2014 Fiscal Year Research-status Report
癌抑制遺伝子INPP4Bの欠失を基盤とするメラノーマ発生・進展の分子機構
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26461679
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
真鍋 求 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30138309)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | INPP4B / PI3K / メラノーマ / 癌抑制遺伝子 / 遺伝子改変マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
INPP4BはPI(3,4)P2のイノシトール環水酸基を脱リン酸化しPI(3)P2へ変換する作用を持つイノシトールリン脂質代謝酵素である。PI(3,4)P2がPI(3,4,5)P3と類似の機能を持つことより、INPP4Bは癌抑制遺伝子産物として機能しているものと推定され、最近注目を集めている。そこで、本研究課題では、メラノーマ発生・進展におけるINPP4Bの生物学的役割を解明するため、メラノサイト特異的にInpp4bを欠失した遺伝子改変マウスを用いて、細胞増殖能、アポトーシス抵抗性、各種シグナル伝達分子の相互作用などを解析するとともに、腫瘍の発生頻度や選択的阻害による転移能の抑制効果を検討する。 この課題を達成するため、まずDct-CreマウスとInpp4b-flox/floxマウスないしPten-flox/floxマウスを交配して、色素細胞特異的Inpp4bホモ欠損マウス、Ptenホモ欠損マウス、Inpp4bホモ・Ptenホモ欠損マウス作成した。さらに、これらのマウスを用いて、化学発癌処理により色素細胞由来の悪性腫瘍であるメラノーマの発生率を解析した。その結果、これらのマウスでは、色素細胞由来の良性腫瘍である色素細胞母斑は発生したものの、メラノーマへ進展することは無いことが判明した。そのため、これらのマウスを用いた本研究戦略を断念し、あらたにTamoxifen誘導型Tyr-Cre:Braf変異+Pten欠損マウスを用いて、今後の研究を遂行することにした。すでにJackson Laboratoryにマウスを発注したので、Inpp4b-flox/floxマウスないしPten-flox/floxマウスと交配して、Tamoxifen誘導型Inpp4bホモ欠損マウス、Ptenホモ欠損マウス、Inpp4bホモ・Ptenホモ欠損マウス作成する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Dct-CreマウスとInpp4b-flox/floxマウスPten-flox/floxマウスを交配して、色素細胞特異的Inpp4bホモ欠損マウス、Ptenホモ欠損マウス、Inpp4bホモ・Ptenホモ欠損マウスを作成したが、予想された結果は得られなかった。すなわち、これらのマウスでは、色素細胞由来の良性腫瘍である色素細胞母斑は発生したものの、メラノーマへ進展することは無かったのである。 この理由を考察すると、Dct-Creマウスでは十分にPtenが欠損していない可能性がある。すなわち本来なら、メラノサイト特異的Ptenホモ欠失マウスでは、中枢神経でもPtenが欠失しており、そのため脳の肥大と脳浮腫による水痘症が発症しているのであろう。その結果、研究に必要な個体数を確保することに難渋すると思われたが、予想に反して今回の実験ではマウスの成長には異常が無かった。もし、十分にPtenが欠損していないとすれば、Inpp4bホモ欠損マウス、Ptenホモ欠損マウス、Inpp4bホモ・Ptenホモ欠損マウスの間で、メラノーマの発生率に差が無かったことも理解できる。そこで、この技術的問題点を克服するため、以下に述べる如くTamoxifen誘導型Tyr-Cre:Braf変異+Pten欠損マウスを用いて、同様の実験戦略を推進している。
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Strategy for Future Research Activity |
Dct-Creマウスを用いて色素細胞特異的Inpp4bないしPtenホモ欠失マウスを作成することを断念し、Tamoxifen誘導型Tyr-Cre:Braf変異+Pten欠損マウスを用いて、今後の研究を遂行することとした。具体的には、メラノーマ発生・進展におけるINPP4Bの生物学的役割を解明するため、Tamoxifen誘導型の色素細胞特異的Inpp4bホモ欠損マウス、Ptenホモ欠損マウス、Inpp4bホモ・Ptenホモ欠損マウス作成し、以下の研究を実施する。 まず、メラノサイト幹細胞の生存維持におけるPTENとINPP4Bの相互作用を解析するため、上記の遺伝子改変マウスよりメラノサイトを採取して培養し、細胞増殖能を比較するとともに、放射線を照射した後、生存している細胞数を比較する。また、Ptenホモ欠失のため想定されるPI3K/AKT経路のシグナル伝達分子の発現と活性化が、INPP4bのホモ欠失により促進されるかを検討するため、PI3K/AKT経路の下流にあるシグナル伝達分子の動態を免疫ブロットにより解析する。 次いで、Ptenのホモ欠失によるメラノーマ発生が、Inpp4bのホモ欠失により促進されるかを検討するため、上記の遺伝子改変マウスにおける、メラノーマの発生率を経時的に長期解析する。 さらに、Ptenホモ欠失メラノーマ細胞の細胞特性は、INPP4Bの欠失することにより変化する可能性がある。そこで、化学発癌処理を加えた上記の遺伝子改変マウスよりメラノーマ細胞を採取・培養し、コロニー形成能、スフェロイド形成能、低血清培地増殖能などを軟寒天培地法、非接着培養プレート法やMTTアッセイにより比較する。また、メラノーマ細胞におけるPTENとINPP4Bの相互作用を解析するため、PI3K/AKT経路の下流にあるシグナル伝達分子の動態を免疫ブロットにより解析するとともに、放射線照射後のアポトーシス関連分子の動態を同様に解析する。
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Causes of Carryover |
研究費は主にマウスの飼育費として使用したため、8,637円を次年度の使用額として繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は、マウスの飼育費に加えて、免疫染色や免疫ブロットをはじめとする細胞生物学的実験に研究費を使用していく予定である。
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