了していないため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年4月に支払い完了予定である。
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