2014 Fiscal Year Research-status Report
白斑・悪性黒色腫治療のためのヒトメラノサイト分化とiPS細胞研究
Project/Area Number |
26461704
|
Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
川上 民裕 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 准教授 (20297659)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | メラノサイト / 皮膚色素細胞 / メラノブラスト / 活性型ビタミンD3 / レチノイド / 白斑 / ヒトiPS細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
メラノサイト(色素細胞)の欠如・機能不全疾患である尋常性白斑や脱色素斑、メラノサイトが癌化した悪性黒色腫(メラノーマ)に対する有意義な治療法確立を目指し、以下の二つの研究を遂行している。 1)蓄積してきたマウスメラノサイトに関するデータを活かし、ヒトメラノサイト・ヒトメラノブラストを使用して、メラノサイト分化・増殖・遊走能、メラニン色素生成機序を解明し、尋常性白斑や脱色素斑、悪性黒色腫の治療法開発への足がかりとする。 ヒト皮膚メラノサイトと、より未分化なヒトメラノブラストを使用して、活性型ビタミンD3とレチノイド(ビタミンA誘導体)の効果を検討した。活性型ビタミンD3は、メラノサイト分化を刺激し、エンドセリンBレセプターを介して、メラニン色素の産生を助長する作用が確認された。一方、レチノイドは、メラノサイト分化を抑制し、エンドセリンBレセプターを介して、メラニン色素の産生を抑制する作用が確認された。活性型ビタミンD3外用はメラニン色素を誘発し、白斑の治療に有効である根拠となる。トレチノイン(レチノイン酸)はメラニン色素を抑制し、色素沈着の治療に有効である根拠となる。 2)尋常性白斑や脱色素斑患者血液からヒトiPS細胞を作製し、メラノサイトへ効率よく分化・増殖させ、遊走能を活性化した状態で、Hollow typeマイクロニードルを使用し、白斑や脱色素斑皮膚へ移植する、新規治療法の確立を目指す。 正常ヒト血液Tリンパ球から樹立されたiPS細胞の培養が安定してきた。このiPS細胞に独自条件設定を行い、メラノサイトの分化誘導が可能となってきている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)蓄積してきたマウスメラノサイトに関するデータを活かし、ヒトメラノサイト・ヒトメラノブラストを使用して、メラノサイト分化・増殖・遊走能、メラニン色素生成機序を解明し、尋常性白斑や脱色素斑、悪性黒色腫の治療法開発への足がかりとする。 紫外線の照射により、角化細胞(ケラチノサイト)はエンドセリンを産生し、エンドセリンは皮膚表皮内の色素細胞を刺激し、色素細胞で産生されるメラニンの生成が増加するといわれている。活性型ビタミンD3外用とレチノイド(ビタミンA誘導体)は、相反する作用から、このメカニズムを立証していることがわかった。 2)尋常性白斑や脱色素斑患者血液からヒトiPS細胞を作製し、メラノサイトへ効率よく分化・増殖させ、遊走能を活性化した状態で、Hollow typeマイクロニードルを使用し、白斑や脱色素斑皮膚へ移植する、新規治療法の確立を目指す。 ヒトiPS細胞由来色素細胞を用いた白斑の治療戦略の前段階として、血液由来ヒトiPS細胞を培養確保がすすんだことで、ヒトiPS細胞から色素細胞への分化誘導が安定してくる可能性が高い。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)蓄積してきたマウスメラノサイトに関するデータを活かし、ヒトメラノサイト・ヒトメラノブラストを使用して、メラノサイト分化・増殖・遊走能、メラニン色素生成機序を解明し、尋常性白斑や脱色素斑、悪性黒色腫の治療法開発への足がかりとする。 尋常性白斑や脱色素斑は、皮膚メラノサイトが表皮から消失・メラニン色素生成の機能不全した疾患である。活性型ビタミンD3外用の現状治療は、一応の効果が期待されているが、充分ではなく、今後、よりメカニズムを解明したい。レチノイド(ビタミンA誘導体)も同様である。さらに、エンドセリンBレセプターの作用に注目し、エンドセリン受容体拮抗薬を培養液中に添加して、メラニン色素の産生への影響を検討中である。 2)尋常性白斑や脱色素斑患者血液からヒトiPS細胞を作製し、メラノサイトへ効率よく分化・増殖させ、遊走能を活性化した状態で、Hollow typeマイクロニードルを使用し、白斑や脱色素斑皮膚へ移植する、新規治療法の確立を目指す。 外科的治療では、患者正常皮膚を採取しメラノサイトを分離し培養増殖させ、浮遊培養状態のメラノサイトとして白斑や脱色素斑に移植する(移植時には白斑皮膚をアブレージョン)治療が試みられている。しかし、皮膚採取部位と移植時アブレージョンで創傷が残り、培養増殖時間がかかり、移植後も色素が均等に出ず、まだら状になってしまったりしている。そこでヒトiPS細胞から色素細胞へ分化させ、白斑に移植する。ヒト色素細胞をまず、ヌードマウスに注射し、ヌードマウス皮膚に色素細胞の定着、色素産生を誘導していきたい。
|
Causes of Carryover |
ヒトiPS細胞由来色素細胞を用いた白斑の治療戦略の前段階として、血液由来ヒトiPS細胞を培養確保がかありスムーズにすすんだため。今後、ヒトiPS細胞由来色素細胞を用いた白斑の治療戦略において、このヒトiPS細胞を色素細胞に分化誘導させ、ヒト色素細胞をヌードマウスに注射し、ヌードマウス皮膚に色素細胞を検討する際、充分な費用がみこまれる。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
エンドセリンBレセプターの作用に注目し、エンドセリン受容体拮抗薬をヒトメラノサイト・ヒトメラノブラスト培養液中に添加して、メラニン色素の産生への影響を検討中である。 微小な注射針を先端に備えた Hollow typeマイクロニードルは、試作品としてすでに完成している。Hollow typeマイクロニードルに、ヒトメラノサイトとヒトメラノーマ細胞使用研究、で使用しているヒトメラノサイトを浮遊培養状態として挿入し、ヌードマウスに注射する。
|