2015 Fiscal Year Research-status Report
動脈管収縮制御におけるATP感受性カリウムチャネルの役割に関する包括的研究
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26461648
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
石井 徹子 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (00360157)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
羽山 恵美子 東京女子医科大学, 医学部, 非常勤講師 (00349698)
中西 敏雄 東京女子医科大学, 医学部, 研究生 (90120013)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 動脈管 / KATPチャネル |
Outline of Annual Research Achievements |
グリベンクラミドの胎生期動脈管収縮作用につき、つぎの実験結果を得た。実験はラット妊娠満期に麻酔下開腹下で腹腔内注射で投与し、1-8時間に全身急速凍結法で動脈管内径を計測した。 グリベンクラミドは腹腔内注射後1時間で投与量依存性に動脈管を収縮した。収縮は臨床量(0.1乃至1mglkg)では軽度で10-20%であり、投与量を増やすと、10mg/kgで50%, 100mg/kgで95%の収縮を生じた。この収縮は8時間後もやや軽快したが、持続した。この実験によりグリベンクラミドには糖尿病の臨床で用いるグリベンクラミド臨床量の100倍の量で胎生期の動脈管がほぼ閉じることが示された。ラットの妊娠期間は21.5日で14日迄が胚芽期、15日以後の6日が胎生期である。妊娠19日のラット胎仔は体重が満期の40%でかなり未熟である。19日ラット胎仔で満期胎仔と同じようにグリベンクラミド動脈管収縮を調べると、未熟仔でも投与量依存性に動脈管は収縮したが、成熟仔に比べて未熟仔の動脈管収縮はかるく、おなじ収縮を生じるのに5倍量を要した。 臨床では未熟児動脈管開存症の治療にインドメサシンが用いられている。実験でもインドメサシンとグリベンクラミドの併用効果をしらべた。インドメサシン10mg/kgでラット胎仔動脈管は65%まで収縮し、これにグリベンクラミド1mg/kgを追加すると動脈管は95%迄収縮した。 以上の実験によりグリベンクラミド大量投与の胎生期動脈管収縮作用があきらかになった。その動脈管収縮作用はインドメサシンと相加性であり未熟仔でやや軽度であった。 分子生物学的検討では、下行大動脈や主肺動脈と比較して、胎仔動脈管におけるKCNJ8 (Kir6.1)およびABCC9 (SUR2) 転写物の高発現を確認した。動脈管において転写されるバリアントの区別は定量PCR法では判別できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
薬理学的研究はKATPチャネルの阻害効果をもつスルホニル尿素薬について詳細に検討した。ラット胎仔動脈管における収縮作用との関係を定量的に把握するに到った。まだ実験項目を残しているが、論文化にむけて準備中である。 分子生物学的研究では、満期胎仔動脈管におけるKATPチャネルの高発現を定量PCR法により確認できたことから、そのバリアントを確定するため、満期胎仔動脈管mRNAを材料として、クローニング実験を進めていた。しかし、Kir6.1 CDS塩基配列のおよそ1.3 kbpに比べ、ABCC9 CDSはおよそ4.7 kbpと長大であることから、難航していた。最近、逆転写酵素を変更、かつ1トランスクリプトを分割してクローニングする方法の採用によりクローニングに目途がついた。これらの状況から本年度の研究の目的はおおむね順調に進展したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、種差の存在を考慮して、ラットに加えて家兎の動脈管についても検討していく予定である。分子生物学的研究では、満期動脈管に発現するKATPチャネル(Kir6.1とSUR2)のトランスクリプトの同定と定量を実施できるようにクローニングと塩基配列の確定を進める。 薬理学的検討では、KATPチャネル阻害剤の動脈管収縮・弛緩の影響を詳細に検討し、学会発表と論文化に進む。
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