2014 Fiscal Year Research-status Report
データベース化を目指したヒトメラノーマMitf-M特異的分子標的療法の開発
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26461698
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
中井 章淳 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80453108)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | メラノーマ / 分子治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は、Mitf特異的siRNAをマウスのメラノーマに導入し、アポトーシスを誘導することで抗腫瘍効果を確認した(Gene Therapy 2007)。しかしメラノーマ細胞にMitfを過剰発現させると増殖が抑制されたという報告もある。そこで本研究では種々の色素性もしくは無色素性ヒトメラノーマ細胞株でMitfの発現レベルを調べるとともに、ヒトMitf-M特異的siRNAを細胞株に導入し、Mitf発現抑制による抗腫瘍効果を確認する。効果がみられない場合にはヒトMitf-M遺伝子を導入し過剰発現による抗腫瘍効果を確認する。細胞株のMitfレベルと治療効果の相関関係を明らかにし、治療適応となる患者の選択が可能な新規創薬の開発につなげることが研究の目的である。 ヒトMitf-Mを標的にしたsiRNAの構築は不可能であったため、CRISPR/Cas9システムを用いてMitfをノックアウトすることにした。ヒトMitfのvariant4を標的としたCRISPR/Cas9-Mitfを6種類(No.1-6)合成した。HMV-II、G-361、SK-MEL-28のヒトメラノーマ細胞株にNo.1-6を電気穿孔法を用いin vitroでそれぞれ導入した。No.4のCRISPR/Cas9-MitfをHMV-IIに導入したところ、細胞ヴァイアビリティはコントロール群の約13%に抑えられた。メラノーマ細胞株の定常状態でのMitfの発現をヒトメラノサイトを基準として比較したところ、無色素性メラノーマであるSK-MEL-28では発現が低く、色素性メラノーマであるHMV-IIでは発現が高かった。しかし色素性メラノーマであるG-361では発現が低かった。また、CRISPR/Cas9-Mitf導入後に生き残ったHMV-IIのMitf発現レベルをリアルタイムPCRで調べたところ、コントロールCRISPR/Cas9導入群の1/3程度までMitfの発現が抑制されていた。ヒトメラノーマにおいてもMitfを抑制することで細胞株によっては抗腫瘍効果の得られる可能性はあると考えられたが、一方では生存し増殖を継続する細胞群が存在することも示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヒトMitf-Mを標的にしたsiRNAの構築は不可能であった。そのためsiRNAではなく、近年開発されたCRISPR/Cas9システムを用いてMitf遺伝子をノックアウトさせることにした。ヒトMitfのvariant4を標的としたsingle guide RNA(CRISPR/Cas9-Mitf)を6種類合成したが、カチオニック・リピッドを用いた導入方法では、導入効率が低く評価が難しかったため、電気穿孔法に導入方法を変えるなど評価に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
CRISPR/Cas9-Mitfを導入したヒトメラノーマ細胞株をマウスに移植し、腫瘍増殖抑制効果がみられるか否かを確認する。一方、CRISPR/Cas9-Mitfにより抗腫瘍効果がみられなかったメラノーマ細胞株に対しては、pGEG.ヒトMitfを構築した後に導入し、Mitfの過剰発現による抗腫瘍効果の有無を検討する計画である。
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Causes of Carryover |
平成26年度に予定していたすべての実験ができなかったため、収支状況報告書の次年度使用額がゼロにならなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度の未施行の実験に加えて、予定していた平成27年度の実験も行う予定である。したがって、次年度使用額として、残額の1,902,028円に加えて、平成27年度の請求額である700,000円(直接経費)と210,000(間接経費)の計2,812,028円が必要である。すなわち、NOD/SCID/γc ノックアウトマウス、CRISPR/Cas9-Mitf、プラスミドDNA、その他抗体や試薬など消耗品の購入を行う。特に、マウスを用いたin vivoにおけるCRISPR/Cas9やプラスミドの導入に関しては、1匹あたりに高容量が必要になると予想される。一群あたり8匹と仮定した場合に、少なくともターゲット群、コントロール群、無治療群が必要である。実験を数種類のメラノーマ細胞株で数回行い、前述の試薬などを購入すると満額が必要になる見込みである。
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