2015 Fiscal Year Research-status Report
ヒト表皮多層化に伴う細胞動態とアクチン繊維動態の全系譜解析
Project/Area Number |
26461660
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
難波 大輔 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (10380255)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 表皮角化細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々の体を被う皮膚の最も表面に位置する表皮組織は、バリアとして機能している。表皮は細胞を重層化させることで、この機能を担っている。表皮は、体表面から順に、角層、顆粒層、有棘層、基底層から構成され、バリア機能は、角層の存在する細胞間脂質と顆粒層に存在するタイトジャンクションが担っている。しかしながら、これらの層が形成されるには、角化細胞が、基底層から有棘層、顆粒層、角層へと分化しつつ、移動することが必須である。この表皮角化細胞の重層化プロセスは、表皮のバリア機能形成を理解する上で最も重要でありながら、未だにその機構は明らかでない。そこで、本研究では、細胞動態解析を中心にヒト表皮組織の多層化機構の解明を目指す。
本研究では、主要な細胞骨格の一つであるアクチン骨格系の多層化への関与に注目しており、昨年度は、生細胞内で、アクチン線維の特異的に結合する蛍光プローブ"Lifeact-Venus"をレンチウイルスを用いて、培養ヒト表皮角化細胞へ導入する系を立ち上げた。本年度は、このシステムを活用し、角化細胞の遊走や多層化プロセスにおけるアクチン線維の3次元タイムラプス観察を行った。その結果、角化細胞の遊走能力と強い相関の見られるアクチン骨格が形成する細胞内構造体を見出すことに成功した。また細胞分裂後の細胞動態に2つのモードがあることを見出し、一方のモードが角化細胞の多層化に密接に関わる実験結果を得た。さらに、これらの観察結果を取り入れた角化細胞コロニー増殖モデルを作製し、シミュレーション実験を行った結果、細胞遊走能と分裂後のモード変化が、多層化に重要であることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、アクチン線維可視化プローブの作製と角化細胞への導入に成功したが、本年度はそれらを活用して、角化細胞の遊走や多層化プロセスにおけるアクチン線維動態を明らかにすることができた。また、これらを組み入れた数理モデルの構築にも成功しており、実験と理論の両面から、表皮の多層化機構について研究が大きく進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの実験と理論の研究から、予想される多層化機構について、より詳細に明らかにするため、低分子化合物によるタンパク質活性制御や遺伝子発現制御などを行い、実際に多層化プロセスが変化するかどうかを明らかにする。
|
Causes of Carryover |
昨年度末に愛媛大学から東京医科歯科大学への異動に伴い、細胞培養系を一旦全て終了する必要があった。また、東京医科歯科大学での培養系の立ち上げにも日数を要し、予定よりも細胞培養実験を行うことが出来なかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度に十分行うことが出来なかった細胞培養実験に使用する予定である。
|
Research Products
(8 results)